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風通しのいいラグビー界を、作る。新会長候補の森重隆氏が提言。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
サンウルブズ(写真)についても言及。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ワールドカップ日本大会を間近に控えた今年6月、日本ラグビー協会(日本協会)の執行部が刷新される見通し。現副会長で新会長候補と謳われる森重隆氏が取材に応じた。スポーツ界で各競技団体のガバナンスが注目されるなか、「オープンにしたい」と息を巻く。

 日本協会では今年、サンウルブズ(運営母体はジャパンエスアール)のスーパーラグビー撤退などに伴ってか統治力が問題視されてきた。3月には名誉会長だった森喜朗氏がワールドカップ前の盛り上がりが欠けるなどとして辞意を表明し、会長、副会長、理事の若返りを求めた。

 6月12日、日本協会の定例理事会が都内であり、5月下旬の指名委員会で提案された新理事候補24名が決定された。岡村正会長、坂本典幸専務理事、河野一郎副会長らは退き、前ヤマハ発動機監督の清宮克幸氏、元早稲田大学監督の中竹竜二氏ら11名の新任がラインアップ。女性は現体制下より3名多い5名となった。

 新会長就任が決定的な森氏は、現副会長で唯一の60代となる67歳で福岡在住。現役時代に新日鉄釜石で活躍して「ヒゲ森」の愛称で親しまれてきた。この日は記者団のぶら下がり取材に応じ、冗談を交えて献身を誓った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「(森氏を待ち構える報道陣を見て)いや、そんなそんな。ありがとうございます!」

――新理事候補が発表されました。若返りがなされた印象です。

「若返りゃいいってもんじゃないです(一同、笑い)。重鎮というか、おとがめ役もいなきゃ。

俺は行け行けどんどんじゃないですか。それに対して『それは、やめたほうがいいですよ』とか、いろんな議論(が必要)。暴走しないようにね。ただ、オープンにしたいですよね、僕は。コソコソ話すのは人の悪口の時だけ! …みたいな(一同、笑う)」

――では会長に就任した場合は、広報体制なども変えるのか。

「もちろん変わるでしょう。オープンにしなきゃいけない。で、『こういう風に変わったぞ』といい風に書いていただいて。たぶん、ガラッと変わりますよ。そうですね。理事が業務分担して、業務できるような組織にしたいですよね。いままでは他人事だったから。責任を持たせてやりたいです。これまではある意味、それ(複数の業務の責任)がぜーんぶ坂本(前専務理事)に行ったりしていたところもあるんです。そうならないよう、責任がわかりやすいようにしたい」

――新体制下では、国際交渉力を強化したいようです(現理事で7人制日本代表ヘッドコーチの岩渕健輔氏が専務理事候補に取りざたされている)。

「僕らの(現役の)時とは全然違う。世界との勝負です。僕らの時はテストマッチ年間2~3試合で、いまは10くらいある。英語はマストだから、僕もいまから英会話行きますよ! (世界との)交渉力がなかったんでしょう。だから、こうなったんです」

――「こうなった」。サンウルブズのスーパーラグビー撤退の報せは、ファンを悲しませました。

「サンザー(スーパーラグビーを運営する団体)へは、渡瀬(裕司・ジャパンエスアールCEOで新理事候補の1人)がどんどん行きますよ、これから。日本協会もバックアップしますから(サンザー側は、日本協会からジャパンエスアールへの財務保障がなかった点を問題視していたとされる)。除名と言われたけど、それがもとに戻るように何か方法はないか、って。サンウルブズの応援って、すごいじゃないですか。外国人ばかりのチームを一生懸命に応援してね。早稲田とか明治とか、そういう学校を抜きにラグビーを応援するファンをなくすというのは、何か寂しい」

――国内のトップリーグについては。

「これから決めます。トップリーグをどうするか。もしサンウルブズがなくなったら、強化(の方法)はトップリーグしかないから。いずれにしても、わかりにくいでしょう。あのトップリーグ(24チームが上位、中位、下位の8チームに分かれる形。河野副会長が発表)。俺が聞いていてもわからない。それはよくない。清宮が、考えてくれますよ! 清宮しかいないでしょう」

――会長に就任した場合は、東京へ単身赴任するのでしょうか。

「(都内に)いなきゃいけないでしょう。でも、会長が自分で洗濯するのか。勘弁してよ、もう(一同、笑い)。…皆さん(メディア)とかとコミュニケーションができるような組織にしたいですよ。で、皆で盛り上げてもらって、本当にラグビーのために頑張りたい。1期2年、死ぬ気でやります」

 新体制は29日の評議委員会を経て正式決定し、同日開催の臨時理事会で詳細な役職が決まる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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