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五郎丸歩、現役最終戦は不出場。戦前は怪我を押して献身。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は2018年度(写真:松尾/アフロスポーツ)

 元日本代表の五郎丸歩が、現役生活最後の瞬間をスタンドで迎えた。

 所属するヤマハは4月24日、東京・江戸川陸上競技場で国内トップリーグプレーオフトーナメント2回戦でクボタに12―46で敗戦。開幕前に今季限りでの引退を表明していた五郎丸はこの日、ベンチ入りはなかった。

 試合後は、五郎丸がオンラインで談話を発信した。リーグ関係者によると、戦前からチーム側へ相次いでいた報道陣からの要望へ応える形。それに先立ち両軍の公式会見もおこなわれ、五郎丸欠場の裏側について逸話が公開された。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

五郎丸

「まず初めに、この、会見を聞いていただいていますメディアの方々、本当に長い間、お世話になりました。長いことラグビーをやってきましたけど、きょう、ひとつ終わりを迎えたということで、非常に悔しい思いはありますけど、その悔しい思いはグラウンドで晴らすことはできませんけど、セカンドステージへの自分の大きなモチベーションとして頑張っていきたいです。

林(優子チームコーディネーター=事前に質疑応答がない旨を前置き)からも説明がありました通り、今回は私の気持ちをお伝えさせていただいて、後日ゆっくりとした形で自分の気持ちを整理したうえで、記者会見をおこないたいと思います。本当に長い間ありがとうございました。お世話になりました」

ヤマハ・堀川延隆監督

「五郎丸は、コンディションが100パーセントじゃないという私の判断から(欠場させた)。奥村(後述)は若いから使ったわけではなく、(チームの)スタイルをやり切るポテンシャルを持っているから託した。若い選手が経験を積み重ねることは、これからチームの財産になると思います」

――「コンディションが100パーセントじゃない」とは。

「試合が終わったから言いますが…。先々週のパナソニック戦は前半途中で退きましたが、肉離れの診断があって。彼は怪我をしている状態でも、最後までファイトしたいということで、本来リハビリであるべきところ、全体練習に参加。昨日のノンメンバーの練習に関しては、先頭を切って激しい練習をして…。チームのために最後まで身体を張り続けた彼に対しては、今日の結果は本当に申し訳なかったと思います。最後の最後まで五郎丸らしく、チームのためにやってくれたかなと思います」

同・大戸裕也主将

――試合前、五郎丸選手からメッセージは。

「直接はなかったですけど、今週の練習での激しいエナジーというか、気迫は僕たちの刺激になりました。身体で魅せてくれる大先輩がいるので、僕たちも頑張らないと、勝って次に行かないと、と、刺激になった。五郎丸さんは選手として引退されますが、そのプレースタイルは僕たちの胸に残る。これからもリスペクトしたいです」

同・奥村翔(帝京大の前副将で、この日は五郎丸の定位置であるフルバックで先発フル出場)

「本当にヤマハに入って時間は経っていないですが、五郎丸さんは熱いプレーでチームを引っ張り、15番(フルバック)として後ろからチームを支える…。そういうプレーヤーが、15番(の役目)だと思うので、受け継いで、来季に活かしたいです」

――試合の前後は。

「試合前には『お前がやって来たことを出し切れ』と背中を押されました。試合後は『来季、力をつけろ』と言われた。来季、頑張りたいです」

クボタ・立川理道主将(2015年のワールドカップイングランド大会で五郎丸とともに日本代表として活躍。親交が深かった)

「個人的にはグラウンドで戦えたら嬉しかった。(レギュラーシーズンは)カンファレンスが違うなか、そもそも試合のできる可能性がないなか、こうしてヤマハとできたのは縁があって嬉しいと思っていましたし、最後、観戦に来られていて会えたので、嬉しかった。次も頑張ってと言ってもらえたので、その思いを背負いながら戦っていきたいです」

 今季は感染症対策のため入場者やメディアの受け入れを制限しており、この日は会場記者席での取材を希望した27名のうち所定の優先順位などで定められた18名が入場。9名はオンライン取材への切り替えなどを打診された。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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