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もしもラグビーでドラフト会議をしたら2021【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
昨季、日本一に輝いたモアラ(写真:松尾/アフロスポーツ)

 10月11日にプロ野球ドラフト会議があったのを受け、本欄にて毎年恒例の仮想「ラグビーのドラフト」を実施する。

 2022年1月に新装開店する「ジャパンラグビーリーグワン」の1部にあたる「ディビジョン1」の計12チームの「ドラフト1位」をシミュレーションした。

 現実的にラグビー界でドラフトがおこなわれない理由はラグビーがドラフト会議をやらないわけ。もしやったらどうなる?【ラグビー雑記帳】にある通り。「仮の話なので無意味では」とのご指摘へはもしもラグビーでドラフト会議をしたら2018。【ラグビー雑記帳】で反応した。過去2シーズンの結果は下記を参照されたい。

ワールドカップ後の日本代表も? もしもラグビーでドラフト会議をしたら2019【ラグビー雑記帳】

もしもラグビーでドラフト会議をしたら2020【ラグビー雑記帳】

 今年5月限りで発展的解消を遂げた国内最高峰トップリーグとリーグワンの違いに、留学生選手の出場機会がありそうだ。

 日本代表資格のある選手は国籍の有無を問わず総じて「カテゴリーA」に認定され、他の海外出身者とは別枠でプレーできると見られる。実際の現場でも、高校、大学時代から長く日本に住む外国人選手の価値は高まっている。

 なおリーグワンでは各クラブの社会性、地域密着度も重視される。もしドラフトのような制度があれば、ホストタウンにゆかりのある名手が「上位指名」されるケースも増えそうだ。

 本欄の「ドラフト」も、これらの傾向をもとに実施した。

<カンファレンスA>

NECグリーンロケッツ東葛=ハラトア・ヴァイレア 日本体育大学 フランカー/ナンバーエイト/ウイング/フルバック

 梶原健代表は、プロバスケットボールのBリーグで千葉ジェッツふなばしのクラブ経営に携わってきた。リーグワン元年に向け、オーストラリア代表指揮官だったマイケル・チェイカ氏を総監督に招聘。元日本代表でスクラムハーフの田中史朗、現役日本代表でウイングのロマノ レメキ ラヴァら、国際的選手の獲得にも積極的だ。

 千葉県の複数都市と連携協定を結び、中長期的にはクラブの法人化を目指す。ここでは日本体育大学付属柏高校出身で、次世代の日本代表と呼び声の高いランナーを獲得する。なお日本体育大学には、ヴァイレアと同じ高校出身の留学生選手が他に2人いる。

NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安=アシペリ・モアラ 天理大学 ブラインドサイドフランカー/ナンバーエイト

 責任企業の通信技術、莫大な資源をチーム強化にリンク。グラウンド内では、上昇のきっかけを作った指揮官のロブ・ペニー氏が復帰。大きく球を動かす攻撃に活路を見出しそうだ。

 今季は各ポジションに外国人選手を獲得し、その一部は日本代表ロックのジェームズ・ムーアら「カテゴリーA」扱いで出られる。バックローに「日本人扱い」で出場できる選手がもうひとりいれば、外国人枠の活用がより柔軟にできそう。ターンオーバーの技術、突進力は上位リーグでも通じる。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ=ハラトア・ヴァイレア 日本体育大学 フランカー/ナンバーエイト/ウイング/フルバック

 南アフリカ出身のフラン・ルディケヘッドコーチ、ニュージーランドで選手経験もある田邉淳アシスタントコーチらがチームを作る。フッカーのマルコム・マークス、ロックのルアン・ボタらが肉弾戦、セットプレーを制圧する傍ら、スペースへ果敢に球を動かす。

 海外の大物とシニアプレーヤー、期待の若手とバランスよく配列。特に近年では、若手の獲得合戦でも、向上心ある才能を数多く獲得してきた。移籍選手の発生で若手の台頭が求められるアウトサイドバックスに、「カテゴリーA」の候補となるユーティリティバックスを獲得。前述通り、千葉県で活動するチームにとっては「ご当地選手」でもある。

コベルコ神戸スティーラーズ=福島秀法 修猷館高校 フルバック

 ウェイン・スミス総監督、デイブ・ディロンヘッドコーチのもと、ニュージーランド流スタイルをチームに涵養。トップリーグでは2018年度王者となり、中断した2019年度(2020年1月から)でも6連勝。昨季はかすかなボタンの掛け違いで8強入りにとどまるも、選手層は分厚い。今季はベテランや外国人選手の多かったタイトファイブにも左プロップの山本幸輝、右プロップの具智元、ロックの小瀧尚弘と日本代表経験者を中心に補強している。

 他方、20歳前後の有望株も育成中。ロトルアボーイズ高校出身の左プロップクライストチャーチボーイズ高校出身のスタンドオフ/インサイドセンター日下太平、ロトルアボーイズ高校出身のアウトサイドセンター濱野隼大、帝京大学中退のスタンドオフ李承信に続き、全国大会での経験値がないなか注目される大型フルバックを指名か。

埼玉パナソニックワイルドナイツ=川久保瑛斗 長崎県立長崎北陽台高校 スクラムハーフ

 最後のトップリーグ王者となったクラブは、フロントロー、スタンドオフ、フランカーに先発と控えの両方に日本代表経験者、およびその予備軍をずらりと並べる。元オーストラリア代表指揮官のロビー・ディーンズヘッドコーチのもと、将来性豊かな逸材を育成してきたことも特筆すべき点だ。

 現有戦力だけで十分にリーグワン初代王者を狙えるパナソニックは、中長期的に法人化を目指す。ここでは元日本代表の内田啓介、春に日本代表候補入りの小山大輝が定位置を争うスクラムハーフへ、高校生の逸材を指名。接点の脇をすいすいと駆け上がるボディバランスとフットワークが魅力。

横浜キヤノンイーグルス=ハラトア・ヴァイレア 日本体育大学 フランカー/ナンバーエイト/ウイング/フルバック

 サンウルブズでコーチングコーディネーターを務めた沢木敬介監督が就任2季目を迎える。厳しい基準の設定と実戦仕様のセッションで鍛える。日本代表スタンドオフの田村優を主将に据え、複層的な攻撃ラインを敷く。与えられたレギュレーションで最大限の効果を得るべく、神奈川に大学がある留学生ランナーを1位指名。

<カンファレンスB>

NTTドコモレッドハリケーンズ大阪=細木康太郎 帝京大学 右プロップ

 下位に低迷していたチームが昨季は初の8強入りと躍進。南アフリカで実績を残したヨハン・アッカーマンヘッドコーチが就任して2季目のシーズンを迎える。昨季話題をさらったニュージーランド代表スクラムハーフのTJ・ペレナラはすでに退団も、指揮官曰く「人を大事にする」というチーム文化は変わらない。ハードワークに耐えうる戦士が求められる。

 セットプレーの強化を軸に据えているため、世代トップクラスのタイトヘッドを指名。突破力と運動量にも定評があり、勤勉さと勢いを共存させる同部のプレースタイルにもマッチしそう。

静岡ブルーレヴズ=河瀬諒介 早稲田大学 フルバック

 旧ヤマハ発動機ジュビロ。クラブの法人化に伴いチーム名を変えた。

 セットプレーを軸としながら左右に球を動かす「ヤマハスタイル」を軸に据え、無印の逸材を鍛える文化は継承されそう。ただし今年からはプロクラブになるとあり、1位指名では名実ともに納得の人選に踏み切るか。フルバックに、引退した五郎丸歩氏と同じ早稲田大学出身のエースを指名。2年目の奥村翔らとの共存、もしくは競争が楽しみだ。

東京サントリーサンゴリアス=小林賢太 早稲田大学 左プロップ

 スローガンは「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」。国内ラグビー界の綺羅星と国際舞台の大物を集め、勤勉を貴ぶ組織の色に染め上げ、攻撃的ラグビーを展開してきた。日本人勢ではインサイドセンターの中村亮土主将、スクラムハーフの流大前主将ら帝京大学9連覇時の主力選手が目立つ。近年も早稲田大学元主将で日本代表の齋藤直人ら、強豪校の中心選手が多い。

 フルバックに海外スターの加入が噂されるなか、中堅選手が定位置を争う左プロップに新戦力を加えた。アタッキングラグビーに求められる縦への推進力、パススキル、タックルをされた後にジャッカルをされないような身のこなしを有する。

東芝ブレイブルーパス東京=紙森陽太 近畿大学 左プロップ

 元日本代表の望月雄太採用が各大学からリーダー格、隠れた才能を有する留学生出身を獲得。その多くが公式戦で出番を得て、ジョネ・ナイカブラは日本代表入りした。さらに今季は、流通経済大学付属柏高校のディアンズ・ワーナーのアプローチに合意した。

 今度の紙森も、トップリーグ時代から東芝が求めるひたむきさ、まじめさをにじませる逸材。中堅以上の年代の選手が多いフロントローの争いを活性化し、将来的には天理大学卒で2年目となる小鍛治悠太と低く強靭なパックを組みそう。

トヨタヴェルブリッツ=丸山凛太朗 東海大学 スタンドオフ/インサイドセンター

 日本代表の姫野和樹らを擁する東海の雄。チーム方針はその時々で異なるが、閃きのあるインサイドバックスとフィジカリティの強いフォワード、アウトサイドバックスを輩出してきた。フォワードに他国代表経験者を多く並べる予定とあり、先発もしくはリザーブに日本人スタンドオフを置ければ柔軟な選手起用ができそう。

 その意味では、年代別代表でも司令塔を務めてきた丸山は即戦力候補となりうる。高いラグビー理解度に基づく状況判断が光る。ラン、パス、キックのいずれを選ぶにせよ、たいていは相手の急所を突く。

リコーブラックラムズ東京=アシペリ・モアラ 天理大学 ブラインドサイドフランカー/ナンバーエイト

 神鳥裕之前監督のもと、勤勉さ、粘り強い防御をチームカラーにしてきた。いまはサントリーも指導してきたピーター・ヒューワット新ヘッドコーチ、若井正樹・新ハイパフォーマンスマネージャーらがその流れを踏襲する。

 近年、有望な若手のリクルーティングに成功。明治大学元主将のフッカー武井日向は、入社2年目にして新主将に就任した。そのほか、天理大学で日本一を経験した左プロップ谷口裕一郎、大東文化大学で異彩を放ったスクラムハーフの南昴伸らに加え、御所実業高校卒業後にニュージーランドへ渡ったメイン平も加わっている。多様性を貴び海外出身選手を多く採用してきたクラブの歴史を踏まえ、ここでは大学ラグビー界随一の留学生バックローをリストアップした。

※その他のおもな「上位候補」

長田智希(早稲田大学・インサイドセンター/アウトサイドセンター/ウイング)

飯沼蓮(明治大学・スクラムハーフ)

雲山弘貴(明治大学・フルバック)

原田衛(慶應義塾大学・フッカー)

山本凱(慶應義塾大学・オープンサイドフランカー)

リッチモンド・トンガタマ(帝京大学・フランカー/ナンバーエイト)

松永貫汰(筑波大学・ウイング/フルバック)

クリスチャン・ラウイ(日本体育大学・アウトサイドセンター/ウイング)

小池隆成(東海大学・ロック/ブラインドサイドフランカー)

イノケ・ブルア(流通経済大学・ウイング)

川崎清純(関東学院大学・ウイング/フルバック)

木田晴斗(立命館大学・ウイング)

ヴィリアミ・ツイドラキ(摂南大学・アウトサイドセンター/フルバック)

シオネ・ポルテレ(目黒学院高校/右プロップ)

高橋佑太朗(茗溪学園高校/スクラムハーフ)

楢本幹志郎(東福岡高校/スタンドオフ)

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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