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早稲田大学・齋藤直人、早明戦の決定的トライ&ゴールキックの「責任」語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
パスの精度も高い。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 今年で創部100周年の早稲田大学ラグビー部は12月2日、東京・秩父宮ラグビー場で明治大学との「早明戦」を31―27で制した。加盟する関東大学対抗戦Aの戦績を6勝1敗とし、帝京大学との同時優勝を果たした。早稲田大学の対抗戦優勝は8年ぶり23回目。

 堅守が光った早稲田大学は、17-13とリードして迎えた後半14、19分とインサイドセンターの中野将伍が連続トライ。31―13と点差を広げた。

 1本目の際は、ウイングの長田智希が右タッチライン際を大きく破ったのをきっかけに早稲田大学が敵陣22メートルエリアに侵入。ここからじっくり、じっくりとフォワードがフェーズを重ね、左タッチライン際を切り裂いてからも右へ、右へと進んでラックを連取する。

 最後は接点からスタンドオフの岸岡智樹、さらにその後方のフォワードの2枚組ユニットに入っていたプロップの鶴川達彦へと順にパスをつなぐ。その背後に立っていたのが大型ペネトレイターの中野で、乱れた防御の隙間を切り裂いた。一般的に「10シェイプのフォワードの裏」と呼ばれる動きだ。

 終盤は明治大学の猛反撃にあって点差を詰められたが、5本のゴールキック(ペナルティーゴール1本を含む)をすべて成功させていたことで僅差勝利を決めた。

 試合後に口を開いたのはスクラムハーフの齋藤直人。一時は日本代表候補にあたるワールドカップ日本大会トレーニングスコッドに入っていた3年生だ。

 中野のトライを導いた球さばき、自らが蹴ったゴールキックについて語った。

 

 以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――敵陣の深い位置に入って、中野選手のトライを導きました。

「自分が意識していたのは、あのエリアでは堅く、確実にいこうということ。テンポを上げることも大事だったんですけど、3点でもいいのでスコアをすることが大事だったので」

――ボールを持っている間に相手が反則をすれば、自らのペナルティーゴールで「3点」を刻めます。

「あとは周りの声とかも聞いて…(球を運ぶ場所を決める)ですね。3点でもいいという意識でやっていました」

――明治大学の防御、どう見えましたか。

「外側をかぶせてきたりもしていましたけど(極端にせりあがってパスコースを遮断する動き)、フォワードからの裏で意外といける印象でした。で、ゴール前で将伍の裏を使ったり」

――それが、例のトライシーンですね。

「でも、それまでの間にフォワードが我慢しての裏だったので。そこは我慢(がよかった)と思います」

――早稲田大学の防御はどうでしたか。

「相手のキーマンはスクラムハーフ。そこを起点にプレッシャーをかける。去年はそこで走られていたんですけど、きょうはそこが起点となってのトライはなかった。よかったと思います」

――試合終盤、飛び出す防御の裏側にパスやキックを通されました。何が問題になっていましたか。

「単純に順目(相手の攻撃方向に立つ人数)が少なかったのと、僕がそこにいないのでわからないですが少し(相手のパスの受け手にならなかった選手と)ぶつかったりというのもあったようなので。レビューしないとわかりませんけど。裏を取られた後もカバーはできていたので、よかったと思います」

――全般的に、力を出し切れましたか。

「個人的にはプレースキックを修正できた。先週は自分のキックミスでチームの流れを引き寄せられなかった(11月23日の慶應義塾大学戦では3本中2本を失敗。その要因に「緊張」を挙げた)。今日は少しですけど、チームに勢いを与えられたと思います。ゴールキックは結構、得意としていたのですけど、先週あれだけ外して、さすがに…と思って、練習しました」

――スタンドから観察すると、蹴る前から蹴る瞬間までのプロセスに何らかの変化が見えるような。歩幅を変えるなどのマイナーチェンジはありましたか。

「いや、歩幅を変えた意識はないですけど、一定のリズムで。助走が大事だと思っていて、助走の感覚をずらさないようにとやっていて」

――最初の立ち位置からボールを蹴る位置までの1歩、1歩を、より意識的に踏んだのですね。

「そうですね。最後(インパクトの瞬間)はボールを見てしっかり蹴るのが大事。そうするためのペースを(意識した)」

――これからトーナメントの大学選手権に突入します。キックによるスコアがより重要になります。

「最終的に2、3点が大事になってくる。きょうも序盤であれだけ点数をつけても、最終的には4点差。1本、1本が大事だと思うので、任された以上は責任を持ってしっかりやりたいです」

――運動量の多いスクラムハーフに入りながら、あの成功率。辛くはないのかな、と思わされます。

「普通に考えるとそうかもしれないですけど、自分は気にしてないです。任されている責任に、自覚を持って、と」

 桐蔭学園高校時代は、キャプテン兼正スクラムハーフ兼ゴールキッカーだった。早稲田大学入学時は同級生のスタンドオフ岸岡智樹にゴールキッカーの座を譲っていたが、その岸岡は「いつも練習しながら、うまいなぁと思っていた」。常に同じフォームで蹴られるのが凄みだとする。言うは易くおこなうは難し。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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