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代表辞退しプレーオフ専念。サンゴリアス中村亮土主将、決勝トライの「本能」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ワールドカップ日本大会で8強入りを果たした日本代表の中村亮土は、東京サントリーサンゴリアスの主将として2シーズン目を迎えている。

 5月21日、東大阪市花園ラグビー場。東芝ブレイブルーパス東京とのプレーオフ準決勝に挑んだ。レギュラーシーズンの第15節で3―27と今季2敗目を喫した相手を30―24で制した。

 序盤から、対するブレイブルーパスの飛び出す防御、接点での圧力に苦しみ、後半8分頃まで17―24とされた。それでも、動じなかった。フルバックのダミアン・マッケンジーのキックを活かし、首尾よくエリアを奪う。じわりと点差を詰める。

 23―24として迎えた19分、相手の危険なプレーによりペナルティーキックを獲得。敵陣ゴール前右でのラインアウトからプレーを再開させ、攻め始める。途中、日本代表で主将経験のあるリーチ マイケルの好タックルを浴びながら、さらにフェーズを重ねる。

 最後はラックの後ろから、インサイドセンターとして先発の中村亮自らが突進。ぽっかりと空いたスペースを駆け抜け、トライ。直後のゴール成功で30―24となった。

 以後はブレイブルーパスのラインアウトで立て続けにノットストレート(ボールをまっすぐ投げ入れられない反則)と判定されたこともあり、スコアが動かぬままノーサイド。防御でも奮闘した中村亮は、ミルトン・ヘイグ監督とともに会見した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)

「前回、今日と、東芝さんにはいい影響をもらっているなと感じた2試合でした。きょうはお互いにいいところを出し合って、花園に来ている皆さんが満足する試合ができた。本当に嬉しく思います」

――ゲームプランについて。

「いままでの戦い方とはちょっと違って、ファイナルラグビーを。負けたらお終いというなか、今週、ミーティングを重ねながら、ゲームプランを考えながら組み立てました。皆、メンタル的にも慌てずにできて遂行できたのは頼もしいなと思います」

――守勢に回っていた前半24分、ウイングの尾崎晟也選手が自陣ゴール前でのインターセプトからトライを決めるなどして7―3と一時リード。

「我慢比べの時間帯でああいうトライを獲れたことはうちとしてはかなりでかかったですし、東芝さんもだいぶダメージを受けた感じがあります」

――前半、マッケンジー選手がゴールを外す場面もありました。それでもペナルティーゴールを選び、得点機を託した。

「前半は風下がきつかったので、入らなくても心配することなく。逆に後半は風上になったので、蹴りやすいポジションの時は優先的に自信を持って蹴ってもらいました」

――後半一時リードを与えた時。

「80分間のなかで勝つということは全体で考えていた。リスクを考えながら戦いました」

――自身のトライシーンについて。

「タイトなゲームでこそいい影響を与えなきゃいけないと思っている。あと1試合、残っているので、いい影響を与えたいと思います。(抜け出す瞬間は)本能で動きました。あまり、考えていなかった。自信が、あったんだと思います」

――後半に登場したメンバーが活躍した。

「サントリーの強さには、誰が出てもサントリーのラグビーを体現してくれるところがある。インパクト(途中出場)のメンバーが仕事をして、チームにエナジーを与えてくれるのは、最初から出ている身としては頼もしかったです。

全体的に見てフォワードが、よかった。自分たちがやるんだ、チームをリードするんだという気持ちが出ていた。来週もフォワードに頑張って欲しいです」

――ブレイブルーパス。どうでしたか。

「無茶苦茶、強いです。ちょっとでも隙を与えたら、どんどんゲインラインを越えてくる。そのプレッシャーとの戦いは、毎コンタクト、ありました」

――それでも接戦を演じられた。

「いつも通り、役割を遂行できたところはあると思います。自分のやることを100パーセントやることは、できていたんじゃないでしょうか」

――決勝へ。

「サントリーはアタッキングラグビーのチームなので、ダイナミックなアタッキングラグビーを決勝でも披露する。今日、出た修正点は、ペナルティー。自分たちでコントロールできるところを修正したいです。最後に優勝したいという思いだけでやってきたので、この自チームの仲間とともに笑顔で終わりたいです」

 昨秋の代表ツアーで副将を務めた中村亮は、6月からの日本代表活動には参加しない。2023年のワールドカップフランス大会出場を目指すなか、今度のツアーには「コンディション」の観点から選考外となった。以前、このように説明していた。

「プレーオフは、できる状態です。ただ長いスパンで見ると不安なところがあるので、万全の状態にするためにジェイミー(・ジョセフヘッドコーチ)と話してこういう形になりました」

 5月29日に国立競技場である決勝戦を最後に、当面、中村亮のプレーは見られないことになる。当日は、埼玉パナソニックワイルドナイツとクボタスピアーズ船橋・東京ベイのいずれかとぶつかる。

 サンゴリアスはこの日、フランカーで元オーストラリア代表のショーン・マクマーン、ナンバーエイトで日本代表のテビタ・タタフを欠場させたが、2人の動向についてはヘイグ監督がこう話している。

「マクマーンはキヤノン戦(3月27日)で肩を痛め、手術をしており、セレクションから外れています。タタフは体調不良で外れていますが、来週のセレクションには帰ってくる予定です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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