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3年目はもっとフロアを沸かせていきたい~シンセカイセン インタビュー

宗像明将音楽評論家
シンセカイセン(撮影:福田瞳)

2019年2月14日で結成2周年を迎えるシンセカイセンが、ファースト・アルバム「SSS」をリリースした。これまでに発売してきた楽曲群に、新曲や初音源化曲を加えた全13曲。オリコンCDランキングでは、すでにデイリー4位を獲得している。でんぱ組.incが生まれた秋葉原ディアステージで結成されたシンセカイセンは、「SSS」でこれまでの活動の総決算をした後、どこへ向かおうとしているのだろうか。3年目に突入しようとしているシンセカイセンの鳴海ちか、キャンディスン、松永ゆずり、神楽坂れたす、そしてサウンド・プロデューサーのDr.Usuiに話を聞いた。

ジャケットは自分たちの描いてみたい世界線

インタビュー当日のシンセカイセン。左から神楽坂れたす、松永ゆずり、キャンディスン、鳴海ちか(撮影:加藤秀樹)
インタビュー当日のシンセカイセン。左から神楽坂れたす、松永ゆずり、キャンディスン、鳴海ちか(撮影:加藤秀樹)

――キャンディスンさん、なんで今日もそんなにセクシーな格好なんですか?

キャンディスン  いっつも突っ込まれる、そこに(笑)。

――寒くないんですか?

キャンディスン  肩はちょっと寒いんですけど、いつも衣装はほぼまとっていないようなものなので。

――それはそれで語弊がありますね……。今回、アルバム「SSS」がリリースされたわけですが、ジャケットからしてシンセカイセンらしいですね。撮影した大慶園とはどんな場所なのでしょうか?

キャンディスン  24時間営業しているおっきなゲームセンターです。

神楽坂れたす  いちいちおしゃれなんですよ。インスタ映えスポット。

シンセカイセン「SSS」ジャケット(撮影:福田瞳)
シンセカイセン「SSS」ジャケット(撮影:福田瞳)

――しかも衣装は、10月20日に渋谷ストリームホールで開催されたワンマンライヴで披露した新衣装ですね。

神楽坂れたす  パンツスタイルが好きだし、そういう子がひとり欲しかったんですよ。「私はこれしかない」と思って、網々のを選んじゃいました。

松永ゆずり  私は、私服で着ようと思ってたワンピースを買って、長いスカートだったのを自分で縫ってリメイクしました。

鳴海ちか  私はどうしてもワンピースが良くて、自分のキャラ的にフワフワ、フリフリみたいな感じにしたかったんですけど、かっこ良さにも合うような柄を探して、肩が出てるところでセクシーさを出してみました。

キャンディスン  私は今回の衣装は、長袖にしたんです。いっつも布をまとってないんで、ちょっと寒いんですよ(笑)。上はレースっぽくなってて、ちょっとかわいめになっちゃうなって思ったので、下はパンツスタイルと網ソックスにして、ちょっとセクシーでかわいいシンセカイセンっぽさを出しました。

神楽坂れたす  私たちは「新しい世界線」を作ってるんですけど、自分たちの描いてみたい世界線をあの衣装で表現させてもらったんです。今回のアルバムは、シンセカイセンの名刺代わりになるものだし、あの衣装は今自分たちが見せたい姿を一番表していたんです。

キャンディスン  それに、あのジャケットが今後への伏線になっているんですよ。

新曲でフレディ・マーキュリーさんになってます

――「SSS」には、新曲として「Be Here Now」が収録されていますね。

鳴海ちか  今回はゴリゴリに踊りたいって言ってダンスも付けていただいたり、お客さんとコールアンドレスポンスをできるとこがあったりしているので、ガンガンに盛りあがる曲になったらいいなって思ってます。

神楽坂れたす  今回「こういうのがいいです」みたいなことを、Dr.Usuiさんともお話しさせてもらって。たとえばサビの部分に、ひとりで歌うパートを入れてみたいとか。あと、「以前作ってもらった曲の、このシンセの音が好きなんですけど、入れてほしいです」って。

Dr.Usui  それ、忘れてた(笑)。

神楽坂れたす  それっぽいの入ってましたよ?

Dr.Usui  じゃあ、覚えてなかったけど、もうなんか自然に乗り移った(笑)。

神楽坂れたす  ブレイクも長めにつくってもらって、踊らせてもらいました。

――EDMっぽいサウンドもリクエストしたわけですね。

神楽坂れたす  そうですね。イントロとか、かっこいいよね。

キャンディスン  うん、「チューン!」って。

鳴海ちか  「タッタッタッタッ!」

――文字にするとまったく伝わらないですよ!

松永ゆずり  私は「イェーイって感じがいいです」って言ったんですよ。

鳴海ちか  入ってるもんね、「イェイイェイ」って。

松永ゆずり  しかも私が歌ってるんです。そこがすごいお気に入りポイントです。

キャンディスン  私的には、最近「ボヘミアン・ラプソディ」さんがはやってるじゃないですか?

――映画作品に「さん」付けする人、初めてですよ!

キャンディスン  クイーンさんか(笑)。Bメロで突然ちょっとテンポがゆっくりになるところが、いきなり四天王が現れて拳を上げるみたいで、自分にヒゲが生えてきてクイーンさんになった気持ちになるような新曲だなって思ってます。あそこではフレディ・マーキュリーさんになってます、自分は。

――大変な曲になってしまいましたね。

Dr.Usui  あと、英語のキーワードを連呼したいっていうリクエストを反映したんだよね。

キャンディスン  「英単語を言いたいです」ってオーダーしたんです。そしたら「Be Here Now」っていうかっこいい言葉に変換していただきました。

シンセカイセン「SSS」アウトテイク写真(撮影:福田瞳)
シンセカイセン「SSS」アウトテイク写真(撮影:福田瞳)

「キャッツ・アイ」? 峰不二子?

――1曲目の「SSSSOS」は初音源化。ライヴのオープニングSEでおなじみですね。フル・ヴァージョンで聴いて「こういう楽曲だったのか」と初めて知りました。

鳴海ちか  最初のサイレンみたいな音でSOS感を出してます、緊急時みたいな。

神楽坂れたす  モールス信号も入ってて、あれが「SOS」になってて。

Dr.Usui  モールス信号で「シンセカイセン」も入れたような気がするね。

キャンディスン  スパイが上からヘリコプターで光で探されてて、見つかんないようにみんなで這っているようなイメージです。

神楽坂れたす  「キャッツ・アイ」!

キャンディスン  だからサイレンが鳴ってたり。「キャッツ・アイ」です。

神楽坂れたす  私は峰不二子のほうがいい。

松永ゆずり  うん、峰不二子。

――みんなリファレンスが古いですよ! ライヴではおなじみの「もう少しだけ」も初音源化されましたね。

神楽坂れたす  シンセカイセンを薦めたいときに、ちょっとまったりした曲が好きな人にも「もう少しだけ」があると薦めやすいと思います。「いろんな世界線があるんだよ」って、幅が広がるなと思います。

鳴海ちか  シンセカイセンは、バラード系って「もう少しだけ」しかないんです。音源で聴いてもらえるのはすごいうれしいなと思います。

松永ゆずり  すごい個人的な話なんですけど、私の声に合ってるねって一番言ってもらえる曲なんですよ。だからちょっとうれしいです。

キャンディスン  1度だけクリスマスの時期に、YouTubeで限定配信したことがあるだけなんです。冬の曲なのでこの時期に出せて良かったです。より染み込むように聴いてもらえるかなって。寒空の下、聴いてほしいです。

シンセカイセン「SSS」アウトテイク写真(撮影:福田瞳)
シンセカイセン「SSS」アウトテイク写真(撮影:福田瞳)

今日もドス利かせた!

――シンセカイセンの2年の軌跡が追える「SSS」で、皆さんが好きな曲を教えてください。

神楽坂れたす  「あの娘に伝えて」がすごい好きで、できたときからDr.Usuiさんにも言ってて。

Dr.Usui  好きな音があるってやつだね。

神楽坂れたす  「ただ流されるまま」っていう歌詞の「まま」のとき、後ろで動いてる音がすごい好きなんですよ。

――帰って聴かないとわかりませんね……。

神楽坂れたす  今これを読んだ方は聴いてください(笑)。私は踊りが得意じゃないんですけど、最初に一番がっつり踊った曲だったんです。今、やる度に自分の中で感覚が変わってくのが面白くて、すごい好きなんです。

松永ゆずり  好きな曲は「ドゥイ☆ドゥイ」です。自分が歌いたいって思ってた歌割りがもらえた曲だし、ライヴでもみんなと一緒に盛りあがれて、自分的にもテンションがめっちゃ上がる曲になったので一番好きです。

鳴海ちか  私は「Knock! Knock! Knock!」が好きです。曲調もすごい好きなんですけど、自分のパートをライヴで歌ってるとテンションが上がって、コブシやドスみたいなのが利いてきちゃうんですけど、それが毎回できるとうれしい。「今日もドス利かせた!」なみたいな満足感がすごいです。

松永ゆずり  あれ、めっちゃおもろい。

神楽坂れたす  「今日ちかちゃん、振りきってるな」みたいな。

キャンディスン  「ちかちゃん、なんかキレてんのかな?」みたいな。

――キャンディスンさんの好きな曲はどれでしょう?

キャンディスン  「ハカイノウタ」は、この4人でユニットになって初めてもらった曲だし、インストを聴いただけで泣いた曲だから、やっぱり思い入れも深いし好きなんです。けど、「Trust me」も好きなんです。サビを歌ってて、一番自分がスカッと歌えるっていうのもあるし、タイトルも「私を信じて」っていう意味で、「さいたまスーパーアリーナに行きたい私を信じて」っていう気持ちを込めながらいつも歌ってるんです。

松永ゆずり、喉の手術をしていた

――アルバムが出るまでの活動の中で歌い方が変わった面はありますか?

神楽坂れたす  ゆず、めっちゃ変わった。

松永ゆずり  急に褒められた。

鳴海ちか  うんうん。強くなったんじゃないかな。喉が。

――なぜそんな強くなったんですか?

松永ゆずり  手術(笑)。

――手術? そんな重大な話が急に出てくるんですか?

鳴海ちか  めちゃ笑いながら(笑)。

松永ゆずり  声帯結節だったんです。

――手術したのはいつ頃ですか?

Dr.Usui  TSUTAYA O-WESTのワンマンライヴ(2018年1月20日)が終わってからだよね。

松永ゆずり  私、もう小学校ぐらいから、声を出したら次の日は声が出なくなる人だったんです。

――その手術まで、ライヴはどうしていたんですか?

松永ゆずり  声が出ないとき、1回、3人に歌ってもらいました。手術までは歌うことがあんまり好きじゃなかったんですけど、今は楽しくなりました。

――良かったです。他のメンバーのみなさんはいかがですか?

神楽坂れたす  私、ねちょねちょしてるんです。よく歌い方が厨二っぽいって言われるんですけど、それが強くなったかな? 感情が出るようになったのかもしれない。

鳴海ちか  私もたぶんさらにパワーや強さがプラスされて、顔面だけ見てた人からしたら「こんな声なんだ」みたいな感じだと思います。

キャンディスン  私は最初の頃は全部カツーンって歌っちゃいがちだったんです。

――KAT-TUNですか?

キャンディスン  いや(笑)、全ての力を込めて、ガッ、カツーンって歌うタイプだったんです。でも、全部思い切り歌うんじゃなくて、力を抜くことも大切なんだって気付いてから、最近のレコーディングは変わってると思います。

シンセカイセン アーティスト写真(撮影:福田瞳)
シンセカイセン アーティスト写真(撮影:福田瞳)

キャンディスン、沢田研二のさいたまスーパーアリーナ事件について語る

――2019年2月14日で2周年を迎えて、3年目に突入します。3月9日には、高円寺HIGHでのワンマンライヴもひかえています。3年目の目標を教えてください。

キャンディスン  さいたまスーパーアリーナに行くまでには、武道館とか横浜アリーナとか、いっぱいあるんですよ。その武道館に行く前にも、まだまだ頑張んなきゃいけないことがたくさんあります。

――キャンディスンさんは「無理なんじゃないか」と思うことはありますか?

キャンディスン  ないです。fripSideさんのバックダンサーをさせていただいて初めてさいたまスーパーアリーナに出たときに、花道の真ん中の下からドゥーンって昇ってくるやつをやったんですよ。で、昇った瞬間に、1万人、2万人ぐらいの人でサイリウムの海がバーッって広がってるのを見て、鳥肌が立って。そのときに、「絶対いつか4人で立つ」って思ったんですよ。だから、その直感が勝手な自信なんです。

――ちなみに、沢田研二さんのさいたまスーパーアリーナ公演のキャンセル事件に関してはどう思いましたか?

キャンディスン  「もったいない、私たちが代わりにやります!」って思ったんですけど、「そうやって言えるぐらいの大物って、かっけーな」って思いましたね。

――もう沢田研二さんレベルの話になっていますが、他のメンバーのみなさんはいかがでしょうか?

鳴海ちか  この2年で土台を固めたので、ここからありきたりなことばっかりやっててもつまんないと思うので、新しいことにチャレンジしていけたらなと思ってて。私、EDMみたいなクラブミュージックがすごい好きなので、ゴリゴリのDJイベントにもバッって出られるようになりたいです。Ultra Japanとかにも出れるような。

松永ゆずり  今回のジャケットで、私たち的には「やんちゃ感」を出したんです。最初からやんちゃだと「こいつら何?」みたいになっちゃうから、「いい子なんだよ」って見せた上で、やんちゃな感じを出してみました。私たちはクラブミュージックが好きなので、3年目はフロアを沸かせていきたいです。

神楽坂れたす  世間的にも3年目って、中学校や高校ではもう最上級生ですよね。今まで「新人です、よろしくお願いします」みたいな感じだったんですけど、これからは対バンでいろんなアーティストさんに「シンセカイセンの人たちってかっこいい」みたいに憧れられるような感じになりたいなって。3年目は、そういう気になっちゃう存在を目指したいです。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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