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コロナ禍で秋シーズンの日程変更…。大学ラグビー開幕前ベスト15【ラグビー雑記帳】※改正あり

向風見也ラグビーライター
早稲田大学の長田主将。昨季までアウトサイドセンターも今季からインサイドセンターに(写真:松尾/アフロスポーツ)

 東西の大学ラグビーシーンはこの秋、感染症の影響を受けながら開幕を迎える。

 新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大してから2度目のシーズン。昨季全国準優勝の早稲田大学などが加盟する関東大学対抗戦Aは9月12日に、前年度の大学選手権で初の日本一に輝いた天理大学のいる関西大学Aリーグは18日にそれぞれ開幕する。

 一方、東海大学が4連覇を目指す関東大学リーグ戦1部は始まるタイミングが変わる。当初は11日の中央大学対法政大学を皮切りに日程が進むはずだったが、夏までに参加チームの複数でウイルスの感染者が出た影響でスタートは26日に遅れる。11、12日に実施されるはずだった計4試合は、10月16、17日に回る。

 関係者の話を総合すれば、予定通りの開催を望むクラブもあったものの、最終的には主催の関東ラグビー協会が「現況、リーグ戦全 8 チーム中、半数のチームが新型コロナウイルス感染症の影響により活動を中止している状況です。鋭意、当初の予定通り開幕を目指してまいりましたが、チームと協議・合意の上(以下略)」というコメントのもと、期間の短縮と全日程の消化の両立を目指すこととなった。

 リーグ戦では、流通経済大学が6月に選手寮で大規模なクラスターを発生させ7月いっぱいまで活動停止。同大が練習を再開させた8月には、東海大学、日本大学、大東文化大学、法政大学、専修大学が夏合宿をおこなわなかった。東海大学が夏合宿を取りやめたのは宿泊予定先の事情を鑑みてのことで、部内で感染拡大があったわけではないと説いていた。

※追記(9月4日午後) 関西大学Aリーグの開幕節4戦のうち、京都産業大学対摂南大学の一戦が10月24日に延期となった。関西ラグビー協会は、「新型コロナウイルス感染症の影響による部活動休止に係るコンディション不足のため」と説明する。

■日本一の行方

 各地域の上位陣がぶつかる大学選手権は11月下旬からあり、東西の上位陣は12月に本格参戦。関東の対抗戦、リーグ戦、関西のリーグ戦から上位3チームずつが出られ、前年度の決勝戦に進んだチームの加盟団体からは追加で1チームずつ、出場権が与えられる。

 もっとも、今季の出場枠が従前のレギュレーション通りになるとは限らないようだ。昨季の選手権開催時に出された「第 57 回全国大学ラグビーフットボール選手権大会 新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン (要旨)」にはこうある。

「次大会の各リーグの出場チーム数とシード枠の決定について、今大会において新型コロナウイルスの影響に起因する一部出場チームの棄権が発生した場合は、公平性を鑑み、次大会も今大会同様の出場チーム数、及びシード枠を踏襲するものとする」

 この文面通りに事が進むのだとしたら、2019年度のファイナリストは対抗戦勢の早稲田大学と明治大学だったため、2021年度の選手権出場枠は「対抗戦5、関東リーグ戦3、関西3」となる。

※追記(9月8日午後) 追加情報を受け、上記のように改正しました。

 では、今季の日本一を争うのはどこか。

 昨季は天理大学が初めて頂点に立った。夏にクラスター発生による活動停止を余儀なくされながら、11月開幕と大幅に短縮された関西大学Aリーグでトライアルアンドエラーを重ねて選手権では破格の強さを示した。

 それを支えたのは、4年生の経験値だろう。スクラムハーフの藤原忍、スタンドオフの松永拓朗、アウトサイドセンターのシオサイア・フィフィタら攻撃の軸は、1年時から不動のレギュラーだった。主力だったこともあり、小松節夫監督は蓄積された財産について言及した。

「経験値が高かった。決勝に懸ける思いが過去2回に比べると強かった」

 今季はディフェンディングチャンピオンが多くのメンバーを入れ替えていること、何よりパンデミック下で先行きが不透明であることから、王座の行方はますます混迷を極めそうだ。

 ただ、優勝するのに必要な項目を「栄養管理を含めた豊かな練習環境」「互いに規律を遵守し合うチーム文化」「先端のコーチング」「集まる人材の豊富さ」と箇条書きにすれば、その4項目すべてで高い値を示すのは早稲田大学、明治大学、2017年度まで9連覇の帝京大学といった対抗戦勢、関東のリーグ戦で3連覇中の東海大学、戦力が入れ替わってもタフな防御、セットプレー、アップテンポな攻めといった持ち味が変わらない天理大学に絞られそうだ。

■開幕前ベストフィフティーン

 以下、「開幕前ベストフィフティーン」を紹介する。筆者が現地および映像で観られた東西の春先の公式戦や夏場の練習試合でのパフォーマンスをもとに、独断と偏見で編成。開幕前まで調子のよかった選手とその特徴を伝える。

1、小林賢太(早稲田大学4年/関東大学対抗戦A)…今季、右プロップからコンバート。身軽な走りに加え、新たな位置でのスクラムでも手応えか。

2、酒木凛平(大東文化大学4年/関東大学対抗戦A)…鋭いピック&ゴー、圧力下でのパス、防御の頭上を越えるキックとスキルフル。

3、細木康太郎(帝京大学4年/関東大学対抗戦A)…向こうの塊を引き裂くスクラム、突進力、スピード。

4、小池隆成(東海大学4年/関東大学リーグ戦1部)…衝突の場面で数多く顔を出す。

5、ワイサケ・ララトゥブア(東海大学3年/関東大学リーグ戦1部)…モールの芯となり、突進力も際立つ。

6、リッチモンド・トンガタマ(帝京大学4年/関東大学対抗戦A)…スピードとパワー。強烈なランニングはラインアウトからの1次攻撃などで脅威。

7、福田大晟(明治大学1年/関東大学対抗戦A)…小柄ながら強烈なタックルとジャッカルで気を吐く。倒れた後の起き上がり、ポジショニングも速い。

8、奥井章仁(帝京大学2年/関東大学対抗戦A)…突進、ゴール前での防御。明治大学との練習試合にて、試合終了後のスクラムで組み直しが重なるや最後列から前に出て、両軍フロントローと正対して落ち着くよう訓示。堂々。

9、飯沼蓮(明治大学4年/関東大学対抗戦A)…自軍のフィットネスでの優位性を活かしたクイックリスタート、鋭いサイドアタックで際立った。

10、高本幹也(帝京大学3年/関東大学対抗戦A)…攻めのアイデア豊富。フェーズを重ねるなかで確実に前へ出る一手を打つ。

11、高本とむ(帝京大学2年/関東大学対抗戦A)…速さとトライに至るまでのアイデア。

12、長田智希(早稲田大学4年/関東大学対抗戦A)…ゲインラインへ駆け込んでの突破。

13、マナセ・ハビリ(天理大学/関西大学Aリーグ)…ラインブレイク、アウトサイドでのジャッカル。

14、槇瑛人(早稲田大学3年/関東大学対抗戦A)…スピードと決定力。防御のわずかな隙間へ切れ込み、捕まっても勢いよく前に出られる。

15、松永貫汰(筑波大学4年/関東大学対抗戦A)…防御の近くで球をもらい、正面から仕掛けているようで細かいフットワークを駆使して前に出る。

 今回は、参加試合数が限られた天理大学のアシペリ・モアラ、慶應義塾大学の山本凱ら、開幕後の活躍が見込まれる実力者の多くが事実上の「選考対象外」となっている。

 また上記選考者以外に可能性のあるルーキーが多かったのも今度のプレシーズンの特徴である。なかでも天理大学の司令塔団は注目だ。劣勢時もテンポよくさばけるスクラムハーフの藤原健之朗、ロングキックと図太そうな風情が印象的なスタンドオフの筒口允之。向こう4年間の注目選手となりそうだ。

 要は、「注目選手」は上記の15人だけではない。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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