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日本代表2年ぶり代表戦で難敵 オーストラリア代表クウェイド・クーパー絶好調【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
33歳。かねてファンタジスタぶりで知られたが今はゲームメイクで魅する(写真:ロイター/アフロ)

 ラグビー日本代表は10月23日、8強入りしたワールドカップ日本大会以来約2年ぶりの国内代表戦をおこなう。

 相手はワラビーズことオーストラリア代表。当日、昭和電工ドーム大分に立つ同代表は、ワールドカップ優勝回数2度の強豪だ。

 18日から2日連続でオンライン取材の機会を持ち、19日に登壇したのはクウェイド・クーパー。2011、15年のワールドカップなどで計74キャップ(代表戦出場数)を持つ司令塔だ。

 2019年から近鉄でプレーして話題を集めるクーパーは今年9月、やや低迷気味だった母国代表へ4年ぶりに復帰。以後は南アフリカ代表、アルゼンチン代表に4連勝と躍進の原動力となっている。

 会見では、好調を支える精神性や日本ラグビー界への所感などについて語った。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——コロナ禍。バブルを作り、テストマッチの準備をしています。

「いつもと違う環境ではある。バスに乗って練習へ。それでやるべきことをやり、タフな試合に備える。週末を楽しみにしている」

——近鉄に在籍しながら、オーストラリア代表として活動している。

「新しい過ごし方になっていると思います。こうした機会を与えてもらって感謝しています。近鉄には、ワラビーズ(オーストラリア代表)の遠征に来させてもらっていることに感謝しています。ワラビーズではメンター的な役割もあり、練習で共有できるものを色々と共有しています。それはゲームのなかでもです。他のメンバーと会話する機会を多く持っています。それが自分の存在意義。その後はクラブに戻り、自分の仕事をする。近鉄も大事なシーズンを控えています(2022年1月からジャパンラグビーリーグワンに参戦)。新しいシーズンをファンも楽しみにしている。その一部になることを楽しみにしています」

——ワラビーズは日本代表戦後、欧州に発ちます。クーパー選手は同行予定でしょうか。

「いまのところ確定事項はありません。自分がこの後も代表に参加するかどうかで私自身が言えることはないです。ただ、ワラビーズ、近鉄との間で会話がなされています。

(代表に合流して)過去8週間、充実した時間を過ごしている。ここまで機会を得たことに感謝している。もしこれが続くのなら、同じようにコミットメントしたいです。吸収したものは所属先に還元したいと思っている。近鉄の日本のなかでのポジションを上げたい目標も持っている。

 私自身は選手であり、クラブと代表との契約関係の中間にいます。自分の国のために戦うことは毎回、素晴らしいし誇らしいですが、(今回の招集は)予定していなかったところもある。ここまで来るのがドタバタであることもあるので、クラブの事情を加味しながら今後を考えています。いま、私はここにいさせてもらうことを感謝しています。数週間の『オフ(チームから離れること)』。雇う側にとっては、とても許可を出せないものだったと思いますから」

——いまのワラビーズには、以前日本代表も指導していたスコッド・ワイズマンテルコーチがいます。

「彼と会話をしたのは、自分たちの環境についてでした。彼が何をやるか、彼が何を考えているか、彼が何をしたいのか。すばらしいやりとりがありました。彼は試合を離れている時にはどんなことをしているのか、コーチとして何を培ってきたか…。総じて、素晴らしい人間だと私は思っています」

——クーパーさんが試合に出るようになって、ワラビーズの攻撃の流れがよくなったように映ります。ニュージーランド代表に3連敗を喫したものの、クーパーさんがスタンドオフに入ってからは南アフリカ代表、アルゼンチン代表に対してそれぞれ2連勝。計4連勝しています。

「やっていることは以前と同じです。それぞれが、その内容を磨いている。毎回の練習でチームとして成長する。ニュージーランド代表との3連戦では非常に学ぶことがあり、その後の4試合をいい形でおこなえた。今回の日本代表戦は新たな挑戦。いままでと同じようなやり方、姿勢で臨みたいです。結果を出すのも大切ですが、それよりも日々、前の日よりもいい選手になる、いいチームになるのを目指していきます」

——日本でプレーした感想は。

「私のいるリーグは(下部の)トップチャレンジでした。スタンダードはトップリーグ(2021年までの国内最上位リーグ)と変わらない。努力して、毎日一定のフィットネスレベルを維持しています。規律も求められます。

 ニューノーマルのなか、新しい(トレーニングの)やり方を見つけられた。日本と母国との違いに驚くことはなく、むしろ新しいことを見つけ出せた。気持ちの抱き方、若い選手からの学びと、有意義な発見があった。それらを楽しんでいる。身体もそこまできついとは感じていない。コーチングスタッフは素晴らしいラグビープログラム、スタイルを持っていた。

 大阪での生活も楽しんでいる。ファンも近鉄の方々も大阪の皆さんも素晴らしく、驚くことばかり。支えてくれるし、試合をするたびにチケットもすぐに売り切れると聞いています。街中でもたくさんの応援をいただいている。いつも我々の勝利を願っていてくれました。練習を観に来てくれる人もいます。それぞれワラビーズ、近鉄のジャンパーを着ている。ラグビーが好きだと伝わります」

——日本代表の選手について。

「近鉄のシオサイア・フィフィタ、セミシ・マシレワは驚くほどいいプレーをしてくれる。他の選手のことはよく知らないが、トップチャレンジにも彼らのような素晴らしい選手がいるということは(それ以外の選手も脅威)。トップリーグのゲームに触れる限り、自由にボールが動く。衝突は激しくないかもしれないが、ゲームの流れは素晴らしい。そして、どのチームにも強い選手がいる。彼らがやるラグビーは観ていてワクワクしますし、タフな相手だと思われる。我々とは違うタイプのラグビーになる」

——日本代表にはオーストラリア人選手も多いですが。

「ジャック・コーネルセン、ベン・ガンターはブリスベンで戦ったことがあります。いずれも素晴らしい選手。コーネルセンはパナソニックで活躍し、信頼される素晴らしいディフェンダーです。アタックもよく、チームマンとして素晴らしい。チャンスを掴んで代表で活躍していますね。ベンは凄いアスリートです。我々から見ても、ポテンシャルは高い」

 話題に挙がったフィフィタは、クーパーを「タフっすね。タフな選手。いい人で、練習でも教えてくれたりしている」と敬意を示す。一方で、「(試合に)出してもらえたら、僕は、クウェイド・クーパーのところに当たっていきたい!」と笑顔で宣戦布告。「試合のなかではライバルになりますけど、対戦するのが楽しみです」と続ける。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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