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日本代表・稲垣啓太、新型コロナウイルス陽性で4人離脱も「混乱は、ない」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
宮崎合宿中の稲垣(写真提供:日本ラグビーフットボール協会)

 会見場に入室するや、表情を崩したような。

「対面は、久しぶりですね」

 時代の変化に伴いオンラインによる取材が増えたなか、「対面」の会見に臨むのは久々だったか。

 ラグビー日本代表の稲垣啓太は7月1日、翌日のフランス代表戦に向けて取材に応じた。会場の愛知・豊田スタジアムでの試合前日練習を終えると、チームがウイルス禍にさいなまれる現状へ「混乱は、ない」と述べた。

 身長186センチ、体重116キロの32歳。2度目の出場となった2019年のワールドカップ日本大会では8強入りし、2023年のフランス大会での躍動も期待される。スクラム最前列の左プロップという負荷のかかる位置に入りながら、豊富な運動量と突進力、タックルの技術でも魅する。

 理論的な語り口でも知られ、6月25日のウルグアイ代表戦後も自らのオフロードパスについて画が浮かぶよう述懐していた。

 本欄ではまず、世界ランクで8つ上回る2位のフランス代表についての発言から振り返る。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――フランス代表の印象は。また、ワールドカップフランス大会に向けて、この試合の位置づけは。

「フランスはセットプレーが強い。ご存じの通りだと思います。スクラム、ラインアウトとモールで相手からペナルティを奪い、勢いをもたらす。そこからショット(ペナルティゴール)も狙うし、簡潔にフォワードを前に進める。そんな強い魅力のあるチームだと思います」

――フランス代表のスクラム。どんな特徴があると捉えているか。日本代表の対応策は。

「相手がどういったスクラムを組んでくるか。僕の口から言えることではないです。ただ、スクラムに誇りを感じます。そういった誇りあるプレーをする相手に、僕たちがどう戦っていくのかを是非、皆さんに見ていただきたい。自分たちがやる内容等は、お話しすることはできないですけども、準備したものが出せるように、明日、やるだけです」

 フォワード8人が低い姿勢でまとまるのが日本代表のスクラムの特徴。指導する長谷川慎アシスタントコーチは、いま唱えている型を形成するに際してフランスへ留学している。バトルは味わい深くなりそうだ。

 稲垣は続ける。

――ワールドカップに向けて。

「僕自身は、この試合がワールドカップに向けて何か特別な…というもの(を感じて)はないです。目の前の1試合に向け、準備してきたことを出すだけ。準備してきたものがしっかり出せれば結果が出せると、全員、信じているので、やるだけですね。

 ワールドカップで結果を残すためだけにずっと取り組んできましたし、毎回、毎回、ワールドカップはラグビー人生のすべてだと言い続けてきているはずです。ただ、ワールドカップを見ていないのが僕の現状です。明日のフランス代表戦で、いままで準備したものを出すことで、結果が出てきてやっとワールドカップが見えてくる。まだ大会のメンバーも決まっていないです。現状、いまのメンバーがフランス代表戦にどう立ち向かい、結果を出すか。そこが全てだと思います」

 26日以降、チーム内では新型コロナウイルスの陽性者が続出。堀江翔太ら3選手が一気に戦列を離れ、7月1日には先発予定の山沢拓也も体調を崩した。メンバー変更は必至だ。

 第三者には「混乱」の渦中に映るか。ただし稲垣は、その仮定を認めない。

――チームは混乱しているような。そんな時に大事なことは。

「報道に出ている通り、何人か負傷者もいますし、こういったケースですから体調不良者も出ています。しかし、誰かが倒れたら誰かがやらなければいけないというのは、変わらずにあり続けることなので。誰が入ってもいいように準備してきたつもりですし、以前から層を厚くしなくてはいけないと、ジェイミー(・ジョセフヘッドコーチ)はずっと言ってきたはずです。全員が層を厚くするために、結果を出すために、準備してきたつもりです。僕は、混乱は、ないと思っています」

――ただ、メンバーが頻繁に入れ替わるさまは通常と異なります。

「選手が代わるというのはイレギュラーなことかもしれませんが、誰が入ってもスタンダードを下げないよう準備してきた。ですので、誰が入っても問題はない、という僕の解釈です」

 選手層拡大を目指してきたこのチームの歩みに沿う形で、有事へぐらつかぬさまをアピールした。

「誰かが倒れたら誰かがやらなければ」

 際立つ単語を淡々と連ねる。

 猛暑が予想されるスタジアムで、「準備してきたもの」をどこまで発揮するか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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