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自衛隊で活躍。サンウルブズのピーター・ラピース・ラブスカフニ、日本代表も?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ボール保持者がラブスカフニ。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦して3季目のサンウルブズは、今季初の南アフリカ遠征に出かけている。現地時間3月10日にはダーバンでシャークスとの第4節に挑む。

 開幕2連敗中(第1節は休み)というサンウルブズにあって、気を吐いている南アフリカ人選手がいる。

 ピーター・ラピース・ラブスカフニ。身長189センチ、体重105キロの29歳で、オープンサイドフランカーを務める。グレイカレッジ高校、フリーステイト大学を経て、チーターズ、ブルズの一員としてスーパーラグビーの公式戦50試合を経験。2016年からの2シーズン、日本のクボタに在籍してきた。相手を押し戻すタックルと運動量、ジャッカル(接点で相手の球を奪うプレー)で魅する。

 サンウルブズへは今季から加わり、陸上自衛隊別府駐屯地での訓練などなどタフな事前キャンプを乗り越えてきた。開幕すれば2戦連続で先発フル出場。シャークス戦はリザーブに回り、途中出場をうかがう(追記、試合直前にメンバー変更のためベンチから外れた)。

 以下、3月3日(東京・秩父宮ラグビー場での第3節でレベルズに17―37と敗戦)後の共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合を振り返って。

「きょうのゲームは十分ではなかった。振り返りはまだしていませんが、たくさんのすべきことがあるでしょう。ただ私たちには5位以内という目標があって、まだあきらめていません。スーパーラグビーは長くタフです。週末だけでなく、週の半ばもしっかりとパフォームしなければならない。厳しいフィードバックを受けるでしょうが、前向きに、何をすべきかを考えて次の試合に臨みたいです」

――掴み上げる。刺さる…。タックルのバリエーションが豊富です。

「毎回、そのシチュエーションに対応しているだけです。僕がタックルのバリエーションが豊富だとは、思っていません。その機会、機会でベストな対応をしている」

――タックルで重要なことは。

「しっかりとターゲットを見つめ、両隣の味方のプレーヤーを見ます。(ヒット後は)しっかりと足をかくのが大事です」

――ワークレートが高い。そのわけは。

「やるべきタスクを十分になる、能力の最大値を発揮する。やるべき機会が来たら、そこで最大限にできることをします。15人、ひとりひとりが自分のタスクを持っています。試合がどう展開するかによって、機会が増えるかどうかが決まります」

――巨漢揃いの南アフリカでは小柄なフォワードと言われますが。

「皆は私のことを小さいと言います。ただ、犬が戦う時もサイズは関係ないはずです。その犬自身の、ファイトの心が大切です。高校時代に所属したチームの小柄なチームでしたが、相手を大きい、小さいという風に見たことはないです。自分たちが何をしなくてはならないかを、見ていました。有名な言葉があります。『強くて速い人が常に勝つわけではない』。最終的にどちらかが勝ちますが、ちゃんと考えた方が勝つのです」

――改めて、チームについての話を。サンウルブズのキャプテン、ヴィリー・ブリッツ選手とは高校時代からの仲間です。

「昔からの付き合いです。2007年、初めて同じチームでプレーしました(ブリッツはディアマンベルト高校出身)。もともとはチーターズのデベロップメントチームで一緒にいて、大学も同じところでプレーし、同じ寮でした。その後は違う道を歩みましたが、いまは、(同宿のため)一緒に住んでいるようなもの。またここで会えて嬉しいです」

――陸上自衛隊別府駐屯地での合宿時は、あなたのリーダーシップが評価されました。

「とてもタフでしたが、そのキャンプ自体が素晴らしい効果をもたらしました。やれと言われたタスクは、全てチームでするもの。1人ではできないものでした。リーダーシップが褒められたことは嬉しいですが、あそこではチームのスキルが試されていたのです。結局、ひとりひとりがすべきことを遂行しないと、あのタスクは完成されなかった」

 陸上自衛隊では、選手がその時々で複数のグループに分かれてミッションを遂行。土嚢を背負って街を所定時間内で歩いたり、丸太を担いで駐屯地と海を往復したり。これらを「チームのスキルが試されていた」と振り返るラブツカフニは、同じグループに入っていた日野剛志曰く「まずはあの信号まで歩こう、とか、目先の目標を作りながら引っ張ってくれていた」。態度で、言葉で、周りを引っ張った。

 いざ開幕すれば、その気質が存分に活かされている。ここから期待されるのは…。

――日本代表入りへの思いは。

「日本代表入りの機会が訪れたら、喜んで受けます。たくさんのことが前に進み、そうなることを願います。質問にストレートに答えるとしたら、日本代表になれるのであればなりたいです。日本という国自体にものすごいポテンシャルを感じています」

 海外出身者の代表資格取得へは「当該国での居住3年以上」「他国代表(およびそれに準ずるチーム)での試合出場経験がないこと」がハードルとなる。ラブスカフニの居住期間はワールドカップイヤーまでにはクリアするが、代表経験については精査が必要と日本協会関係者は言う。

 元20歳以下南アフリカ代表のラブスカフニは、同国代表に準ずるA代表への選出経験はないものの2013年に正規の南アフリカ代表へ入ったことがある。当時はテストマッチデビューこそ果たしていないが、日本協会は本人が南アフリカ代表としてツアーへ帯同したか、非テストマッチでのプレー実績があったかなどの調査を慎重におこないたいという。

 もっとも当の本人は、「ルール上だめというものはもうありません。ヘッドコーチが認めてくれればなれるという状況です」。日本全土を挙げての問題解決が待たれる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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