ボーデン・バレット劇場、本人かく語りき。【ラグビー旬な一問一答】
ニュージーランド代表84キャップを持つボーデン・バレットが4月3日、東京・秩父宮ラグビー場での国内トップリーグ第6節でマン・オブ・ザ・マッチに輝く。
サントリーのスタンドオフ(10番)としてクボタとの全勝対決に先発し、フルバック(15番)に回っていた後半38分に同点だったスコアを31―26とする勝ち越しトライを決める。直後のゴールも自ら決めて33―26とし、味方の好守もありそのまま逃げ切った。
試合後の会見で語ったのは、チームという生命体の一部としての充実ぶりだった。
以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
「難しい試合になるのは最初から分かっていました。クボタさんみたいにセットピースを得意とするチームに対して、自分たちはスピード、テンポのあるゲームをしたいと考えていました。相手はスローダウンしてセットピースからセットピースへ…というのを強みとしていたので。後半、少し相手に流れがいきかけましたが、最後の10分、チームとしてコネクトして勝てたのがよかった」
ここから振り返ったのは、スタンドを沸かせた決勝トライのシーンだった。敵陣22メートルエリア左でラインアウトを得たサントリーは、フェーズを重ねるなかで右中間へ球を繋ぐ。
最後は、途中からスタンドオフに入っていた田村煕のパスコースへバレットが右奥から鋭角に駆け込み、球を得るやインゴールを軽やかに割った。
「パスを放った田村煕がいい仕事をしてくれた。彼からのボールをアンダーライン(攻防の境界線に近いコース)でもらい、抜いていった。練習ではよくやるプレーですが、今日みたいなシチュエーションでは直感が重要になります。空いたスペースを狙い、煕のおかげもあって走れたと思います」
サントリーはこの日、後半12分までに26―7と大きくリードした。
司令塔のバレットは出色の働きだった。1点差を追う前半27分には敵陣22メートルエリア右中間から左へのキックパスで逆転トライを演出。11―7とした。
16―7のスコアで迎えた同38分には、自陣10メートルエリアで激しい防御の圧力を受けながら前方へキック。弾道を追ったフルバックの尾崎晟也がこの日2本目となるトライを決め、直後のゴールキック成功で23―7と点差を広げた。
自陣の深い位置からは、前がかりになった相手バックスリーの背後へタッチキックを蹴った。その他の場面でも、圧力の受けにくい位置取り、圧力をかいくぐるようなラン、パス、キックを連ねた。繊細な工夫を施していたような。
――日本のラグビーについて。
「日本のトップリーグは、速い展開でボール・イン・プレーの時間が長い。スーパーラグビー(南半球勢のプロリーグ)とは違ったスタンダードがあると感じています」
――ポジションについて。
「自分は10番をプレーしたい気持ちが強い。ゲームコントロールができますし、アタックでパフォーマンスをコントロールできる。10番を楽しんでいます。これは自己中心的にプレーするという意味ではなく、チームプレーヤーでありたい。リンクプレーをしながら、仕掛けるところは仕掛けるというプレーができていると思います。控えの10番の田村煕も才能ある選手。彼が10番で出る時は15番でプレーしているのが現状です。
15番でプレーする時は片方のサイドをコントロールするという意識でプレーしている。10番をする時は外からのコールをもらうのが重要なので、15番に入った時はどういったプレーが有効かを煕に伝えながら、ゲームをコントロールしました。彼もいいパフォーマンスをしてくれた」
――チームには徐々にフィットしているのか。
「こういう結果を出しているのは、いいテリトリーに入ってプレーしているから。そうでないと、勝利を呼び込むプレーはできない。お互いを信じ、我慢強くプレーすることが、いまは、できていると思っています。特にいままでと比べフィットしてきた…という感覚ではないです」
本人がこう話すなか、インサイドセンターの中村亮土主将も応じた。
「ボーディは10番であれ15番であれ、グラウンドにいるだけでチームメイトとして頼もしく感じます。10番だから、15番だからではなく、ゲームコントロール、ラン、キック、パスとすべてにおいてハイレベルで、チームを前に動かしてくれる選手です。初戦からチームにフィットしていて、あまり(開幕前までの)準備期間がないなかでも自分のベストパフォーマンスを出すのは、インターナショナルでのトップの選手だなと感じます」