ラグビートップリーグに加盟してきたヤマハが6月23日、プロクラブ発足を前提とした子会社の設立を表明する。

新チームのエンブレム
新チームのエンブレム

 チーム名は「静岡ブルーレヴズ」だ。企業名を入れず、それまでサッカーJリーグのクラブも用いていた「ジュビロ」の名は使わない。

 新社長は山谷拓志氏。バスケットボールのBリーグで茨城社長などを歴任したニューリーダーは宣言した。

「(目標は)『革新と情熱で、心躍る最高の感動をつくりだす』です。感動とは単に『面白かった、満足した』ではなく、期待を裏切る非日常の感動でなければ(いけない)」

 今季限りで現役を引退した元日本代表の五郎丸歩氏もこの法人へ入る。

長らくクラブの象徴だった五郎丸
長らくクラブの象徴だった五郎丸写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 知名度を活かした講演活動などと並行しながら、チケット企画の立案や会場での顧客満足度向上への施策を考える。

 クラブは競技の普及、育成に関わるアカデミー事業へも取り組む。それをバックアップするのは静岡県協会で、星野明宏・同代表理事は述べる。

「協会としてはチームへ様々な人を結びつけるハブになりたい。ブルーレヴズを応援した翌日に『よし、きょうから一生懸命頑張ろう』と思えるようにするよう、サポートというより当事者として参画したい」

会見する星野氏(写真提供=新会社設立発表会見事務局)
会見する星野氏(写真提供=新会社設立発表会見事務局)

 山谷氏によると、新法人は自らスポンサー獲得に注力しながらも、責任企業であるヤマハから「これまでと変わらぬサポート」を得られそう。ヤマハの大半を占める社員選手も、概ね現状と変わらぬ勤務状態を保つつもりだ。

 前身のヤマハ時代から指揮を執る堀川隆延ゼネラルマネージャー兼監督は、現役引退時に山谷氏と知己を得ており、特定のスター選手獲得に頼らぬ同氏の強化方針に感銘を受けていた。

 2014年、清宮克幸監督のもとでヘッドコーチを務めて日本選手権を制覇。当時国内で珍しかった、ポッドシステムを用いた攻め方を採用していた。長谷川慎コーチ(現日本代表スクラムコーチ)の教えるスクラムと相まって、人材の有無に頼らない仕組みの確立が注目された。

会見する堀川氏(写真提供=新会社設立発表会見事務局)
会見する堀川氏(写真提供=新会社設立発表会見事務局)

 堀川氏は言う。

「これまで我々が大事にしてきた、育成して強くする理念はぶらさずにいきたい」

 改革には背景がある。

 ラグビーワールドカップ日本大会(W杯)開催前の2019年夏、日本ラグビーフットボール協会(日本協会)副会長に就任したてだった清宮氏がプロリーグの構想を打ち出す。参加を希望するクラブには法人化を求め、ホームグラウンドにはW杯の試合があった12会場を想定する。企業主体の日本ラグビー界に、大きなメスを入れんとした。

清宮副会長
清宮副会長写真:アフロスポーツ

 もっとも、この構想には議論の進め方で賛否が集まった。「合理性はあったけど…」と某強豪クラブ首脳。20年1月、清宮副会長と似た役割を期待されて日本協会理事となった谷口真由美氏が新リーグの準備室長に就く(今年6月までに準備室長、理事ともに退任)。山谷氏の説明によると、ヤマハがクラブの法人化を本格的に目指した時期は谷口氏らによる新リーグの準備が始まったタイミングと重なる。

 ちなみに清宮氏、谷口氏の就任前には、河野一郎・前副会長を旗頭に「トップリーグ・ネクスト」というホーム&アウェー形式のリーグ構想があった。清宮氏と親交が深い谷口氏は、今度の新リーグを「トップリーグ・ネクストとプロリーグの折衷案」だと強調。法人化を目指すクラブも、既存の企業チームとして活動するクラブも、ラグビーらしい「ゆるさ」と捉えて幅広い参加申請を容認する。

 一方、参加チームのディビジョン分け(1部が現存のトップリーグより4チーム少ない12チーム)では、リーグ及びクラブの「事業化」と「社会化」という方針を重視。今季のトップリーグでの競技成績が審査に締めるウェイトは、全体のうち2割程度と言われる。

 残りの8割はホームグラウンドの有無や使用頻度の見込み、地域との関わり方、若年層向けのアカデミーの有無や運用ぶりが対象となり、それらの審査はトップリーグ開幕前に終了している。

 その時点での途中順位は非公開。ただし関係者の証言を総合すれば、2018年度まで下位に低迷しながら1部入り濃厚と見られたチームは複数ある。

 静岡県協会の関係者は、同年まで5季連続4強入りのヤマハの1部入りは「安泰でしょう」と期待する。この日の会見によると、ヤマハは新リーグの審査に必要な書類には「静岡ブルーレヴズ」の名義を付記している。

新チームのホームスタジアムは写真のヤマハスタジアムやエコパスタジアムが想定される
新チームのホームスタジアムは写真のヤマハスタジアムやエコパスタジアムが想定される写真:アフロスポーツ

 新リーグの運営母体となるジャパンラグビートップリーグはいま、2022年1月の開幕に向けた共同検討委員会を実施中。委員長は、谷口氏から準備室長を引き継いだ岩渕健輔・日本協会専務理事らが務めチケット収益の配分などについて討議している。

 山谷氏は、前述の流れとは無関係な文脈で「静岡から世界を魅了する、日本一のプロフェッショナルラグビークラブを作る」。企業チーム中心の時代もを経たバスケットボール界での経験を踏まえ、こうも言った。

「プロ化が正しいかどうかという正解の(を求める)議論ではない。(それぞれがプロクラブか企業クラブかの)どっちがやりたいか、うまく回っているかを証明することが大事。業界でインパクトを与え『プロでもいける』と貢献できたら」

 日本ラグビー界の過渡期にあって、象徴的な存在のひとつとなりたい。