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今度は渋滞しない? 開幕戦の移動で課題の日本代表、28日の次戦への展望は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
各国のタフガイが赤と白のジャージィをまとう。(写真:アフロ)

 ラグビー日本代表は9月28日、ワールドカップ日本大会・予選プールAの2戦目をおこなう(静岡・エコパスタジアム)。相手は世界ランク1位のアイルランド代表(世界ランクは9月21日時点。以下同)。22日の初戦ではスコットランド代表に27―3で勝っている。

 史上初の8強入りを目指す日本代表は9月20日、東京スタジアムでの開幕戦で2大会ぶり出場のロシア代表に30―10で勝利。アイルランドと同じく勝ち点5を獲得しているが、序盤に緊張などからミスを重ねたうえ、往路で交通渋滞に巻き込まれていたことが発覚した。

 アイルランド代表がスコットランド代表と戦う数時間前、藤井雄一郎強化委員長が都内で会見。ロシア代表戦時に起こった問題などについて、見解を示した。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合を終えて。

「もちろん、重圧もあります。プレッシャーを感じて緊張しているということは、その分、(もっと力を発揮する)余裕がある。あの日は相手ボールのスクラムが13回あった。ということは、それだけミスをしていたことになる。それでも勝ったということは、力があったということ。世界ランクは10違う(10位の日本代表と20位のロシア代表で)。今度もまた10違うので、逆にこっちがプレッシャーをかけられたら」

――初戦前の緊張は。

「どうしても自分たちにフォーカスしすぎているところがあったと思う。開幕で相手がロシア代表。確実に勝たなければいけないプレッシャーを自分たちにかけていたと思う。ただ次からはフォーカスの基準が相手になる。どうやったら相手をパニックに陥れることができるのか。それがないとアップセットは起こらない。この3年間、コーチ陣はそこにフォーカスして来た。次は緊張しているようでは勝てることはない。切り替えていけると思います。(ロシア代表戦は)すっきりした勝ち方ではなかったですが、苦しみながら勝ったことが自分たちにはプラスだと選手たちは言っている。それを糧に次の試合へ臨みたい」

――相手のキックを落とした要因に、まぶしいほど明るい照明への対応が指摘されますが。

「試合前に蹴って確認はしていますし、落とした原因はそれひとつではないと思うんですけど、おそらくキックの多いゲームになると思うので、(次戦へは)その辺はコーチ陣がしっかり確認して対策すると思います」

――試合前の渋滞は。

「次は浜松に泊まりますが、渋滞に巻き込まれないようもうひとつ(グラウンドに)近いホテルをとっている。朝に(グラウンド付近のホテルに)移動して、準備する予定。浜松が混むということだったので、事前に計画していました。次からは渋滞の心配もないです」

――スコットランド代表対アイルランド代表の試合はどう見るか。

「怪我人、相手のコンディション、どちらがどういう形のゲームをするか(を見る)。かなりプレッシャーがかかる試合だと思うし、アイルランド代表はここで勝つか負けるかによって次(日本代表戦)にかかってくるプレッシャーも違うので、その辺のところも見たい。

 どういう戦い方をするかは以前の戦いを全部、ビデオでチェックしている。お互いがお互いを知り尽くしていて、おそらくお互いの弱いところを突いていくと思うので、そこを見る」

――試合前の7日間のうち、最初の2日は休むイメージか。

「2日間はアドバンテージがあるのでしっかり休息し、集中して高いレベルでトレーニングしようと。きょうもウェイトトレーニングだけ。2日でかなりリカバリーできたんじゃないでしょうか」

――これからの過ごし方で気を付けたいこと。

「色んなイレギュラーなことが起こる可能性もあります。この間の渋滞であったり、選手の精神状態であったり。予想しないストレスがかかってくる可能性もある。できるだけそれを対処する。怪我や風邪も気を付けないといけないですし、台風の状況も予想しないといけないです。天候についても、今回、台風も来ていますし、そういうのがいつどこに自分たちのところに来るのかわからない。事前に見られるところはしっかり見て、予防できることはしっかり予防して。特別やることはないですが、できる限りいままでと変わらないよう、選手にストレスがかからないようにしていきます」

――怪我人の状態は。

「福岡堅樹は昨日ほぼトップスピードで走っています。あとはどこで使うかです。アマナキ・レレイ・マフィはフルで練習に入っていて、怪我人の扱いではないです」

――21日の都内でのイベント会場に、具智元選手がいませんでした。

「具は、ちょっと膝を。次の試合では全く問題ないですけど、大事を取って、こっちで治療していたということです」

――開幕したワールドカップの試合を観て思うことは。

「順当というか、番狂わせもなかったですし、強いところが勝っていっている。どうやって下のランクのチームが強いチームに勝つかで注目していたんですけども、ティア1(上位国)の強いところはその辺が全然違うなと。その辺をどうひっくり返すかときのうコーチ陣とも話し合った」

――ティア1のすごみとは。

「自分たちが勝負をかけたところで絶対に負けない。(大会前におこなった)南アフリカ代表戦では、うちはそこ――コンテストキック――で負けた。向こうが勝負を賭けてきているところを守り、こっちが勝負を賭けているところで勝てるようになれば、勝利が見えてくるとは思うんですけど」

――キック処理の問題について。

「南アフリカ代表は、昨日(21日のニュージーランド代表戦)も同じような戦術をしてきた。あの戦い方であのコンテストができるということは、そこにフォーカスしていたと思う(小柄なウイングのチェスリン・コルビが何度も空中で競り勝った)。その部分では、うちは『ああいう展開に持ち込まれないように』と3年間やってきたので、そこは個人スキルを含めて勝負。ワールドクラスかどうか。そこに尽きると思います」

――キッキングゲームは、次のアイルランド代表戦の鍵にもなります。

「向こうはおそらくきっちりやって来る。その部分でいかに自分たちのペースに持ち込めて、ハイボールなど相手が勝負しているところでマイボールをキープして、自分たちのパターンに持っていく。あとはヨーロッパのチームなので、できるだけ早い展開にできるよう、あまり対戦したことのないスピードを出せればいい勝負になるかなと。そこが一番、大事」

 ジェイミー・ジョセフヘッドコーチと親交の深い藤井強化委員長は、2018年から日本代表および兄弟チームのサンウルブズに参加。昨季までは宗像サニックスの部長兼監督も務めており、予算の限られたチームを勝たせる工夫を施してきた。グラウンド外の準備では他のスタッフと連携し、グラウンド内の準備へは首脳陣を後押しする。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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