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キヤノンの佐々木隆道・新コーチ、「愛情を持ってきつく言えるか」が大事と強調。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
選手に指示を贈る佐々木コーチ(著者撮影)

 いまは進化の途中にある。

 国内ラグビートップリーグのキヤノンで今季就任の佐々木隆道フォワードコーチが、本拠地の東京・キヤノンスポーツパークで取材に応じ、開幕3連敗と苦しむチームの現状を語った。

 話をしたのは3月2日。2018年度王者の神戸製鋼に10―73(兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場)で敗れた2日後のことだった。

 

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――開幕から2試合。感じていることは。

「結構、ストレートなことを聞きますね。ふふふふ。いまは、選手たちをどうやって戦える、タフな状態にできるかを考えています」

――担当領域のモールは強い相手からも点が取れそうな完成度です。

「神戸製鋼戦でもモールを起点としてトライが取れました。自分たちがやって来たことは確実に力になっている。それを自信にして、このグラウンド(練習場)で出しているパフォーマンスをどんな相手、どんな状況でも、出せるように。(焦点は)そこだけですね」

――これを負けた言い訳になさるつもりがないのは承知していますが、神戸製鋼では強豪国の代表経験者や力のある海外出身選手が質の高いプレーを繰り返していました。

「神戸製鋼には一貫性がありますし、さすが経験のある選手たちだなという印象はあります。裏を返せば、自分たちはいつも通りの力を発揮できなかった。それがいまの実力だと認識し、どう変わるか、です」

 現役時代は大阪の啓光学園高校、早稲田大学、サントリーと全ての所属先でキャプテン就任と各カテゴリーでの日本一を経験。2012年春には、当時のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(現イングランド代表ヘッドコーチ)から日本代表の副キャプテンに指名された。

 2016年には当時下部リーグに所属の日野自動車(日野)へ移籍し、2017年度にクラブ史上初のトップリーグ昇格を達成。途中でシーズンが不成立となった2019年度(2020年1月から5月までの予定も2月下旬で中断)限りで現役を引退し、コーチとなっていた。

 このほど語ったのは、初めて受け持つチームの現状についてだ。

――用意されたサインプレーが機能すればトライが取れそうな様子は見えます。

「もちろん用意したプレーは抜けると思って用意しているので、はまれば、いけます。でも、ラグビー(の肝)って、そういうことではない。自分たちでファイティングポーズを取り続け、どちらが綻びを出すかという勝負をしていかないと、常に勝つチームにはならないと思っています」

――試合後のレビューは。

「ここはコーチの仕事。ちゃんとゲームを見て、感情的にならず『何がいい、何が悪い、どうしなきゃいけない』を整理する」

 現役時代、最後のプレー先を日野に定めたのは、引退後の指導者転身に備えて視野を広げるためだった。スパイクを脱ぐにあたり同部からもオファーも受けたと言うが、キヤノンからのラブコールに応じる。「情で動くわけにはいかない」。自身のさらなる成長のためだ。

 同部では今季、沢木敬介監督が就任した。沢木は日本代表コーチングディレクターとして2015年のワールドカップイングランド大会で歴史的3勝。2016年からはサントリーを率いて3季で2度の日本一に輝いていた。佐々木はサントリー時代、沢木とともにプレーしたり、沢木の指導を受けたりしていた。

――神戸製鋼に敗戦後、沢木監督はロッカールームで「コンタクトが嫌いなら他のスポーツをやれ」と選手を叱咤したとか。

「何と言うか、(キヤノンには)優しい、おっとりした子が多い印象はあります。ただ、スイッチが入った時は本当にいいプレーをする。日常的に引き上げて、そこ(「スイッチが入った時」のパフォーマンス)を無意識でできる能力にできるか。僕の実力不足。自分も彼らと成長しながら、試行錯誤している状態です」

――沢木監督とともに仕事をして感じることはありますか。

「準備のところで、自分が想像していたよりも、たくさん、やることがある(と認識させられる)。また、選手1人ひとりによってアプローチの仕方を間違うとうまく行かないこともあります。『あ、そういう時に声をかけるんだな』と、毎日、学ばせてもらっています。

 愛情、このチームをよくしたいという気持ちがあるからこそ、ああいう風に厳しいんだなと。平たいことで言えば、そういうことです」

――直截な言葉を使われる方です。初めて接した選手が驚く可能性もなくはないかもしれません。

「敬介さんのことは、近く(両者が所属したサントリー)で長く見ている。(叱咤された選手を)甘やかすわけではないですが、フォローはする。僕は選手たちをポジティブにさせる。

 

 とはいえ、厳しくすべき時は厳しくしなくてはいけないと学びました。選手たち、(他の)コーチと接するなかで、自分のコーチングも変わってきている感じはします。いまは怒らない、ほめて伸ばすとも言われますが、このレベルで本当にもっと上を目指そうと思ったら、『必要な時に、愛情を持ってきつく言えるか』も大事になる」

 3月6日の第3節では、パナソニックに0―47で屈した(大分・昭和電工ドーム)。神戸製鋼は2018年度王者でパナソニックは過去優勝4回。2018年度に12位のキヤノンにとってはいずれも難敵だった。

 レギュラーシーズンの残り4試合はもちろん、4月中旬以降のプレーオフトーナメントを通しても「どう変わるか」が問われるか。その只中にあって、新任コーチは繊細にかじ取る。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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