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日本代表36名はどう選ばれた?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真左から田村、リーチ。新チームでもリーダーシップが期待される。(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 5月下旬に始動するラグビー日本代表のメンバー36名が24日、発表された。顔ぶれは以下の通り。

 表記は名前(所属チーム)…身長・体重・生年月日・キャップ=代表戦出場数

◎=2019年ワールドカップ日本大会出場選手(下記○□の該当者含む)

○=同大会は未出場も、同年に代表候補と見なされたり、代表候補合宿に参加していたりした選手(下記□の該当者含む)

□=◎○以外で、ジェイミー・ジョセフ体制下の代表関連活動、および2017年以降のサンウルブズに参加経験がある選手(2020年の水面下での活動は除く)

★=2020年のサンウルブズに参加した選手

▲=今回、初めて代表資格を得られる、または得られる見込みの選手

※現在海外でプレーしており、今回は欧州遠征(下記詳述)で途中合流予定の選手

サンウルブズ=2016年からの5年間、国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦。2017年以降は現体制の日本代表とプレースタイルの大枠やコーチ陣を共有した。2018年はジョセフ自ら指揮を執り、首脳陣と一部選手の信頼関係の礎ができた。

<プロップ1>

稲垣啓太(パナソニック)…186・116・1990/06/02・34 ◎

クレイグ・ミラー(パナソニック)…186・116・1990/10/29・― □▲

森川由起乙(サントリー)…180・113・1993/02/06・―

<プロップ3>

具智元(ホンダ)…183・118・1994/07/20・13 ◎

ヴァル アサエリ愛(パナソニック)…187・115・1989/05/07・14 ◎

垣永真之介(サントリー)…180・115・1991/12/19・9 □

<フッカー>

坂手淳史(パナソニック)…180・104・1993/06/21・21 ◎

堀越康介(サントリー)…175・100・1995/06/02・2 ○

中村駿太(サントリー)…176・100・1994/02/28・― □

<ロック>

ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ)…188・112・1989/01/06・16 ◎

ヘル ウヴェ(ヤマハ)…193・113・1990/07/12・16 ◎

ジェームス・ムーア(宗像サニックス)…195・110・1993/06/11・8 ◎

マーク・アボット(宗像サニックス)…197・111・1990/02/20・― □▲

<フランカー>

リーチ マイケル(東芝)…189・113・1988/10/07・68 ◎ =主将

ピーター・ラブスカフニ(クボタ)…189・106・1989/01/11・8 ◎

小澤直輝(サントリー)…182・102・1988/10/08・4 □

ベン・ガンター(パナソニック)…195・120・1997/10/24・― ○▲

ジャック・コーネルセン(パナソニック)…195・110・1994/10/13・― ▲

<ナンバーエイト>

アマナキ・レレイ・マフィ(キヤノン)…189・112・1990/01/11・27 ◎

姫野和樹(トヨタ自動車)…187・112・1994/07/27・17 ◎

テビタ・タタフ(サントリー)…183・124・1996/01/02・3 

<スクラムハーフ>

茂野海人(トヨタ自動車)…170・75・1990/11/21・10 ◎

荒井康植(キヤノン)…175・80・1993/05/14・― □

齋藤直人(サントリー)…165・73・1997/08/26・― ★

<スタンドオフ>

田村優(キヤノン)…181・92・1989/01/09・63 ◎

松田力也(パナソニック)…181・92・1994/05/03・24 ◎

<ウイング>

レメキ ロマノ ラヴァ(宗像サニックス)…177・94・1989/01/20・15 ◎

江見翔太(サントリー)…183・95・1991/12/08・― □

セミシ・マシレワ(近鉄)…184・93・1992/6/9・― □

シオサイア・フィフィタ(近鉄)…187・105・1998/12/20・― ★

<ウイング/フルバック>

松島幸太朗(クレルモン)…178・88・1993/02/26・39 ◎※

ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタ)…192・102・1989/04/13・― ○▲

<センター>

中村亮土(サントリー)…181・92・1991/06/03・24 ◎

ラファエレ ティモシー(神戸製鋼)…186・100・1991/08/19・23 ◎

シェーン・ゲイツ(NTTコム)…183・95・1992/09/27・― ○

<フルバック>

山中亮平(神戸製鋼)…188・100・1988/06/22・18 ◎

 同代表候補の52名は4月12日、発表されており、追加の2名を加えた計54名のうち36名が今回、選出された。主将は2019年のワールドカップ日本大会に続き、リーチが務める。日本大会のスコッドにいた31名のうち、今度リストアップされたのはリーチを含め計19名。

 チームは26日から大分・別府合宿に入り、6月12日には静岡・エコパスタジアムで特別編成されるサンウルブズと強化試合をおこなう。

 最大のターゲットは同月26日のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドを代表する選手を集めて4年に1度編成される同チームとは、スコットランドのエディンバラで激突する。さらに7月3日には、ダブリンでアイルランド代表戦に挑む。

 前年度は社会情勢により予定されていたテストマッチ(代表戦)やキャンプがなくなり、代表活動は日本大会以来となる。同大会で過去最高の8強入りを果たしたジェイミー・ジョセフヘッドコーチはこの日、会見し、選考方針や背景を語った。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ジョセフ

「まず皆様、お集まりいただきありがとうございます。2019年のワールドカップ以降(ジョセフ単独としては)最初のミーティング(会見)となります。

ここで皆と合流できることへはスタッフともどもわくわくしている。別府合宿ができることも嬉しい。リーダー陣ともすでに集まり、会話をし始めています。

サントリーとパナソニックのトップリーグ決勝をみてもわかるように、レベルが高くタイトな試合も観られました。高いレベルの競争から選手を選べたと感じています。

今回のチャレンジは、準備期間が限られること。別府で約10日の合宿を張り、サンウルブズとの強化試合をします。その後、イングランドへ。そのため、トップリーグで仕上がりのいい選手、コンディションのいい選手、フィットネスがいい選手を選ばせてもらっています」

——選考方針を改めて。

「テストマッチの経験がある選手、それと同時に、フォームが仕上がっている選手。そこから準備が短いという意味では、経験のある選手(の存在)が重要。加えて、トップリーグでいいプレーをした選手を選んでいます。いままでの3週間における試合を観る限り、サントリーとパナソニックの選手からはプレッシャーのなかで戦うところが見られた。それ以前にあった50~60点差の試合になると、自分たちが選ぶのは難しい。また2023年のワールドカップフランス大会まであと2年、ありますが、そこへ向かってゆく時に年齢の上がる選手よりも、若い選手をメンタリティの部分を含めて育成し、備えてゆく。そうした意味で、若い選手も入れています」

——「リーダー陣ともすでに集まり、会話をし始めています」。どんな話をしたか。

「オンラインでミーティングをした。(合宿前の)この段階からコネクションをしていこうと話している。とにかく合宿まで時間がない。これから、トップリーグのファイナルに出ていない選手は(始動より)2~3日早い火曜から別府に行き、フィットネス練習を始めていきます。ファイナルにいた選手はこれから合流します。リーチと話したことは『いまからコネクトしないといけない。2019年に何がよかったか。チームとしてタイトだった。繋がることができていた。それをいまから始めないといけない』。別府入り後の2~3日を無駄にしてはいけないと、伝えました。お互いがコミュニケーションを取っていくことで先手を取ってスタートするよう話しました。そうすることで、全選手が合流する時にはいい関係ができ、チームとして前に進めていけるのではないかと思いました」

 ここで関係者から「質問は選考された選手に関してのみ」との注意事項が通達される。

 今回は日本大会組のうち、しばらく怪我でグラウンドから離れている宗像サニックスのレメキがメンバー入りするも、神戸製鋼でプレーしていた中島イシレリ、アタアタ・モエアキオラが選外となっている。それ以外ではやはり今季まで神戸製鋼に在籍のナエアタ ルイ、パナソニックで優勝した野口竜司らが外れている。

——トップリーグで活躍しているように見えて、今回のリストに名前がない選手がいます。選考に迷った領域はありましたか。

「まずひとつ、お話ししたいのは、このコロナ禍でたくさんの影響を受けたということ。通常のプロセスでは、自分が日本にいて、各チームへ行くなどし、選手とコミュニケーションを取ることができる。ただ、それは自分がニュージーランドにいることで難しくなる。選考において、選手たちとの関係性は作れなくなっていました。そこでワイダースコッドとして50数人を選んだのは、『私たちが見ている』と認識して欲しかったからです。

 最終的にそこから選ばれない選手もたくさん、出てきます。ただ私たちは、これ以降、秋にもテストマッチをします。その前の9月には16週間の合宿があり、そこではたくさんの選手が入ってきて、たくさんの練習をし、育成できると考えています。固有名詞は出したくないが、全ての選手にチャンスがある。9月の合宿を経て、11月のテストマッチへは全員にチャンスがあるということは申し上げたいです。

 スターティングチームは頭のなかである程度、固まっている。経験のあるメンバーが今回、入っている。レメキ選手は怪我でプレーしていないなどの問題があり、各チームにおいてフルで出ていた人、そうでない人と色々といますが、それらを考え、サンウルブズの試合、それからの2試合(代表戦)へ向けてやっていきたい。外国人で代表資格をパスしている選手もおり、層は厚くなっている」

——サンウルブズとの強化試合について。

「ライオンズ戦までにサンウルブズ戦を有意義に活用しなければいけない。この試合では、後半でもインパクトを出す選手が出るように、選ばれる選手のなかでトライアルをすることで、強度の高い試合ができる。それがその後の試合へも重要だと考えています」

——サンウルブズの側のメンバーは、候補選手のうち今度の代表から漏れた選手。

「答えはイエス。そして、そのなかでセレクションで穴ができ、そこへ入れる選手もいると思います。姫野と松島は海外にいる。その意味ではこれから怪我もあるかもしれず、そこに(サンウルブズ勢が)入れるチャンスもあるかもしれない」

——すでにコーチミーティングはしていると思うが、短時間でどう仕上げるか。あるいはコロナで練習に制約があるか。

「準備が限られている。エキサイティングな10日間の合宿。練習内容はフルです。リカバリーもする。なるたけシンプルに練習しなければいけない。選手たちも自分たちで準備し、自分から行動するのが大事。ミーティングも増えるし、今回のセレクションにもその部分が反映していると思います。そうしたこと(現体制下での主体的なチーム作り)を多くの選手が経験しています。そうしたなかで2つの大きな試合があり、それはたくさんの注目を浴びる試合です。私たちはこれから新しい境地に行かなくてはいけない。これから強度も高く、フィジカル的にも速くプレーしなくてはいけない。

私はニュージーランドにいたので日本のコロナ禍は経験していません。ただ、日本の選手はコロナの環境下でトップリーグを戦っているので、慣れているのではと感じます」

——ジョセフヘッドコーチが指導した経験のある選手が主体となっているような。

「彼らは自分たちのゲームを理解している。チームとしてどのように動いているのか、オフ・ザ・フィールドを含めチームの成長に貢献できる選手が、そこにたくさんいたということ。新たな選手へ経験を伝える意味でも価値がある」

——ノンキャップの選手で期待しているのは。

「13人のノンキャップ勢はポテンシャル面で高く、見てみたい。外国人選手はたくさんラグビーをしていて、代表資格もカバーしている。これから彼らにチャンスを与えることは、本人にとってもチャレンジングなことだと思います。

江見、小澤ら、過去に選考されたことのありながら怪我のため最終的には自分たちのミックス(日本大会の代表)には入れられなかった選手もいる。

ここをスターティングポイントに、これから、どうこのチームが成り立って行くかを見ていくのが楽しみです」

——主将を別な選手にする選択肢は。

「他の主将を考えなかったわけではないですが、継続性を大事に考えました。2016年に私が最初に来た時から、リーダー陣の育成についてはうまくできてきた。現在トップリーグのチームでは田村、茂野、坂手が主将をしている。リーダー陣がコーチのように責任を持って自分たちの基準についてグラウンド内外でリードすることは大事だと考えます。そのように選手がお互いに、さらにコーチをサポートすることで、チームが前に進めると思っています。前回のワールドカップでも、ラピースやリーチがいいサポートをしてくれた。チーム内で競争のある環境を作るのも大事ですが、そこについてもリーダー陣にサポートをしてもらう。競争のあるチームを作るのが大事だと考えています」

——チームテーマ。

「テーマのようなものはないが、自分たちはすでにいいチームができている。大事なのは短い時間でひとつになっていくこと。それぞれの役割、自分たちがどんなラグビーをしなきゃいけないかを理解してもらうのが重要です。9月は長い期間を使い、どんなチームにするか、何か変更があればまたそこで考える…となると思います」

——海外出身者について。ジョセフさんが選手時代に日本代表となった1990年代といまとでは、期待値や役割が変わっているのでは。

「外国人にもパッションがなくてはいけないし、外国人だから誰でも日本代表に入れるわけではない。自分が1999年に入った時はそこまでそう感じなかったですが。

いまは全く体格やパフォーマンスが同じ外国人と日本人がいたら、日本人を選ぶ。外国人がフィジカルのベースで助けになる部分はありますが。チーム内競争を高くする必要があります」

 ジョセフは、従前の体制を継続させながら短期間で一体感を醸成したいと強調する。その思いが、セレクションポリシーの根幹にありそうだ。会見では、2023年のワールドカップフランス大会に向けた本格的なチーム作りが、9月以降の合宿となる可能性も示唆された。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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