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松島幸太朗は、自分と日本の未来をどう考えるか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
さらに活躍の幅を広げる(写真:アフロ)

 今夏からフランスプロリーグ・トップ14のクレルモンでプレーするラグビー日本代表の松島幸太朗が、好調を維持している。

 2月15日には、国内トップリーグの第5節にサントリーのフルバックとして先発した。

 持ち前のランニングスキルなどで2トライを奪い、相手を引き付けてのパスで味方のフィニッシュもお膳立て。同じ日本代表の姫野和樹を擁するトヨタ自動車に60―14で快勝している。

 さかのぼって2月11日、試合への展望や今後の自身の活動などについて所感を述べている。トップリーグは2020年限りで発展的解消の道を辿るなか、若手育成の重要性についても言及している。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――トヨタ自動車戦に向けて。

「お互い負けられない状況なので(両軍とも第4節までに2敗)、いつも以上にフィジカルな戦いになるんじゃないかと。きょうは、最後にフィジカルな練習ができた。フィジカルなところで優位に立てれば、あとは自分たちが走るだけなので」

――バックスの選手の練習を見ていると、ランナーとしてタックルで倒された後の寝方、ボールの置き方を確認していたような。ジャッカルをされない工夫を意識しているのでしょうか。

「サントリーは特に、ワイドブレイクダウン(タッチライン際に近い位置での接点)で早く(ボールを)出さないといけない。ここでジャッカルされたらリズムも崩れる。そこを、アウトサイドバックスは意識しています」

 連続攻撃をお家芸とするサントリーにとって、素早いボールリサイクルは必須。ただし各選手の立ち位置の関係上、大外の選手がランナーになった際はやや援護が遅れがちとなる。「ワイドブレイクダウン」からも望むテンポで球を出すには、倒される際の寝方が肝となるのだろう。

――今季からチームの指導体制が変わっています。

「アタックの仕方も若干、変わっていますけど、大きく変わったのはディフェンスの方。試合を観ていればわかると思うんですけど、今年は積極的に上がる。去年なら流して待つと言う形でしたけど、今年はディフェンスでもアグレッシブに」

 トヨタ自動車戦では鋭い出足によるインターセプトからトライを奪取。実はこの日の練習でも、鋭い飛び出しでインターセプト、タックルを決めていた。

「ジャパンでそういう(飛び出す)免疫がついているので。ジャパンで始めた頃は前に出ることへの不安があったんですけど、いまはどこで上がって、どこで上がっちゃいけないかという判断はしやすくなっています」

 松島の言葉通り、昨年のワールドカップ日本大会で8強入りした日本代表はニュージーランド人のディフェンスコーチを入れ替えながら鋭い出足の防御システムを採り入れていた。

――鋭く前に出る防御。最近は色々なチームも採用しています。

「トレンド的に、ディフェンスでプレッシャーをかけてトランジション(攻守逆転の瞬間)からカウンターで攻めるというチームが多くなっている。戦術が似てきているチームが多くなっていますし、その分、展開するラグビーが増えた。トヨタ自動車もカウンターが得意な感じになってきていますし、見ている方は面白いんじゃないかなと」

――日本にいられるのはあと少し。その実感はありますか。

「いや、割と普通に毎日を過ごしている感じです」

――6月以降の代表活動について。

「ジェイミー(・ジョセフヘッドコーチ)と話したりしている。僕が年間の試合数とか(を踏まえて)決めたりとかになってくると思いますが、やりたい気持ちは全然あるとは伝えましたし、相談しながらという感じです」

――松島選手が離れている間に、日本ラグビー界の仕組みが変わりそう。

「(海外の)スタープレーヤーが増えるのもいいですけど、若い選手――いま、たくさんサンウルブズにも行っていますけど――そうした選手たちをどう育てていくか。そのクラブがどういう風に使っていくか。いい選手はいっぱいいるので、それをどう育てていくかというのが、日本ラグビーがよくなるかどうかに大きく関わってくる」

 話をした日は祝日とあって、府中市内のグラウンドには多くのファンが詰めかけた。その熱狂ぶりに、チームが来場者のマナーに関し注意喚起を促すほどだった。

 しかし、日本で最も注目されるラグビー選手の1人は浮かれてはいない。

――注目選手の1人。この事実をどう捉えていますか。

「単純に嬉しいです。こうやってファンも来てくれていますし。ただ、そこを(過剰に)考えるというのはおかしい。自分のプレーに集中することを考えて、あとは天狗にならないよう、謙虚な気持ちで毎試合やっていきたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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