日本協会どうなる? 森重隆新会長&岩渕健輔新専務理事会見を読む。【ラグビー旬な一問一答】

左の森氏は九州協会会長も歴任。右の岩渕氏は日本ラグビー界きっての国際派で鳴らす

 日本ラグビー協会は6月29日、都内で評議員会を開き、2019年度、2020年度の新執行部を決定。すでに6月12日に挙げられていた理事候補24名が正式に承認され、前副会長で新会長の森重隆氏、前理事で新専務理事の岩渕健輔が会見した。

 かねて前体制の継続が既定路線と見られていた新執行部決定への流れは、今年4月の定例理事会で激変する。総理経験者の森喜朗元名誉会長がアポなしで参加し、若返りを求めて一喝。当時の副会長で唯一70歳以下だったのが、周囲から「太陽のよう」と信頼される森新会長だった。

 

 岩渕氏は専務理事と現男子7人制日本代表ヘッドコーチを兼務。課題の国際交渉力アップに尽力する。前ヤマハ監督で新副会長の清宮克幸氏は、国内トップリーグなどの改革が期待される。

 以下、共同会見時の一問一答(編集箇所あり)。

「皆さんこんにちは、会長になりました森でございます。座って挨拶させていただきます。(ここでマイクを取る)えぇ、昨夜一晩で一生懸命あいさつ文を書きましたので、お話しさせていただきます。

 このたび、日本ラグビー協会の会長職を拝命した森重隆でございます。ご無礼を顧みず、日本のラグビー界を代表して挨拶をさせていただきます。私、森重隆はこれから日本のラグビー界を引っ張ってゆく覚悟であります。

 日本のラグビーはこれまでよきアマチュアリズムを発揮しながら、素晴らしい人材を世に送り出してきました。また自己犠牲の精神で個々がチーム、地域に貢献してきました。日本協会の使命は、競技人口、ファンを増やし、ラグビースピリッツを浸透させて、日本を素晴らしい国にすることです。

 そのきっかけとなるワールドカップ日本大会を目前に控えるチャンスを手に入れました。森元名誉会長をはじめ熱き思いの数々が誘致を実現させ得たのですが、その働きへの思いと感謝をひとまず脇に置かせていただき、きたる9月20日から始まる世界最高峰の試合に向け、まずは開幕前に熱き思いの伝道師となるべく全国の開催都市に足を運び、地域の方たちとの交流を図っていきたいと考えています。

 よきアマチュアリズムを育み、よき仲間に恵まれてきたこれまでの日本ラグビー界をひとつの指標としつつも、これからプロの洗礼を浴びながら、日本代表には世界ランクを1つひとつ上げてもらいたい。そして数十年後には、また母国日本でのワールドカップをして、日本代表にはニュージーランド代表など世界の強豪国と優勝を争って欲しいと願っています。子どもたちには、たくましく輝かしい日本代表選手を見て、『僕も日本代表になりたい』と思って欲しい。(感極まったような表情になる)協会スタッフはじめ、皆が私についてきてくれるよう、日々精進していくつもりです。

 是非、今回のワールドカップ日本開催を機会に是非、国民の皆様、きょうお集まりのマスコミの記者の皆様にはラグビーファンになっていただいて、ラグビースピリッツがますます浸透することで日本が素晴らしい国になることを信じています。

 最後になりますが、岡村正前会長をはじめ、これまでラグビー協会にご尽力いただいた方々のレガシーを継続することに加え、将来の進むべき正しい方向を導き出し、変革しながら進化し続けたいと思います。ラグビーワールドカップ日本大会を成功させ、2020年のオリンピック東京大会に繋げたいと思っておりますので、ご支援ご協力をよろしくお願いします。以上、ちょっと九州っぽいと言われそうですが、いまの思いを述べさせていただきました。簡単ではございますが、これを持ちまして、私の新会長の挨拶とさせていただきます。

 付け加えますけども、横にいる岩渕は専務理事としてやっていきますが、7人制日本代表のヘッドコーチは兼務させることにしました」

岩渕

「座ったままで失礼いたします、岩渕です。本当に多くの方に集まっていただきありがとうございます。日本ラグビー界はここ2年で大切なイベントを2つ迎えます。任期は2年ですが、この2年の間にワールドカップとオリンピックがやってくる。この2年でこの先の50年、100年が決まる。その強い覚悟でやらなきゃいけないと感じています。

 会長と相談をしながら計画を立てて実施しなくてはいけないですが、まずワールドカップ、オリンピックという2つのイベントをラグビーにとってレガシーの残るものにしていく。ラグビーの確固たる本質を、ラグビーになじみのない方々にお伝えする最初で最大のチャンスだと思っています。

 私は代表強化を担当させていただきました。協会はいつも代表に勝て、勝てと言いますが、私自身は、ラグビー協会そのものが他のユニオンに勝てるユニオンにしなくてはいけない。ユニオンが世界一にならないと、代表チームは世界一になれない。色んな意味でガバナンス、コンプライアンスを徹底し、意思決定のスピードを速め、世界のユニオンと戦えるようにしていきたいです。強化の声明に『ビッグトライ』があります。会長とともに協会全体でトライしていきたいと思っています。代表チームの継続強化とラグビーの価値の維持できる形にし、財政を健全化。これらを2年の間に作っていきたいです。以上となります」

――会長を受けた経緯。若返った人事についての狙い。

「4月14日だったと思いますが、理事会に森元名誉会長がお見えになり、『辞任するので岡村会長が名誉会長に。あとは会長を勝手に決めなさい』と言われ、議論をしたのですが、唯一70歳を超えていなかったの(副会長)が僕――能力は別だみたいに冷やかされましたが――皆様から会長に推薦いただきました。

 改善を加速化したい思いが若手起用に繋がりました。それと、いままではガバナンスとしてピシッとしていなかったものですから、専門家に入っていただき、特別な意見をいただくように配慮しました」

――岩渕さんは、7人制代表ヘッドコーチと専務理事を両立します。

岩渕

「いまの協会が置かれている、ワールドカップをホスト国として迎えるという状況がまず(背景に)ありました。7人制のヘッドコーチとしてもオリンピックまであと1年と大切な時期にあります。先ほど理事会で専務理事を拝命し、その後に森会長へご相談したのは『理事がそれぞれの責任をしっかりと果たせるようにしていきたい。専務理事に色々なことが集中せず、専務理事を支える体制を一緒に作っていただきたい』ということです。この1年間は非常に大切な時期ですが、協会が一緒になって乗り越えていきたい」

――新理事のうち、15人制日本代表の強化委員長を務めるのは誰になるのか。

「これから決めたいと思います。月曜に宮崎(日本代表が合宿中)に行ってきます。その時に、エディーさん…あ、失礼! ジェイミー(・ジョセフ=日本代表ヘッドコーチ)さん、藤井(雄一郎=日本代表強化副委員長、日本協会理事)もいますので、相談して、現場の声を聞きたい」

※エディーさんとは、前日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏と見られる。

※強化委員長は理事のなかから選ばなくてはならないという規定はない。

――いまの日本代表をどう見るか。

「私の頃とはルールが全く違うんで、戦略、戦術はよくわからないんですよ。ただ、ラグビーの(変わらない)ベースはあると思います。2015年に日本代表が南アフリカ代表に勝ったとか、ひっくり返せる要素、精神的要素はある。ジェイミー、藤井ももちろんそれを知っていると思いますが、行って伝えたいと思います」

岩渕

「4年前の代表チームには強化担当としてついていました(エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ時代の男子15人制日本代表でゼネラルマネージャーだった)。その時に比べたらはるかに準備期間も長いですし、地力は上がっています。4年間、色んなことはありましたが――前回は挑戦の意味合いが強かったのに対し――今回は本当に勝つために準備をしている。マインドが変わりました。

 一方、ワールドカップで結果を出すにはピーキングなど色々な問題があります。このままスムーズにいけばいいですが、色んな事が起こる。それを協会全体として支えていきたいと思っています」

――トヨタ自動車の2選手のコカイン所持容疑で逮捕されました。岡村前会長が「日本ラグビーの根幹に関わる大変重要な問題」としました。新会長としてガバナンス面をどうするか。

「例の問題はまだ(現体制では)議論していないので、これから臨時理事会のようなものを開いてやっていきたいです」

――いま、最初に取り組みたいことは。

「まだ現状は把握していないのでどうなっているかわからないですが、とりあえず東京に住みます。常勤します。まず職員がとどうなっているのかなども詳しく知らないので、まずはそこらへんから改革したいです」

――数十年後、再び日本でワールドカップを開きたいようですが。

「(公式キャッチコピーに)水差すわけじゃないですけど、『一生に一度だ』って、2歳の子にも(ワールドカップが)もう来ないみたいな、そりゃないだろうと。ひょっとしたら50年かかるかも知れませんが、そういう目標を持つ。今回のワールドカップでラグビーを全く知らない人は『すごい』と体感できると思う。その後、皆が同じ思いを持って突き進めるようにしたい」

――話題に挙がる国際交渉力について。統括団体のワールドラグビーは、計画中だったネーションズ選手権(上位国代表による対抗戦)の新設を断念しています。日本協会は、同選手権のプランが頓挫した場合はラグビーチャンピオンシップ(南半球4カ国の対抗戦)へ加われるよう交渉するとしていましたが、その実現も簡単ではなさそうです。これらの交渉過程について知っていること、それを踏まえてすべきことについてお話しください。

岩渕

「私が持っている情報は皆さん(報道陣)と同じくらいですので、その情報をもとに簡単なことは言えないと思っています。ただ代表チームの強化のためにも、子どもたちが夢を持つような未来を作るためにも、定期的なテストマッチ(代表戦)はどうしても必要になります。シックスネーションズ(欧州6カ国対抗)、ラグビーチャンピオンシップに入るのか、各ユニオンとの関係を著しく強化してスケジュールを組むのか、色々な形が考えられますが、世界ではものすごいスピードで議論が動いているので、いますぐにでもその動向をチェックして、会長と相談しながら進むべきです」

――サンウルブズは、国際リーグのスーパーラグビーから2020年限りで除外されます。同部を運営するジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOは今回から日本協会の理事にも加わっていますが。

「(統括団体サンザーからの)一方的な通告から時間が経った。渡瀬から(除外されたと)聞いて本当にがっかりしました。サンウルブズの試合を観戦しましたが、大学ラグビーやトップリーグのファンじゃないファンが増えていたんですね。本物のファン――と言ったら早明(有名大学)のファンに失礼ですが――この、ラグビーが本当に好きな方にグラウンドに来ていただくためのことを――サンザーがどう言うかわかりませんが、どっか他のチームと組むとか――を渡瀬がやってくれたらなと。まだ、そういうことは全然話していないですが、そう、やっていけたらなと思っています」

※ジャパンエスアール側は、かねてオーストラリアのクラブとの協働の可能性を模索中。渡瀬CEOはその動向の公開に慎重な構えだった。

――清宮副会長、岩渕専務理事への期待。

「清宮とは10回くらい会って話して、『お前、こういうことをやってくれ』と言うことは伝えてある。トップリーグを含めた改革案を作ってくれと。本人も『やってっます』と。ワールドカップ終了後までにはたたき台を作ってくれると期待しています。岩渕はワールドラグビーとかそっちの方に行く。僕もそうでしたが、若い時は行け行けどんどんなので、僕は手綱を締めてチェックしたいと思います」

――「ユニオンが世界一に」。そのためには。

岩渕

「各国ユニオンは、会社でいうと四半期に1回くらいの決算で勝負をするようななかでやっています。日本ラグビー協会も意思決定のスピードを速くし、明確な目標を速くクリアしていく必要がある。会長とご相談のうえ、理事会そのもののやり方も考えないといけない。また、いまのラグビー協会はサービス業のようなもの。そこで働く人が大事。事務局そのものが変わっていくことが、ユニオンが世界一になる第一歩だと感じます」

――2019年以降の男子15人制日本代表のヘッドコーチはどうするのか。

岩渕

「まだ(新執行部)が決まったばかり。現状をすぐに整理する。世界ではすでにいろんなことが決まっているので協会としても方向性をすぐに出さないといけない。いつとは言えませんが、ワールドカップが9月20日から始まるので、ぎりぎりになる前に方向性を出すことが必要だと思います」

――トップリーグの観客数について。

「時期については2~3年先と思いますが、トップリーグはプロ化を考えないとだめなんじゃないかという時期にきています。アマチュアのゲームとプロのゲームで区分けするというか。おかげさまでワールドカップ各開催都市に素晴らしい競技場ができたので、地方自治と組んで、そこでトップリーグの試合をおこなう。あとは、清宮が考えてくれる。そういう話は、しています」

――改めて。トップリーグの観客数、どう見ていますか。

「観客数は、少ないですね。誰が見ても。それをどうやって行ったらいいのかについては…考えます!」

――国際交渉はこれまで坂本典幸専務理事が担ってきた。これまでの国際交渉力をどう見ているのか。また、その領域で今後どう臨むか。

岩渕

「これまでどうだったかについては色々な経緯もありますし、私自身がタッチしていない問題もたくさんあるのでどうこう言うことはないです。ただこれからネーションズ選手権の計画がなくなるなか、何かに乗っかるのではあなく、日本協会が進んで何かを作る交渉が必要になると思っています。世界中で色々な大会がありますが、それまでは日本協会が主導権を取ることがなかった。いまの段階では情報が少ないので整理の必要はありますが、これから3か月の間にワールドカップもありますし、その機会を有効に使って20~30年後までの方向性を作りたいです。

 1人の人間が責任を持つのが大事な一方で、協会そのものがシステムとして交渉力を強化するのも大事。理事に就任した人間には国際交渉を担ってきた人材がたくさんいるので、一緒になってそういうシステムを作りたい」

――15人制日本代表の強化委員長の話題を改めて。薫田さんが理事から外れているが、新しい強化委員長を、いまからゼロベースで考えるのか。

「薫田は日本協会職員として12月まで残ると聞いています」

――強化委員長のポストに戻ることは…。

「戻ることはないです。強化委員長には。はい」

※会見後、協会の広報担当者が「理事として戻ることはないということ」と強調も、理事の改選は2年後におこなわれる。

――ワールドカップを直前に控えるなか、同職の見直しを考えるべきと考えた理由は。

「それは言っていいのか…考えてください! よろしく」

※現強化委員長と現代表ヘッドコーチのコミュニケーション不足は周知の事実だった。

――意思決定のスピードを高めるためには。理事会はこれまで月に1度の開催でしたが。

「月1回じゃ遅いんですよ、審議事項を決めるのは。ネーミングはわかりませんが、例えば2週間に1回とかのペースで、決定事項を決定していきたいと思っています」

――現場の責任者と専務理事の兼務は、ガバナンス上、さらにはコンプライアンス上、難しいのではないか。

岩渕

「言っていただいた通りだと思います。物理的にも難しい状況が出るのは予想しています。一方で大切なイベントを控えて自分自身が果たす役割に、前向きに意味でトライする。そういう気持ちだけでやる。覚悟を決めてやり切る思いです」

 なお評議員会とこの会見は、国内最高峰のトップリーグ・カップ戦の試合があった日に開かれた。