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母と納豆が好きなシオサイア・フィフィタ コロナ禍で日本代表合宿も「楽しみ」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
オンライン取材に応じるフィフィタ

 苦しい局面を前向きに乗り越えよう。そう自分に言い聞かせているようだ。

 ラグビー日本代表のシオサイア・フィフィタが9月23日、オンライン取材に応じる。

 代表デビューを飾った今年5~7月のツアーを振り返り、6日後に始まる秋の代表活動を展望。2019年のワールドカップ日本大会で8強入りした先輩方の名を挙げ、充実した心持ちを明かした。

 話の延長で、「僕は20歳過ぎていますけど、(故郷の)トンガへ帰ったらお母さんと一緒に寝ます」とも笑う。身長187センチ、体重105キロのサイズにあって、意外な一面も示した。

 約1年8か月ぶりに活動を再開させた今春の日本代表にあっては、6月26日のブリティッシュ&アイリッシュライオンズ戦、7月3日のアイルランド代表戦に続けて先発していた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——前回の代表活動終了後は。

「イギリスから帰ってきた時は2週間くらいゆっくり休んで。そこからトレーニングにちょっとずつやってきて、もうコンディショニングはばっちりやし、あとは来週の合宿までの5日間、トレーニングをしながら――家でゆっくり休むのが大好きなので――ゆっくり生活したいなとは思っています」

——そう言えば、母国へはどれくらい帰っていませんか。

「2年間とかですかね。(最後に帰ったのは)大学3年の冬です。家族のサポートでここまでこられたので、凄く、家族には感謝している。

 ライオンズ戦のメンバーに入った時、お母さん(メレナイテさん)、泣いていました。発表まで言わんとこうかなと思って、『メンバーに入ってる?』と聞かれても『入ってない』と嘘をついてたんですよ(実際、試合のメンバーは発表の数日前に固まっていることが多い)。

 メンバーが発表された瞬間、トンガは夜だったんですけど、(翌日の)練習から(部屋に)帰ってきたら『メンバー入ってるじゃん』って。こっちから電話を返したら、『10分前には泣いてた』って、めちゃ喜んでくれてました。(自身も)泣いてました! 泣いてました! 一緒に泣いてました。僕、20歳過ぎてるんですけど、トンガに帰ったらお母さんと一緒に寝ていますよ。きょうだいたちは自分の部屋で寝ていて、僕も部屋はあるんですけど、お母さんが『一緒に寝よう』と言ったら『寝よう』と。

 ライオンズ戦は絶対スタメン獲るって、(事前の)合宿の時から思っていた。やはり自分の頑張り次第。いまでも思っているんですけど、(頑張り次第で)もっともっと行けるんじゃないかなって。まだまだ頑張ります」

 母国ではコウロGPS、トンガカレッジアテレで楕円球を追い、15歳で来日。日本航空石川高校を経て2017年に入った天理大学では、副将として迎えた2020年度に初の大学日本一に輝く。3年目のオフにはサンウルブズの一員として国際リーグのスーパーラグビーを経験し、2021年度の日本代表入りへの足がかりを作った。

 代表では本職のアウトサイドセンターと異なるウイングの位置でプレーも、試合ごとに防御の精度を高めて攻めては豪快な突破やトライを記録した。

——遠征後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチからのフィードバックは。

「そうですね、フィードバックというか、『もっともっと良くなるよ。これ以上に上を目指して』と言われました。ウイングの時はディフェンスも問題があったので、毎日ジェイミーとかにウイングのディフェンスを見てもらいました。ライオンズとのデビュー戦の時にちょっと(失点につながる)ミスがあったんですけど、アイルランド代表戦までの間、毎日、ディフェンスの練習をしていて、(改善できた)。よかったなと思っています。ディフェンスのところが多分一番、問題なんで。この合宿でもジェイミーは、それを見てくれていますね」

——アピールできた点は。

「(全般的な)ウイングの仕事で、いい仕事をしてたんじゃないかと僕のなかでは思っていますね。ディフェンス、よかったな(成長できた)、という風に思っています。外、裏(のスペースを)カバーする。それを練習でもめっちゃ(意識)していたので、よかったと思っています」

——希望ポジションは。

「そうですね。一番はセンターですけど、ウイングも代表に入った時にやったら面白かったし、ウイングも好きになりました。センターでもウイングでも、やらせてもらったら頑張ります」

——ウイングの面白さは。

「キックを蹴ってチェイスしたり、試合の後は疲れすぎてすぐに寝たり。凄くしんどいですけど、そういうところが楽しかった。(走行距離は)たぶん、ウイングの方が長いんじゃないですか。あ、それは自分の頑張り次第です。さぼったらセンターの方が走ることになる。さぼらないよう、ワンチームで頑張っています。(代表では)いまのところウイングしかやっていない。センターにやらせてもらうことになっても、文句なしで何でも頑張ります!」

——目標にしているウイングの選手は。

「…あまり考えてないですけど…マツさん——松島幸太朗さん——と初めて一緒に練習した時『すごいな』と思った。スピード、ラン…。マツさんにボールを回したら何とかやってくれる。僕もそういう人になりたいなと思いました。パワフルなウイングになりたいんですけど、スピードトレーニングもやっているので、この身体でもっともっと走れるようになりたい。あとは、引退していますけど福岡堅樹さんも。あの2人には憧れていますね」

——それはそうと、合宿中はあまり外出できなかったのではないでしょうか。

「僕は全然、大丈夫です。そういう意味で合宿に入るんで。いまはコロナで大変なんで、それはしょうがないなと思っています。

 テビタ・タタフ、レメキ マノ(ロマノ ラヴァ)とかナキ(アマナキ・レレイ・マフィ)…。そういうトンガ(出身)の選手だけじゃなく、色んな人とコミュニケーションを取っています。(ホテルのなかで)遊んでますね、カードとかして。外に出れないですけど、そういう楽しいところもあります」

——カードゲームは誰が強いのですか。

「ラピース(・ラブスカフニ)、強いっすね。(笑いながら)ただ、ナキとマノはいつもチートしてますよ。だから、あの2人がいつも勝っています!」

——他に、代表選手について印象的だったことは。

「ラグビーとは別のことなんですけど、姫野(和樹=今年は一時ニュージーランドでプレー)さんの英語がうますぎてびっくりしました。日本人じゃない人と、英語で喋ったりしていますね。初めて聞いた時、びっくりしました。(ニュージーランドに滞在して)5か月も経っていないのに」

——フィフィタ選手も15歳で来日。当時は日本語を覚えるのが大変だったのでしょうか。

「凄い大変でした。そうですね、めっちゃ大変です。学校では書き方とか覚えたんですけど、会話とかは皆に教えてもらった。日本航空石川高校から天理大学に行った同級生、藤原忍には、朝に寮で5つの(新しい)単語を言われて、練習後とかに『きょう言った単語を…』と(復習した)」

 今度のツアーでは計4つのテストマッチに挑む。特に10月23日には、昭和電工ドーム大分でオーストラリア代表とぶつかる。

 相手の司令塔候補は、クウェイド・クーパー。フィフィタにとっては、現所属先の近鉄花園ライナーズの同僚でもある。新星は笑う。

「ウイングでもセンターでも出してもらえたら、僕は、クウェイド・クーパーのところにバンバン当たっていきたい! (クーパーは)タフっすね。タフな選手。いい人で、練習でも教えてくれたりしている。試合のなかではライバルになりますけど、対戦するのが楽しみです」

 もっとも当の本人は、試合はもちろんそこまでの過程が楽しみだという。その言葉に、生来の資質が見え隠れしたような。

「試合も楽しみですけど、合宿が一番楽しみ。追い込まれるのが。もちろん怖いんですけど、しんどいことをやったらいいことが返ってくるんで、それを信じて頑張っていきたい。試合も出られるように頑張ります。この前の合宿もしんどかったですけど、皆が元気にやっている。すごく楽しいですね。これが本物のラグビーです」

 苦難を前向きに乗り越える。その資質は高校時代から備わっていたようで、来日後の食事についてこんなエピソードを披露した。

「最初、納豆食べた時は臭いなって思ったんですけど、次の日から卵と混ぜて、しょうゆも入れて、ご飯の上に乗せたらおいしいなと思って。そこから毎日、毎朝、納豆を食べますね」

 母を愛する青年は、母と離れ離れになっても逞しかった。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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