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天理大学・松岡大和主将、新型コロナ集団感染に何を語ったか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は関西ラグビー協会提供

 8月中旬、新型コロナウイルスの集団感染で活動を一時停止させた天理大学ラグビー部は、9月10日に活動再開。10月26日、松岡大和主将が心境を明かした。

 この日は11月7、8日に開幕節を迎える「2020ムロオ関西大学Aリーグ」に備え、関西ラグビー協会主催のオンライン会見に出席。画面上での質問に答えた。

 

 以下、松岡主将の共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――8月中旬に活動を休まざるを得なくなりました。その間の思いを聞かせてください。

「まさか、自分のラグビー部がクラスターになるとも思っていなかったです。1人が(新型コロナウイルスの)陽性者になって、そこからだんだんとクラスターが起きてしまって、その日の練習が始まる寸前に陽性(者がいると)がわかった。その後は全員、寮に帰って、そこから隔離状態になって。ぽつぽつと症状が出始める選手もいまして、そこからは自宅に帰る選手、ホテルや病院に隔離される選手がたくさんいて。クラスターが出る寸前まで、(当時は)セットプレー(攻防の起点)の部分をはじめ、チームのラグビーが仕上がっている状態でした。そのなかでクラスターが起きた。自分たちはラグビーができない状態で、ものすごく辛い日々を過ごしました。僕自身はポジティブにリーグ戦、選手権が開催されると信じて、現状でやれるトレーニングをやっていました。ただその反面、『やっぱり今季は練習だけで終わるんじゃないか、試合がなくなるんじゃないか』とネガティブになる選手もいました。僕はそうした選手に対して『そうじゃない。やれることをやって、選手権や関西リーグが開催されると信じて、やり続けるしかない。全員で一手ひとつ(天理大のスローガン)で頑張っていこう』と話しました」

――バラバラな状態でも、何とか皆に声をかけ続けたのですね。

「SNSなどで『天理大学ラグビー部は何をしてんねん』という声もたくさんあったんですけど、その反面、応援してくださる方々、他の部活動生、ラグビースクールが『コロナに負けるな』『頑張ってくれ』という応援動画や応援メッセージを送ってくださった。そのおかげで、『天理大学ラグビー部ってこれだけ応援してくれているんだな』と実感した。この状況でも頑張っていける原動力になりました」

 天理大学ラグビー部は1925年に創部。現監督の小松節夫がコーチとして入閣した1993年度、当時いた関西大学CリーグからBリーグに昇格。小松は1995年度より指揮官となり、2001年度、現在加盟するAリーグへ1991年度以来の復帰を決めた。

 

 フランスに留学経験のある小松は、防御の背後へピンポイントのパスを通す繊細なスタイルを涵養。昨今は低くまとまったスクラムや留学生選手の突破力も長所とし、関東に居並ぶ強豪に肉薄する。

 2005年度には21年ぶりの大学選手権出場を決め、2011年度には初めて大学選手権のファイナリストとなった。現在はAリーグ4連覇中で、大学選手権では一昨季2位、昨季4強と、初の日本一奪取へ迫っている。

 松岡は身長177センチ、体重98キロのフランカー。兵庫・甲南高校を経て天理大学入りし、昨季も主力として関西4連覇を果たし、大学選手権にも出場している。

 同級生で副将のシオサイア・フィフィタは今年1~3月、スーパーラグビーの日本チームだったサンウルブズへ参加しており、松岡はフィフィタの成長を「サンウルブズに行く前は自分でボールキャリーに行く場面が多かったんですが、天理に帰ってきてから以前よりもボールを動かす意識が強くなっている」と語っている。

 突如として発生したウイルス禍を振り返る際には、揺れる心中を明かしながら周囲への感謝を述べている。

「先輩方の培ってきた思いを背負って、いままでサポートして下さった方へ恩返しをするためにも、関西リーグ5連覇、日本一を必ず勝ち取ります」

 今季の同リーグ戦の試合は、各会場の収容人数の50%を上限として有観客、有料試合として行われる。当日券販売はない。

 従来は9月に開幕し、8チーム総当たりでおこなわれる同リーグ。今季はコロナ禍の影響により変則日程を組む。

 昨季順位の奇数(1位=天理大学、3位=関西学院大学、5位=近畿大学、7位=摂南大学)と偶数(2位=同志社大学、4位=京都産業大学、6位=立命館大学、8位/Bリーグから昇格)の2リーグに分け、各組が総当たり戦を実施する。

 それぞれが1~4位までを順位づけ、最終節で両リーグの同順位チーム同士が対戦し、最終的なAリーグ順位を決める。ウイルス感染などに伴い試合を棄権するチームが出た場合は、その都度、不戦勝、不戦敗の形で星をつける方向で調整中だ。大学選手権には1~3位までが出場する。

 上部と下部との入替戦はA~Dまでの全リーグ間でおこなわれない。入れ替え戦中止の是非や意志決定までのプロセスは議論を招いたが、中尾晃リーグ委員長はかねて「最後まで議論になりました。ただ、『目標が本当に入替戦だけか』『試合からいろいろ学ぶことがあるのではないか』と、最終的にその(中止の)意見でまとまった」と説明している。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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