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サンウルブズ、スーパーラグビー契約延長へのビジョン。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
参戦初年度は1勝、2シーズン目は2勝、今季は3勝を挙げた。(写真:Haruhiko Otsuka/アフロ)

 国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズが7月15日、3季目の終了を報告。チームを運営する一般社団法人ジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOが、5位を目指すも3勝で最下位に終わった背景、日本代表との連携、ワールドカップ日本大会がある2019年のスーパーラグビーシーズンへの展望などを語った。

 また、この日におこなわれた共同取材では、目下2020年までとされている在籍年限の契約に関する意見も明かした。日本ラグビー協会内で撤退の議論が表出も、渡瀬GMは、ジャパンエスアールがスーパーラグビーを運営するSANZARと直接契約の関係にある点を明らかにした。まずは今季の話から。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。 

――史上最多となる3勝を挙げたシーズンを総括してください。

「過去の1、2年目も充実していましたが、今季はさらに確信めいたものを感じられました。ニュージーランド、オーストラリアのチームとたくさん試合をしましたが、彼らが我々にぶつけてくるメンバーにも本気度が感じられました。数値を見ても、力がついてきたと感じられます。

 タフな試合をしたなか、アンラッキーなレフリング等々もありました(第18、19節と2試合連続で前半終了間際にレッドカードを食らい、相手より1人少ない14人での戦いを強いられた)。数字がすべての結果を映しているとは思えない。ただ、これも経験です。14人で40分間、強豪チームを相手に戦わなければならない経験も、これまでなかったわけですから。上を狙っていくうえで、これを糧にどうチームを作っていくかが大事になります」

――当初はシーズン5位以内を目指していましたが、開幕9連敗などにより最下位に沈みました。

「(5位という題目を掲げた背景には)目標は高く掲げなければいけないという思いがあり、5という数字にこだわった部分もあります。実際は非常に厳しかったですが、越えられない壁ではないと思っています。次はこれを越えなくてはいけないと思っています」

――来季へ。

「強化はヘッドコーチたちが責任をもってやってくれます。ただ、日本のチームが世界に勝つために必要なものが必ずあると思っていまして、それを突き詰め、ひとつの方向へ行きつつあります。これをもっと極めて欲しいですし、精度を高めたい。サンウルブズには来年に日本代表資格を取れる選手も何人かいます。こういった選手には是非、日本代表やサンウルブズで活躍して欲しいと考えています」

――興行面でのレビューは。

「東京の試合の1試合平均入場者数は11819人。今年に関しては(ホームでの)試合間隔が詰まっていました。2戦連続で東京での試合のあったタイミングが2度、ありました。どの国のチームに聞いても、2週間連続でのホームゲーム開催は(興行的に)不利と言われます。2連戦中の2試合目に観客が入らなくなる傾向がどうしてもあります。このあたりはSANZARにも話をしました。今後、少しは改善されるのかと思います。

 とはいえ来年も、2週連続で東京開催試合をする時があります。ここで、いかに興行的に運営するか。我々はお金儲けのためにやっているわけではありませんが、強化には運用資金が必要。どこで試合をするかも含め、プランニングをしっかり立てたいです」

 ここからは、来季の話を紹介する。

――通常なら2~5月までのスーパーラグビー序盤~中盤戦が、6月に代表戦期間があり、7月から同リーグ再開という流れでした。来季は2月16日から6月15日までサンウルブズにとってのスーパーラグビーのレギュラーシーズンがあり、以後、スーパーラグビーのプレーオフ(進出した場合)や日本代表の事前キャンプなどを得てワールドカップ日本大会が開幕します。サンウルブズの来季の強化体制などについての見通しは。

「基本的にいまのジェイミー・ジョセフヘッドコーチを頭にしたコーチ陣が、日本代表と連携してやっていく。日本代表のテストマッチとサンウルブズの試合は日程的には重なりませんが、どこの国に聞いてもスーパーラグビーで頑張りすぎるとコンディションが崩れる…ということがあります。スーパーラグビーでも勝たなくてはいけませんが、選手のコンディショニングを最優先しながら、ヘッドコーチと連携を取って慎重にやってゆきたいと思っています」

――ジョセフヘッドコーチは続投か。

「追って、正式に発表させていただきます。ただ、ワールドカップイヤーに今年のようにやる(日本代表とサンウルブズの指揮官を兼務)のは難しいのではと、個人的には思っています。今年はそれを予想、想定しながら色々な形で動いてきました(ジョセフヘッドコーチが腰の手術のため離脱した7月、トニー・ブラウンアタックコーチやスコット・ハンセンディフェンスコーチがヘッドコーチ代行となった)。今後のためには、誰がヘッドコーチになってもある程度は機能するコーチングチームを作る必要があると考えています」

――来季、サンウルブズが勝つことの意味。

「来季は2019年の早い段階でスーパーラグビーの試合が始まる。国際舞台で我々が勝つことは、いままでラグビーを見たことのない方の興味に繋がる。責任があると思っています。一方、2019年以降のこともあるので、次世代を担う選手を積極的に獲りに行く必要もあるかと思います」

――結果を出すには。

「単純に考えていい選手を海外から引っ張ればという考えもあるかと思いますが、そういうことではなく、今年1年一緒にやって来た選手に来年も継続して活躍してもらうことが大事。もうひとつは、チームカルチャーですね。今季最終戦でも、14人になりながら必死に攻めて2トライを奪っていました。そういう積み重ねがチームカルチャーを作り、そのチームカルチャーができることで強いチームが作れます。具体的な答えになっているかはわかりませんが、こういったイメージを優先しながらやっていきます」

――来季のスコッドについて。

「色々と考えています。日本代表のトレーニングスコッドは現在、40名いますが、これが今後どうなっていくかも(サンウルブズの編成と関係が)あろうかと思っています。ただ、今年以上の人数は必要になってくると思います」

――来季も期間限定契約の選手も出てくるか(今季はピーター・ラピース・ラブスカフニ選手が4月限りでチームを離れていた)。

「そういうこともあるかと思います」

――スコッドの発表は。

「例年より早い時期にある程度の人数を出そうと考えていますし、1月の例年よりも早い段階で動き出さなくてはとも考えています。今年はいかに準備が大事かを痛感していますから。今季よかったのは、代表資格のない外国人選手がチームのために身体を張ってくれたこと。6月に活動した日本代表から戻ってきた選手をどう受け入れるかについても、彼らはすごく気を使いながらやってくれていた。これはありがたかったですし、我々の価値になると思います」

 ここからは、2021年以降に関する問答を紹介する。

――サンウルブズのスーパーラグビー在籍は、2020年でひと区切りつきます。以後の契約延長へはどんなアプローチが。

「2021年以降のことについても、(スーパーラグビーを統括する)SANZARと話を始めています。彼らのほうでもどういったストラクチャーにするかをまだ決めていません。そのなかで、我々がどんな貢献ができるのか(を発信したい)。いままでは何とか入れてもらって…という形でしたが、これからは参加する以上は貢献度を作る。日本のラグビーはもちろん、世界のラグビーをけん引する立場でいろいろとやれるようにしていきたいと思っていますし、彼らもそれを望んでいます。

 '''彼らも、世界におけるラグビー人気の伸び悩みに危機感を抱いていると思います。何か我々が貢献できることは、当然、あると思います。例えば、アジアでの立ち位置。我々が他国にどんな働きかけができるかということも重要で、彼らもそれに興味を持ってくれています」

'''

――日本ラグビー協会へも同種の働きかけをするのですか。

「いまは、SANZARと我々ジャパンエスアールが直接の契約を結んでいます。彼らのカウンターパーティー(取引相手)は我々です。もちろん日本協会へも我々からこうした話はしますが、最終的にはSANZARとジャパンエスアールの契約のなかで決まっていくものと理解しております」

 現在も香港やシンガポールで試合をするサンウルブズは、アジアでの競技普及をけん引することでスーパーラグビーにおける存在価値を高めたいという。2014年に参戦権を勝ち取った日本協会との協調もアピールしながら、「最終的にはSANZARとジャパンエスアールの契約のなかで決まっていくもの」との立ち位置を改めて表明した。

 他との競合の末に2021年以後の残留を決めたら、国内シーズンのストラクチャー変更(2020年以降は国内トップリーグがスーパーラグビーと同時期におこなわれる)後の選手確保という課題とも向き合うこととなろう。会見中でも触れられた多国籍クラブならではの「チームカルチャー」など、伝えられるべき点の多いクラブ。今後の発展が注目される。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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