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森喜朗・日本ラグビー協会名誉会長が突然の退任。何を意味する?【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
2014年からは2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長も務める。(写真:ロイター/アフロ)

 日本ラグビー協会(日本協会)の森喜朗名誉会長が4月17日、同協会の定例理事会で退任を表明。間もなく受理された。申し出の理由は不明とのことだが、この行動は何を意味するのだろうか。

 首相経験のある森名誉会長は2005年から2015年まで日本協会会長を務め、ワールドカップ日本大会招致に尽力。この日は理事の1人に電話をかけ、普段出席しない理事会への参加を表明したという。終了後は無言で車に乗った。

 坂本典幸専務理事によれば、大筋の議論を終えたあたりで「これまでやってきた思いを語られた」とのこと。他の幹部によると、今年6月の役員改選に向けて若返りを促す言葉もあったという。

 昨今、日本協会のガバナンスについて各所で報じられている。注目を集めたのは、国際リーグのスーパーラグビーから日本のサンウルブズが除外させられる顛末だろう。

 日本協会は、スーパーラグビーを統括するサンザーに巨額の参加費を求められたと説明し、2020年度限りでの離脱への理解を求めた。ところが、その参加費を求められたタイミングについて両組織の意見が食い違っている。坂本専務理事とともに出席したジャパンエスアール(サンウルブズを運営)の渡瀬裕司CEOは「数週間前」に通告されたと認識しているようだが、サンザー側のリリースは「2018年8月頃に通告済み」としている。

 渡瀬CEOがサンザーからのアプローチに驚く一方、その交渉過程が日本協会の理事会で報告されたことはほぼなかったと見られる。いずれにせよ、現場にとっての必須ツールが消極的な理由でなくなるのは事実だった。

 森名誉会長はサンウルブズの運営に反対していたが、サンウルブズが離脱した背景のガバナンスの方を問題視した格好。他の理事はこうも証言する。

「ワールドカップ後のラグビー界に向け、ミクロ的なことはちゃんとおこなわれている。ただ、全体的な像は見えない。そのあたりを憂いておられたのでは」

 森名誉会長の辞意に対しては、「正直なところ、森さんが何か仰ってそこはダメですとは言えない。察してください」と某上席。坂本専務理事の説明によれば、今後の森名誉会長の意向は「ラグビーについては最後まで(肩書きにとらわれず)お手伝いしたい」とのことだ。体調面の不安も報じられるボスの影響力が、改めて証明された。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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