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現役引退のキアラン・リード、日本の「伸びていく点」を語る。同僚の惜しむ声は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
身長193センチ、体重110キロ。空中戦での強さに定評があった。(写真:つのだよしお/アフロ)

 元ニュージーランド代表主将のキアラン・リードが、今季限りでの現役引退を表明。ラストシーズンは日本で過ごし、「日本のラグビーにはエンジョイできた点が多かった。今後の数年において伸びていく点が多くあると思って、楽しみにしています」と述べた。

 5月15日、大阪・東大阪市花園ラグビー場での国内トップリーグ・プレーオフ準決勝にトヨタ自動車のナンバーエイトとして先発。無観客のもとおこなわれたこの一戦ではパナソニックに21―48で敗れ、今シーズンと選手生活の終了を迎えた。

 リードはニュージーランド代表として歴代3位の127キャップ(代表戦出場数)を誇り、4年に1度のワールドカップには2011年の自国大会以来3大会連続で出場。2015年のイングランド大会までは2連覇に喜んだ。

 2019年の日本大会では主将を務め、まもなくトヨタ自動車入り。初年度は序盤に故障し、そのままシーズン不成立を受け入れたが、来日2年目の今季は茂野海人とともに共同主将を務めた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「非常に接戦だったと思います。パナソニックさんは今季いいパフォーマンスをしていて、それを保ち、最後まで逃げ切ったという印象。自分たちとしてはチームメイト、仲間が最後まであきらめずにファイトしたことを誇りに思います」

--来季は。

「自分としては、ラグビー選手としての日本での時間はここで終わりにしています。今後はニュージーランドに戻って家族との時間を過ごすことを楽しみにしています。このシーズン、家族と会えないのはつらく思っていました。プレーヤーとしては終わりですが、今後どうしていくかは考えているところです。日本のラグビーにはエンジョイできた点が多かった。今後の数年において伸びていく点が多くあると思って、楽しみにしています」

--日本ラグビーの「伸びていく点」とは。もしくは、今後の伸びしろは。

「まず1点。非常にいいスタイルのラグビーがプレーされている印象です。日本はアタック重視のラグビーが得意で、それは日本代表にも現れています。成長点で言えば…。昨今、外国人選手が来て周りに影響を及ぼしています。日本人、外国人にかかわらず、皆、学ぶことに熱心。状況に適応する力もある。外国人がプレーすることで付加価値を与えられたら。日本はいいスタイルでプレーしているので、今後も高いレベルでプレーすることを楽しみにしています。

 そして追加したいのですが、トヨタ自動車では大多数の選手が会社員として働きながらプレーしている。その点は称賛に値します。自分やフーパーらプロ選手と違う状況で戦ったことは、本当に尊敬しています」

--確認します。国外でプレーする予定は。

「いえ、ラグビー選手としての生活が今日で最後でした。プロの選手としては、きょうが最後の試合でした」

 日本人選手の勤勉さと吸収力を評価し、現在世界中から集まる外国人選手の存在がそのレベルを引き上げられるのではと語るリード。ファンへのメッセージを求められ、改めて謝辞を述べた。

--ファンへのメッセージは。

「日本中のどこでもサポートしてくれたサポーターの皆様に心からお礼を申し上げたいです。残念ながら昨今の状況ではスタジアムを満席にすることはかないませんでしたが、いずれそれも叶うと思います。皆さまを笑顔にできたことも多くあり、本当に感謝しております」

 同部では今季、オーストラリア代表105キャップで同代表主将のマイケル・フーパーも在籍していた。

 この日はフランカーとして途中出場し、リードの会見に臨席。今季限りでの退団の意向をにじませた。以下、フーパーの談話。

「プランとしてはオーストラリアに戻る。すぐに国の代表戦を控えているからです。まず自分の集中点はそこ。その後のことは深く考えていません。日本での時間は凄く楽しめました。チャンスがあれば戻りたいと思っていますが、現時点ではそこまで考えていない」

 このほど退団する2人の影響を受けた1人に、2019年度入部の古川聖人がいる。特に自身と似たプレースタイルのフーパーとは常に居残り練習を実施。リードともリーダーズグループの一員として多くの時間を過ごしたという。

 この日先発した古川は、熱のある言葉で締めた。

「リードも(フーパーと同様に)自分が小さい頃から見ていた憧れの選手。リーダーシップの取り方をたくさん学ばせもらった。リーダーシップとは何か。どういう風な身振り手振りで、どう伝えるか…。ここがリードは本当にうまくて、言葉の壁はある程度あるにせよ、日本人の僕たちにすっと入ってくる伝え方をしてくれた。リードは人として、プレーヤーとして尊敬できると思いました。昨季はシーズン途中で終わってしまってリードに深く関われなかったですが、今季はシーズン前から合流してくれた。コロナの関係でラグビー以外のところではあまり時間を一緒に過ごすことはできなかったんですけど、ラグビーを通して本当の意味で仲間になれたと思う。リードの引退に関しては、自分としては本当に寂しく、本当はまだ日本にいて欲しいし、まだラグビーを一緒にしたいし、本当であれば優勝で終わらせてあげたい思いが本当に強かったです。結果としてそうできなかったのは、僕としても本当に悔しいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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