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CYNHN初インタビュー~「はりぼて」の自分を乗り越えて

宗像明将音楽評論家
CYNHN(提供:ディアステージ)

 現在ヴォーカル・ユニット「CYNHN」(スウィーニー)として活動する6人の女の子たちに初めて会ったのは、2017年1月の仕事の場でのことだった。2016年末にジョイサウンドとディアステージの共同オーディションで選ばれた彼女たちは、妙に堂々としていて逆に心配になったことを思い出す。

 ロシア語で「青色」を意味するCYNHNのメンバーは、崎乃奏音、綾瀬志希、桜坂真愛、月雲ねる、百瀬怜、青柳透。CDデビュー前の彼女たちの活動は、2017年8月の「TOKYO IDOL FESTIVAL 2017」(ピンキー!ノーラ&ペトラのバックダンサーとして出演)などで折に触れて見ていたが、同じく2017年8月に新橋演舞場で開催された「艶めく☆ディアステージ」というイベントの際に、CYNHNのイメージが変わる出来事があった。百瀬怜が私の着ていたTシャツを見て「それ、おやすみホログラムさんのTシャツですよね?」と言ったのだ。なぜわかるのだ……? CYNHNの6人は、私の予想以上に面白いキャラクターなのではないかと感じはじめることになった。

 そしてCYNHNは、テイチクエンタテインメントによる新レーベル「I BLUE」から2017年11月1日に「FINALegend」でデビュー。スマイルカンパニーに所属するソングライターである渡辺翔が作詞作曲した「FINALegend」は、情報量が多くて曲調の変化も激しく、ディアステージの先輩であるでんぱ組.incの音楽性を踏襲しつつも進化させたかのような楽曲だった。

 なお、2017年12月16日に舞浜アンフィシアターで開催された「聖なる☆ディアステージ」というイベントでCYNHNを見る頃には、円形のステージにそれぞれが散らばってパフォーマンスをする6人の姿に、静かに感動するようになっていた。それは1年をかけて見せたCYNHNの成長そのものだった。

 そのCYNHNが、2018年4月25日にセカンド・シングル「はりぼて」をリリースする。作詞作曲は「FINALegend」と同じく渡辺翔だが、サウンドは一転してストレートなロック・ナンバー。しかも、歌詞もメンバーの心情を描いたかのようなシリアスな内容だ。

 カップリングの「リンクtoアクセス」はソウルフルなディスコ・ナンバー。さらに、先行配信もされた「はりぼて(Remix)」は、ヴォイスの挿入を多用し、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルによるオルタナティヴR&Bを連想させるかのようなサウンドだ。

 メンバーの個性と一筋縄ではいかない音楽性。それはそのままCYNHNというユニットのフレッシュさ、そして大きな飛躍の可能性へとつながっている。以下は、そんなCYNHNにとっての初めてインタビュー記事だ。そこで浮きあがってきたのは、順風満帆に活動してきたかのように見える彼女たちの6人6様の過去の葛藤だった。

CYNHN。写真左から青柳透、綾瀬志希、崎乃奏音、桜坂真愛、月雲ねる、百瀬怜(提供:ディアステージ)
CYNHN。写真左から青柳透、綾瀬志希、崎乃奏音、桜坂真愛、月雲ねる、百瀬怜(提供:ディアステージ)

こんな人生から逃げたいと思った

――ロシア語のユニット名は読んでもらえるようになりましたか?

綾瀬志希  ちょっとずつ。でも、私たちは「CYNHN」という文字を読んでもらえるようになるために結成されて、活動してたのか!?

崎乃奏音  違います(笑)。まだまだ読めないって声が多いかな。全世界の人の99%はまだ読めません。

――いきなり基準が世界になりましたね。でも、ロシア人は読めるはずですよね?

崎乃奏音  でも、キリル文字じゃないから、どこの国の人も読めないんですよ。

――そうなんですか……。皆さんはジョイサウンドとディアスージの共同オーディションで選ばれましたが、以前はどんな生活をしていて、オーディションを受けることにしたのでしょうか?

青柳透  ちょうどオーディションの時期が高校2年生ぐらいで、普通に学校と陸上部とバイトに行っていました。青春……若い……みたいな……。

――なんで弱気になるんですか。そこからオーディションを受けたきっかけは何だったのでしょうか?

青柳透  中学1年生ぐらいの頃にでんぱ組.incさんを知って、ディアステージを知ったんですよ。ちょうどそのころ「アイカツ!」を見始めたら、歌唱担当のSTAR☆ANISさんもディアステージ所属って知って、「これは運命なんじゃないか?」って勝手に思っちゃって、高校生になって秋葉原ディアステージに応募したんですけど返信が来なくて。でも、高校1年生の時に妄想キャリブレーションさんのライヴに行くようになって、やっぱりすごくディアステージさんに憧れを持つようになって、このオーディションで二次審査まで行けたら古川未鈴さん(でんぱ組.inc)に会えるんじゃないかと思って受けたんですよ。たまたま憧れた対象がアイドルさんだっただけで、アイドルになりたかったわけではないんです。

――青森県在住の崎乃奏音さんは何をしていたのでしょうか?

崎乃奏音  私は大学生と塾講師のバイトの生活だったんですけど、ずっと歌を歌いたいと思っていたので、いっぱいオーディションに申しこんでいたんです。その中で、ある1社に最終試験で落ちたんですよ。才能がないと思ったし、そこで一回諦めたんです。でも、毎日オーディションを探していた生活だったから、ディアステージのオーディションを締め切り2時間前に見つけて急いで応募しました。

――憧れていたのはアイドルですか?

崎乃奏音  ももいろクローバーZさんやでんぱ組.incさんみたいに人に笑顔を与えられる仕事をしたいけど、アイドルになりたいわけじゃないんです。私は歌を歌うのが好きだし、歴史に残りたいからオーディションを受けました。歌謡曲や演歌が好きなので、石川さゆりさんを尊敬しています。

――百瀬怜さんは何をしていた方なんですか?

百瀬怜  百瀬は高校を卒業して普通に就職して、企業でOLをしていました。

――OL生活をしながら、なぜオーディションを受けたのでしょうか?

百瀬怜  人間関係が難しくて、つまらない毎日に耐えられなくなりました。冬の繁忙期が来た時に、毎日残業して家に帰って、好きなアイドルさんのイベントに行く気力もなくなったんです。誰にも会いたくないし「生きててつまらないみたいな、あー死にたい」って思うようになって。百瀬は重いんです(笑)。毎日誰かとご飯を食べるのも嫌になって。でも、こんな人生から逃げたいと思ったし、好きなアイドルさんの世界に飛びこめば楽しくなるかなという軽い気持ちでディアステージのオーディションを受けました。

――その時に好きなアイドルは誰だったのでしょうか?

百瀬怜  風男塾さんが好きでずっと行ってて、あとはNECRONOMIDOLさん、少女閣下のインターナショナルさん、里咲りささん、BPM15Qさんとかに行ってました。

――神楽坂TRASH-UP!!系が多いですね……。しかも、そこからディアステージって極端ですね。

百瀬怜  逃げたかったし、助けてほしかったんです。今は楽しい毎日を送っています。

――良かったです! 綾瀬志希さんは?

綾瀬志希  私は音響の学校に行って、その後に歯科助手をやって、ここに来ました。

――「はりぼて」のMVの背景の絵を描いているのは綾瀬志希さんなんですよね。

綾瀬志希  小さい時から絵を描くことと歌を歌うことがすごい好きだったんですよね!?

――なんで私に確認するんですか!? オーディション受けたきっかけはなんでしょうか?

綾瀬志希  10年ぐらいオーディションを受けてたんですけど、何も受からなくて、えへへへへ……。仕方ないから「音響の学校に行ってみるか!」と思ったんですけど、あんまり人とうまくしゃべれないんですよ。音楽業界はちょっと無理だと思って、普通に就職しようとして歯科助手になったんです。だけど、やっぱり人とうまくお話できなくて「うわ〜っ」てなって、ありがとうございました!

――なんでひとりで完結するんですか! でも、音楽業界には憧れがあったんですね。

綾瀬志希  そうです。音響の学校にバンドさんも来たんですけど、それを見るたびに「私だってあそこに立ちたかったのに、グギギギ」みたいな感じでございました。でも、歯科助手でも無視されたり、怒鳴られたりして、「もうやってらんない!」と思って。それで、AIKATSU☆STARS!の松岡ななせさんと仲良かったんで、「あの子はどこの事務所なんだろう?」と調べたら、ディアステージがオーディションをやってて、応募したら受かりました。ありがとうございました!

――またひとりで完結しましたね! アイドルになりたいという感じで受けたんですか?

綾瀬志希  むしろアイドルってよくわからなくて。アニソンシンガーとか、とにかく歌がやりたかったんですよね。歌が好きだし、ずっと歌しかないと思ってました。自分にとって歌は自分そのもので、歌うことが自分を表現することなんです。歌ってないと自分が生きてないのと同じです。みたいな感じなんですよ!

――また完結した! 好きな歌手はいますか?

綾瀬志希  椎名林檎さんのカリスマ性に憧れてます。

――綾瀬志希さんもそういうカリスマ性を纏いたいですか?

綾瀬志希  纏いたい! でございます。

――纏ってますよ。こういうタイプはなかなかいないですから。

綾瀬志希  やったー! やったー!

――桜坂真愛さんはもともと何をしていたのでしょうか?

桜坂真愛  学生をしてました。都会から少し離れた田舎に住んでて、刺激がないんですよ。歌が好きだったんですけど、CDを買ったのも周りより遅かったんです。私自身に目標も特になくて「頑張ることもないなー」っていう毎日をずっと過ごしてたんですよ。そんな時に、アイドルさんの動画を見ていたらオーディションの広告が流れて、その時にすごくドキッとしたんです。私にもアイドルになりたい気持ちがあったので受けてみようかなって思って、お母さんにも内緒で初めて自分の意志で受けました。目標とか生き甲斐を感じられたらいいなと思って。

――それまではライヴにも行かなかったんですか?

桜坂真愛  集団とかすごく苦手で、ライヴハウスももみくちゃにされないか不安で、恐いイメージがあったんです。

――そうしたら自分がライヴハウスに出る側になる運命だったんですね。好きなアイドルや歌手はいましたか?

桜坂真愛  私は洋楽がすごく好きで、歌声で魅せるって人がすごく好きなんですよね。独特なセンスで人を虜にして行く人はすごいなって思います。洋楽で言えばアリアナ・グランデさんとか。あと、でんぱ組.incさんとAKB48さんも好きでした。

――月雲ねるさんは何をしていた方でしょうか?

月雲ねる  大学生でした。でも、ずっとアルバイトもしたことがなくて。ずっとアイドルになりたかったんですけど、行動に移す勇気もなくて。別に大学に行かなくても良かったんですけど、みんな行ってたから私も行って、ファッションの勉強をしながら「アイドルの衣装を作りたいな」と思ってました。でも、本当はアイドルになりたかったんです。結局大学は1年生の半分くらいしか行ってないんです。オーディションに受かってから大学を辞めました。

――CHNHNの活動に賭けたわけですね。そこまでしてアイドルになりたかったのはなぜでしょうか?

月雲ねる  ずっと憧れてました。好きなのはバンドじゃないもん!のしおりん(恋汐りんご)さんや古川未鈴さんです。芯の通ったアイドルが好きで、そうなりたかったんです。

CYNHN「はりぼて」初回限定盤A(提供:I BLUE/テイチクエンタテインメント)
CYNHN「はりぼて」初回限定盤A(提供:I BLUE/テイチクエンタテインメント)

「なんで私のことなんか好きなんだろう?」

――そして、実際に演者側になった感想はいかがでしょうか?

青柳透  私は握手会とかで好きなアーティストさんに「好きです」ぐらいしか言えないので、自分がこういう立場になってみて同じような人たちがいると親近感が湧いちゃいます。

――ピンキー!ノーラ&ペトラのバックダンサーをやってみていかがでした?

青柳透  アイドルさんに触れるのが特典会しかなくて、「ピンキー(藤咲彩音/でんぱ組.inc)さんが教えてくださってる、うわあ!」みたいな感じになってました。

――崎乃奏音さんはいかがですか?

崎乃奏音  芸能人の方でも「大学に行きながら女優をやってます」って方もいらっしゃるじゃないですか。でも、実際に自分が青森から東京に通って、大学と活動の両立をしてみると、みんなさらっと言ってるけど相当大変なことをしてるんだなって思って、今までとは見方が変わってきました。ただ楽しいだけじゃないですし、絶対皆さんつらい時もあるんだな、という視点も込みで物事が見えるようになってきました。

――崎乃奏音さんは青森から通っているというのが一番大変なところなんじゃないですか? 移動は何時間くらいかかるのですか?

崎乃奏音  10時間ぐらいですね。でも、歴史に残りたいし、羽ばたくためには青森から出なきゃと思いました。青森に住んでますけど(笑)。大学がまだあるので、卒業するまでは青森在住です。

――百瀬怜さんはインディーズ・アイドルをたくさん見ていたのに、いきなり華やかなメジャー・デビューというのはいかがですか?

百瀬怜  あまり実感ないんですよね。日々淡々とやらなければならないことをこなしているという感じです。

――でも、アイドルと会うことも増えますよね。

百瀬怜  今までお金を出してた方が目の前にいて「よろしくお願いします」って言ってくださるじゃないですか。それにすごい切なさを感じるんですね。「あたしオタクなのにどうしてオタクとして見てくれないんだろう」っていう、独特な考えになっちゃうので。嬉しい気持ちがありつつ寂しい気持ちもある感じです。

――オタクの気持ちがまだあるなら、自分のオタクの人はどう見ているんですか?

百瀬怜  「なんで私のことなんか好きなんだろう?」って思っちゃいます。メンバーが6人もいるのに、なんで選んだのが私なんだろうってすごく思います。

――綾瀬志希さんはいかがですか?

綾瀬志希  ずっとお客さんの来ないライヴハウスでひとりで歌ったりしてたので、いまだに全然実感がなくて。今も電車で自分の歌ってる曲を聴いてるのが不思議だなーって思ってます。自分の歌を好きって言ってくれる人がいっぱいいることが、今でも全然信じられないです。私は自分のことが大嫌いだったんですけど、いろんな人が私の歌を聴いて「歌が好き」とか「面白いね」とか言ってくれるので、CYNHNに入ってから自分のことがすごく好きになりました。

――いい話だ。桜坂真愛さんはいかがですか?

桜坂真愛  私って生まれてきてから怒られることばかりだったんですよ。いろんな人に「なんでこういうことするの?」とか「なんでそういうこと言うの?」とかいつも言われてきたんです。だから「自分ってなんでこんな人間なんだろう」とか「自分は伸びしろがない」とか「将来もない」って思ってたんですけど、CYNHNに入ってからは自分が知らない部分を見てくれる人もいて。今までは「努力なんてなー」って感じだったんですけど、努力をしたところを見てくれてる人たちがたくさんいて褒められることが多くなって、コンプレックスだったところを自信に変えられるようになりました。

――努力で何が変わったのだと思いますか?

桜坂真愛  自分が悪かったんですよ、なので正しましたね。言われて嫌なことは言わないとか、空気を読むようにするとか、そういう風にめちゃくちゃ努力した時期がありました。一番変わったのは自制心ですかね。「やりたいことをやればいいんだ」とか「言いたいことを言えばいいんだ」とかじゃなくて。

――月雲ねるさんはいかがですか?

月雲ねる  自分のことを推してくれてる人がいることに驚きました。「この6人の中でなんでわたしを選んだんだろう?」って。たとえば私はしおりんさんが好きだけど、「自分は何で好きになられるんだろう?」って不思議に思っちゃいます。デビューしたから当たり前なんですけど。だから、自分がステージに立って歌う側になったことに実感がない部分もあって。

――でも、メンバーの中でも秋葉原ディアステージで一番最初に働いていたから、ディアステージになじむのも早かった印象があるんですよ。

月雲ねる  もともとオーディションの審査員コメントで「ディアステージに欲しい」と言われていたんです。たぶん髪の毛の色だと思うんですけど(笑)。

――実際に秋葉原ディアステージで接客と歌をやる暮らしになっていかがですか?

月雲ねる  まずアルバイトが初めてだったので、働くということに慣れるのが大変でした。プラス歌うから、わけわかんないです。

――忙しいですよね。この中で秋葉原ディアステージで働いている方は、月雲ねるさんのほかに、青柳透さんと桜坂真愛さん。桜坂真愛さんは、栃木から出てひとり暮らしをしているんですよね?

桜坂真愛  店舗で働くことによって知ってもらえたりもしたので、そういうのが嬉しいなって思いました。

――青柳透さんはいかがですか?

青柳透  さっき言ったように一回応募したことがあるんですよ。だから、オーディションに受かって秋葉原ディアステージで働けているという実感が最初は湧かなくて。制服の着方を教わるのも憧れてた先輩だし、「袖が出てるよ」って直してもらうだけでも汗が止まらなくて。飲食店ではあるけれども、お客さんと会話する距離もちょっとフレンドリーだから境目とかが難しかったりします。

今の私たちが歌うから意味がある

――そして、新曲「はりぼて」はスマイルカンパニーの渡辺翔さん作詞作曲です。葛藤を描いたロック・ナンバーですが、「はりぼて」とは中身がないという意味ですよね。初めて聴いたときの感想を教えてください。

青柳透  私は邦楽ロック系が好きなんですけど、そういう音だったんですよ。「少年マンガのアニメの主題歌に選ばれそう」って思いながら、音を聴いただけでまず感動しました。歌詞を見たら、メンバーのことを思い出しながら歌えるような歌詞で「こんな歌を歌わせていただいてありがとうございます」という気持ちでやらせていただきました。

崎乃奏音  最初はNHKの青春応援番組の歌みたいだなと思ったんですよ。NHK大好きなので「これはNHKだ!」と思って、そこでまずテンションが上がったんです。まあ違うんですけど(笑)。あと歌詞がすごく等身大なんですよね。私たちってけっこう大きなことを言いがちなんですけど、内心では自信がないこともありますし、外面は自分の思い描く姿でありたいと思うところもあって、普段から自分を作る癖があるんです。それがすごく「はりぼて」だなと思っていて、自分と重なる部分もあってこの曲はすごい大事にしたいなと思いました。

百瀬怜  百瀬は、CYNHNの曲はまだ5曲しかないんですけど、曲調が一番好きだと思いました。歌詞を見た時は「これは私のことだ」と思いました。きっと今の年齢だから歌える歌だなと思って。今の私たちが歌うから意味があるんだなと思います。

綾瀬志希  最初に聴いたとき「すごいこれ超かっこいい!」と思いました。私も「はりぼて」の時期がありましたね。今は自分は自分しかいないって思います。だから歌ってる時にみんなに「自分は自分でそのままで大丈夫だよ」って思いながら歌ってます。

――歌うことによって自信がついてきた部分はありますか?

綾瀬志希  そうですね。今までずっと受け入れられてこなかったので、すごく生きてて良かったって思います。いい話だなー!

――また自己完結した! 桜坂真愛さんはいかがでしたか?

桜坂真愛  「あ、こういう方向性で行くんだな」って思いました。次は明るい曲だと思ってたら、ダイレクトに人間っぽさがすごく出てるなって思って。やっぱり私たちは大変なこともいっぱいあって、波瀾万丈な人生を送ってきたからこそ、優しい気持ちも持っていると思いますし、失礼な言い方ですけど、人生を明るく何事もなく過ごしてきた人たちには歌えない曲だなって思いました。

――月雲ねるさんはいかがでしたか?

月雲ねる  最初は単純に「音がかっこいい」とか「好きだな」とか思ったんです。でも、オーディションで選ばれて即メジャー・デビューした人たちがこういう歌詞を歌うっていうのは、表向きの明るいイメージじゃない部分もあるんだなって感じました。うまく言葉が出てこない……。

崎乃奏音  すぐメジャー・デビューさせてもらってるから、外から見ると何事もトントン進んでてキラキラしてるような人たちに見えるだろうけど、「こういう中身の部分を書いてる歌も歌うんだ」って思ったってことだよね。

CYNHN「はりぼて」初回限定盤B(提供:I BLUE/テイチクエンタテインメント)
CYNHN「はりぼて」初回限定盤B(提供:I BLUE/テイチクエンタテインメント)

昔のソウル・ミュージックに憧れている

――カップリングの「リンクtoアクセス」は聴いていかがでしたか?

青柳透  この曲はコーラスもあって、私の歌の技術はまだまだだなと思って「ふえ~こんな感じか~」って思ってたんですよ。私は高音を出すのが苦手なんですけど、裏声と地声の間くらいの声で歌うので今でも苦戦してます。でも、歌に人生を賭けてきた人たちもいるから、私も頑張りたいなと思いました。

崎乃奏音  昭和好きなんですけど、ちょっと昭和っぽくないですか? コーラスとかが入ってくる感じが歌謡曲っぽいなと思ったんですよ。あと、私は中学校高校と合唱部だったので、コーラスが入ってるのがすごい嬉しかったし、歌謡曲っぽいのが嬉しかったので「リンクtoアクセス」は大好きです。

百瀬怜  私は「え~っ」て思いました。「え、ハモり!?」みたいな。今でもライヴで苦戦してます。曲は明るくて「はりぼて」と180度違うので、バランスがいいなって思います。

綾瀬志希  「ソウルだな」って思って。黒人がウイスキーを持って自由に動きながら歌うような、昔のソウルに私は本当に憧れているんですけど、そういうイメージの曲になっていて、しかも女性のヴォーカル・グループではなかなかないなって思って。すごく難しいんですけど、歌いこなせるようになりたいなと思っております!

――綾瀬さんはこの曲を聴いてなんでソウル・ミュージックだと見抜けるんですか?

綾瀬志希  音響の学校にも通ってたので、ちっと習ってたんです!?

――なんで疑問形になるんですか!? 桜坂真愛さんいかがでしたか?

桜坂真愛  「はりぼて」と打って変わってすごく明るくて楽しい曲だなって思いました。同時に「歌いこなせるかな」っていう不安はありましたけど、それ以上にダンスが難しかったです。手こずって「あーもう無理」って最初は思いました。

月雲ねる  ハモりがあったので「ヴォーカル・ユニットってこういうことか」という気持ちになりました。ヴォーカルを意識した曲だな、って。振り付けも一番好きです、楽しく踊れるので。

CYNHN「はりぼて」通常盤(提供:I BLUE/テイチクエンタテインメント)
CYNHN「はりぼて」通常盤(提供:I BLUE/テイチクエンタテインメント)

自分のなりたい自分になれるように頑張ってる

――「はりぼて」には「誰かのなにかになりたい」という歌詞がありますが、今後皆さんはどんな存在になりたいですか?

青柳透  最初はアイドルさんに会いたくてオーディションを受けた感じなんですけど、CYNHNに入ってみて、メンバー内にも強い思いを持ってオーディションを受けた人もいて、そういうのを見てるうちに自分ももっと真剣に頑張っていきたいなって思うようになったんです。最初は私なんかにファンがついてこなくてもいいやって思ってたんですよ。でも、私のことを好きって言ってくれる人が増えるにつれて貪欲になってきてしまって、私がオタクだった時にアイドルさんに「この人だけ」って思ってたように、私も「この人だけ」って思われるようになりたいなって思うようになっちゃいました。

月雲ねる  自分は「お客さんのために」という気持ちじゃなくて、自分のなりたい自分になれるように頑張ってるつもりなので、そうなりたいです。憧れてた人たちみたいに自分のポリシーを貫いて、自分の好きなものを曲げずにやっていきたいなって思います。

桜坂真愛  具体的なことじゃないんですけど、幸せになりたいです。

――今は……?

桜坂真愛  今が不幸とかじゃなくて。将来は自分にもっと自信がついて、できることがいっぱい増えて、満足な気持ちで人生を終えたいです。最期は明るく終えたいんです。そのためにはどうしたらいいのかなっていうのを考えられる人間になりたいなと思ってます。

――若いのにもう死ぬことを考えているんですか! 綾瀬志希さんはいかがですか?

綾瀬志希  綾瀬は綾瀬でいたいですね。それで誰かの何かになれたらそれで充分です。

――綾瀬さんはすでに綾瀬さんになっていると。

綾瀬志希  そうです。すごく自由です。誰かの何かになるために生きるんじゃなくて、自分が自分でいた時に誰かがついて来てくれるようになりたいですね。

――百瀬さんはいかがでしょうか?

百瀬怜  百瀬、すごく無責任と思われるかもしれないんですけど、全然わかんないんですよね。何になりたいとか全然なくて、好きだからいるだけで。前までは会社でひとりで戦って耐えてつまんなかったけど、今は同じ状況の可愛い女の子たちが周りに5人いるから、この子たちと一緒にどこまで行けるのかチャレンジしてみたいなって思ってます。

――最後に崎乃奏音さんはいかがでしょうか?

崎乃奏音  私は「歴史を語る上で崎乃奏音の話は外せない」というような人物になりたいんです。誰かが私の代わりをできるような人間のまま死にたくなくて、だから歴史に残りたいんです。これから頑張ります!

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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