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日本代表の流大、反省しながらサンウルブズは「必要不可欠」と強調。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
日本代表でもリーダーシップグループに入る。(写真:アフロ)

 国際リーグのスーパーラグビーにあって、日本から参戦するサンウルブズの在籍期間は2020年シーズン終了後までとなっている。もっとも参加選手の多くは、サンウルブズの存在価値の大きさを認めている。

 その1人は、今季初参戦ながら共同キャプテンを務めた流大だ。チームは5位以内を目標に掲げながら3勝13敗で最下位に終わったものの、6月に日本代表ツアーへ参加した際にスーパーラグビー経験のメリットを感じられたそう。シーズン終了後の7月15日、共同取材機会で収穫と課題を語った。

 

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――結果をどう受け止めますか。

「目標に届かなかったのは残念。ファンの方にはたくさん応援をしていただいていて、それには結果で返すのが一番大事だったとは思うのですけど、成長できたという実感はある。これを今後に生かさなくてはいけないなというのが、いまの率直な思いです」

――収穫は。

「強度の高い試合を何試合もできたのはプラスになりました。その経験が6月のテストマッチでの判断の余裕などに繋がった。長い時間、皆で一緒に練習をしてきたことで、戦術の理解、成長もできましたし、6月のテストマッチ3連戦では――対イタリア代表戦2試合目は負けてしまいましたが――サンウルブズでやって来たことが出せたという実感が持てた(ツアー2勝1敗)。サンウルブズは必要不可欠なものだと僕は感じました」

――ヴィリー・ブリッツ選手と共同キャプテンを務めました。

「大変でしたね。僕自身、スーパーラグビー初参戦というなかでキャプテン。プレーもしっかりしないといけないし、チームにも気を遣わなければいけない。ブリッツ、他の皆と一緒に協力しあいながらできたことはよかったが、結果が出ていないことに関してはつらかったというか、自分を責めるようなこともありました。いま思えばそういう経験も必要だったと感じるので、すごくいいシーズンになったと思います」

――「自分を責めた」とは。

「やっぱり、ホームでワラターズ戦、ブルズ戦で連敗した時が辛かったです(※)。それまでも負け続けてはいましたけど、自分たちのなかでは成長している実感を持ちながらシーズンを送っていて、いよいよホームで勝たなくてはいけないところで、負けてしまった。結果を出さなくてはいけないのがこのチームだったので、何がいけないのか、自分自身にも矢印を向けたのはこの時期でした」

※ 4月7、14日の第8、9節。ここで開幕7連敗を喫し、初勝利は10戦目にあたる第13節まで待つこととなる。

――選手たちが国内外で休みなくプレーしている事情を踏まえ、サンウルブズは選手に交替で休暇を与えています。そのため試合ごとにメンバーが入れ替わり、コンビネーション構築が難しかったのではないでしょうか。

「ワールドカップを見据えた段階での選手の疲労とか、色々なことを考えてのことだったと思います。(選手が入れ替わった際の)コミュニケーションへの不安は事実としてありましたが、ジェイミー(・ジョセフヘッドコーチ)も『スーパーラグビーがタフだ』『休める時は休まないといけない』『メンバーが代わっても同じパフォーマンスを出せなくてはいけない』と言っていました。僕もそれを信じ切って、休むようにと言われた時はそこへコミットし、次に戻る時にはいい状態に…ということを意識していた。もちろん『毎回ベストで行くべきだ』など色々な声はありましたが、スーパーラグビーに出る以上はそのチームがベストだと思っている。選手側からコメントするのは難しいですけど、マネジメント側としては選手のことを思ってやってくれていたことだと思っています」

――来季のスーパーラグビーが終われば、日本代表はワールドカップ2019年日本大会に挑みます。ワールドカップに向けた意気込み、その前哨戦としてのスーパーラグビーへの思いを聞かせてください。

「準備がよくても、実際にそれを試合で出せるかは別問題。試合で100パーセントを出せるような準備をしないといけない。ワールドカップ直前(のスーパーラグビー)ということで、勝利していくことが大事だと僕は思っています。来年はもっと勝ち星をつけて、自信を持った状態でワールドカップに挑めれば」

 サンウルブズが2021年以降もスーパーラグビーに参加できるかどうかは一般社団法人ジャパンエスアール(サンウルブズを運営)と統括団体SANZAAR(スーパーラグビーを運営)との交渉に委ねられそう。ジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOは、「日本のラグビーはもちろん、世界のラグビーをけん引する立場でいろいろとやれるようにしていきたい」と力強く語る。

 ところが日本代表を支える日本ラグビー協会内では、スーパーラグビーへの参戦そのものを見直す声も出ているという。この話の発生源および参戦取り消しのメリット、あるいはその効力などは不明だが、水面下で議論がなされていること自体は一部の協会理事も認めている。

 昨今の潮流を知ってか、日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチも「仮に私が2019年以降も日本代表のコーチングに携わるとしたら、やはりそうしたシチュエーション(サンウルブズの存続)を求めます。メディアに『なぜ勝てない』と問われた時、『アマチュアだから』とは言いたくない」と話している。

 流がサンウルブズを「不可欠」だと強調していたのも、このトピックスと無関係ではないのではないか…。聞き手の意図を知ってか知らでか、去り際にこう言い残した。

――会見中に「必要不可欠」と強調されていたのは、2021年以降も踏まえてのお話でしたか。

「もちろん。1人の選手として声をあげるなら、スーパーラグビーに参戦することは必要だな、と思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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