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キヤノン沢木敬介監督、アマナキ・レレイ・マフィ加入に「いいところ引き出す」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
練習中の沢木監督(写真中央)。実戦仕様のセッションを重ねる。

 ラグビー日本代表としてワールドカップに2大会連続出場のアマナキ・レレイ・マフィが、NTTコムからキヤノンへ移籍。キヤノンの沢木敬介監督が獲得への受け止めを語った。

 沢木監督は日本代表コーチングコーディネーターとして2015年のワールドカップイングランド大会で3勝。2016年度からの3シーズンはサントリーの監督を務め、初年度から2季連続で国内タイトルを総なめした。

 サンウルブズのコーチングコーディネーターを経て就任したキヤノンでは今季のトップリーグでここまで1勝3敗も、直近の第4節では5季連続4強入りのヤマハに40―32で勝利。最後に成立した2018年度に16チーム中12位に沈んだチームに、献身性や攻撃意欲を植え付けている。

以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――ヤマハ戦を経て。

「自分たちの新しいスタイルにチャレンジする。きつくなっても元に戻らず、チャレンジし続けたのが一番」

――その日はペナルティーキックから速攻を仕掛けるシーンが目立ちました。相手の特性を踏まえてのことですか。

「それもそうだし、自分たちが攻めるぞというマインドセットにもなっていたし。特別、うちは身体がでかいわけではないけど、ハードトレーニングはしてきた。フィットネスでは勝てるかな、というのはあった。まぁ、こっからです」

――開幕3連敗。選手にこれまでのプロセスを信じてもらうのに難儀な状況だったようにも映ります。

「もちろん勝てなくなってくると色んな不安も出てくる。ただ、普通にやれていれば成果が出ている部分もあった。全部が全部、だめだったわけじゃない。

あれじゃないですか。NTTドコモとの試合(開幕節)をあれだけ優位に運んでおきながら負けたというのは、チームの勢いをちょっと奪ってしまったとは思います。それが、イーグルス(キヤノン)の悪い癖だった。皆、言っていたのは、『ヤマハ戦。終盤に一時1点差まで迫られた(一時33―18としながら後半35分に33―32と迫られた)。前のイーグルスなら逆転されているのが普通です』と。(近くにいたスタッフへ)そうなんだろ? …そういうところも変えていこう、という部分も表れています。ちょっとした成功、自信の積み重ねですよ。エレベーターみたいにボンと上まで行けるだけの戦力もまだ、ない。

 目指すラグビーをやるには人材も必要になる。ただ、今季で言えば人材は決まっている。そこでは、そいつらの力をどう活かすかが大事になってくる。ベースの技術に加え、メンタル、マインドのチェンジが大事。そこを変えるためにハードトレーニングが必要だし、大胆なラグビーも必要だし。変わっていく過程で常にチャレンジしていくのが大事なんです」

――戦力と言えば、マフィ選手が…。

「それ聞きたいんでしょ、フフフフ。…獲得の経緯はGM(永友洋司ゼネラルマネージャー)に聞いてください。GMマターなんで」

――現場の意向は。

「ナキに何があったにせよ――何があったかはわからないですけどね――日本代表になっている選手にプレーする場所がないというのは、ものすごくマイナスだと思う。どんな状況でも。あとは本人にうちでプレーしたいという気持ちもあったと聞いている。僕らはコーチとして彼をコントロールし、彼のいいところを引き出さなきゃいけない。僕はシンプルに、そこだけです。もちろん戦力になってくれると思うし。うちに来た経緯はわからないけど、いる選手の力を引き出すのが俺らの仕事。そりゃそうでしょ。

ただ、昔のことになるけれど、例えば、同じ過ちを繰り返してはだめ(2018年、ニュージーランドでチームメイトへ暴行して逮捕)。まぁ、ピュアな人間なんでね」

――確かに、ピュアに映ります。

「もちろん規律は大事。ミスは皆、犯す。ただ、周りの人間、サポートしてくれる人を悲しませるのは、本人も周りも辛いだろうし、そういうことを繰り返さないようにしなきゃいけないんじゃないですか。それは別に、ナキだけじゃなくてね」

 今回の移籍の受け止めから伝わるのは、「いる選手の力を引き出すのが俺らの仕事」という職業倫理であり、ひとつひとつの個性への厳しくも温かいまなざしである。

 問答のなかで、こうも言った。

「お互いがお互いを知る努力はしなきゃいけない。もちろん」

 マフィは選手登録の都合で今季中に出場の可能性もある。チームは27日、東京・秩父宮ラグビー場でリコーとの第5節に臨む。両社の関係者がこのカードを「事務機ダービー」として注目するなか、指揮官はこうだ。

「リコーに限らず、どのチームにも勝つマインドでいく」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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