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15人制日本代表ポルトガル代表戦の狙いは? 男女セブンズ指揮官決定はまだ?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は2019年。左から藤井、岩渕、男子15人制日本代表ジェイミー・ジョセフHC(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 日本ラグビーフットボール協会(日本協会)は9月15日、男子15人制日本代表の今秋のテストマッチ(代表戦)の追加決定、男女7人制日本代表の体制刷新の進捗状況について発表。同日にあった同協会の定例理事会後、岩渕健輔・同協会専務理事がオンラインで会見した。

 男子15人制日本代表は今年6月、ワールドカップ日本大会以来約2年ぶりとなる代表活動を再開させたばかり。7月3日までにブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ、アイルランド代表とぶつかり2連敗を喫したが、収穫を得ていた。

 秋の活動へ向けて8月下旬に再始動を予定するも、9月下旬からのキャンプ開始が決定。10月下旬以降はかねて「国内2試合、海外3試合を交渉中」(藤井雄一郎ナショナルチームディレクター)で、11月6日のアイルランド代表戦(ダブリン)、同月 20日のスコットランド代表戦(エディンバラ)が決まっていた。

 今回、発表されたのは同月13日のポルトガル代表戦(リスボン)。アイルランド代表、スコットランド代表が世界ランク1桁台なのに対し、ポルトガル代表は19位。10位の日本代表はかねて上位国との対戦を目指していたが、岩渕専務理事は今度のポルトガル代表戦について「代表チームの意向を最大限、踏まえたうえでできたマッチメイク」と話す。 

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——なぜ、ポルトガル代表だったのか。

「ポルトガル代表が云々というより、代表チームの戦略——グラウンドの上の戦略ではなく、ワールドカップに向けてどのようにチームを作るかの考え——を重視しています。代表チームの意向を最大限、踏まえたうえでできたマッチメイクです。色んな対戦相手と試合をすること、ポルトガルでゲームをすること、さらには色んな選手が色んなチャンスを得るのも重要。そのように受け取っていただきたい」

 日本大会で初の8強入りした日本代表は、2023年のフランス大会でさらなる上位進出を目指す。さらに、目標達成に必要な項目のひとつに選手層の拡大を挙げる。

 その背景を踏まえれば、今度の談話を求めるまでもなくポルトガル代表戦の意義は透けて見えよう。

 陣営は引き続き、国内でのテストマッチ実施も期待されている。

 一方、7人制の現場はどう動いているか。

 今夏のオリンピック東京大会で、岩渕専務理事がヘッドコーチ(HC)を務めた男子は12チーム中11位、今年に入ってハレ・マキリHCが就いた女子は12チーム中最下位に終わっている。大会直後の総括会見で、日本協会は早期の指揮官交代を目指しているとしたが、この日の時点で岩渕専務理事は「発表に時間がかかる」としている。

 なお男子は、9月下旬にカナダで予定されるワールドシリーズ(世界サーキット)のバンクーバー、エドモントン両大会への出場を見送ることを明らかにした。

 説明はこうだ。

——まず、ワールドシリーズ2大会の参加見送りについて。

「男子7人制日本代表は9月にカナダで2大会が予定されていましたが、大会側が準備していた様々な大会に関する要件——ワクチン接種等の感染対策——それも厳しく、その条件でやるのが難しかった。9月の大会参加を見送っています。

コアチームとして出場権はありましたが、(参加を)止めた。コロナ禍において出場要件が厳しく、それを無理矢理クリアしていくことと強化の中身を考えた(比較した)時、今回については国内で状況を整えてから行くのが先決だとしました。帰国後の隔離期間、その後にある大会の問題などの絡みでそのようにしています。ワールドラグビーも、カナダ大会以降の大会のリリースはしていない。我々はそれ以降の大会の状況を踏まえ、その時もしくは(カナダへ行った場合、そこから)帰ってきてからの強化を含め、そのような判断をしました」

——コアチームとは、ワールドシリーズに常時出場できる上位陣。今度の2大会不参加は残留争いに影響しないか。もしくは、参加できないことへの救済措置があるのか。

「今度のカナダの大会では日本以外のコアチームのいくつかも出場しない。我々と同じような状況が他の国にもあると認識しています。

これは公表されているのかがわかりませんが、今回のワールドシリーズのシーズンではカナダ大会から年末までがひとクールで、次のクールは22年に入ってからとされています。またオリンピック後の今度の21年のシーズンは、コアチームの入れ替えはないと、すでに、なっています。今回、数は別にしていくつかの国が(カナダへ)行かないことになっているが、それを受けての救済はないし、入れ替え戦もない、ということになっていると思います」

——そもそも、いまHCを決められない理由は。

「HCについてはすでに交渉を続けております。現在のコロナ禍での来日タイミング等を含め、発表できるタイミングがあれば速やかに発表させていただきたい。

いまの日本の状況、世界の状況が色んな意味で大きく変わっている。本来的にはたとえばきょう、あるいはもっと前に発表することで進めてきましたが、実態として難しい部分が出ている」

——ということは、男女とも外国人指揮官を招く予定なのか。

「現状、理事会でも審議はしていますが、現状の候補者としては日本に居住を置かない人を中心にあたっております。他の候補者には日本にいる人間もいる。いま、最終調整をおこなっています」

——そもそも、指揮官の採用基準は。

「レビューについては後日、担当から出されると思いますが、日本のラグビーが飛躍するために、7人制においても世界的な実績を残した人材を採用するのが強化方法のひとつとしては必要です」

 確かに男子15人制日本代表が浮上したのも、世界的名将とされるエディー・ジョーンズHC(当時)が2012年に就任してからのことだ。

——一方でいまは、誰がHCを務めるにしても大変な状況でもあると思います。男子は有力選手の招集に難儀し、女子は選手層の抜本的な底上げが急務とされています。

「いま仰っていただいた通りで、例えば今回のオリンピックでメダルを獲ったHCを採用すればすぐに強くなる、というわけではないと思います。HCのアポイントメントも非常に大切ですが、それだけではないところ——7人制の環境をどのように整えるか——でも協会としてサポートしたい」

——「7人制の環境をどのように整えるか」。具体策は。

「これは私ではなく、強化の担当の立場の者からしっかりと話をさせるべき。そのような形でお願いしたいと思っています」

 競技人気の起爆剤は、国際大会における日本代表の成果である。あらゆるカテゴリーの代表チームを首尾よく機能させるには、ガバナンス側の時流を踏まえた意思決定が不可欠だ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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