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成功率最下位のラインアウト改善なるか。サム・ワイクス復帰待たれる。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
2月25日の第2節では母国のブランビーズと対峙(写真中央)。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦するサンウルブズは現在、開幕5連敗中だ。

 特に攻撃の起点をなす自軍ボールラインアウト(タッチライン際での空中戦)成功率は、全チーム中最下位の76.8パーセント。身長2メートル級を揃える相手との身長差は事前から想定されていたが、2015年のワールドカップイングランド大会時の日本代表は2メートル台の選手がいないなか自軍ボール獲得率9割超をマークしていた。

 

 サンウルブズでは、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが週ごとに捕球計画を打ち出している。しかし、列の中央より後ろへ投げては向こうの長身選手に競られてしまう。球を投入するフッカーの堀江翔太は「シンプルに捕れたら。ロック(おもに跳躍するポジション)陣はシンプルにやっていこうと話している」とした。求められるは、簡潔な基本動作への回帰か。

 窮地を救いうるのは、しばし離脱していた主力ロック候補たちだろう。その1人は、加入2年目のサム・ワイクスだ。第3節(チームにとって2戦目)で脳震盪のため途中交代。以後、回復プロセスを踏むなどしていた。

 3月下旬にあった第7節を2度目のバイウィーク(試合の組まれない週。1度目は第1節)としたチームは、約1週間の中断期間を経て4月2日に練習を再開。ワイクスはここへ元気な姿で現れ、全体練習後のラインアウト練習で何度もジャンプを繰り返していた。

 3月下旬に発売の『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』には、017年のワイクスへの取材記録をもとに構成された箇所がある。サンウルブズ助けるサム・ワイクス、日本代表に「正直に言えばなりたい」。【ラグビー旬な一問一答】に加筆されたパートには、空中戦を仕切るオーストラリア人選手の姿が描かれている(以下、当該箇所初稿を一部改稿)。

 

 東京・辰巳の森ラグビー練習場でフォワード陣がラインアウトの練習をする時、かならず中心となるカーリーヘアの人がいる。それがサム・ワイクスである。2008年から2015年までウェスタン・フォースに在籍したオーストラリア出身の29歳で、直近では日本のコカ・コーラにも所属していた。

 身長197センチ、体重109キロと母国のロックとしては平均的なサイズなのだが、駆け引きや正確な捕球技術も問われるラインアウトで持ち前の冷静さを活かすのである。慎重に言葉を選ぶ。

「それぞれの選手が、私たちがやろうとしていることをやろうとしてくれています」

 攻めては長い手足を活かしたランやオフロードパスで魅する。サンウルブズでは中央のポッド(フォワードが左右、中央にまんべんなく散る攻撃陣形)に入り、密集脇のわずかなスペースをじりじりと攻略する。

イングランド大会以来、日本代表はロックの層拡大を課題にしている。若き日本人選手もサンウルブズに加わっていたが、7月にスーパーラグビー100キャップ取得のワイクスへの期待は高まるばかりだ。

「サンウルブズのいいところは、長い遠征に対して誰も文句を言わないことです。それだけ組織だっている。不平を言うのか、大変さを糧にしてよりよいマネージメントを考えるのか。どちらがいいかと言えば、後者ですよね」

 オーストラリア出身の選手として、日本のチームの良いところを相対化していた。この頃は2017年シーズンの只中。日本代表入りへの思いを強烈にアピールするのは、もう少し先のことであった。

「いまの時点では、サンウルブズでいいプレーをするだけ。なぜか。いまサンウルブズがやっているラグビーは、いままでに経験がないほど楽しいものなのです。勝った時のうれしさ、勝てる試合だったのに…という悔しさ。これらが、次への糧になっています」

 そして、今年の4月2日。コンディションははどうかと問われると「怪我、なし!」と日本語で即答。以後は「火曜日(4月3日)にセレクション(※)がある」と英語で続けた。自らも復帰を希望する。

※ 4月7日のワラターズ戦に向けた本格的なメンバー選考。メンバーの決定及び発表はキックオフ48時間前

 勝てば嬉しい。負けたら悔しい。この原則を忘れず、まずはファーストジャージィを掴みに行く。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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