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パナソニックのロビー・ディーンズ監督、サントリーに敗戦も「誇り」語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
某首脳曰く「パナソニックにぴったりのキャプテン」(写真は10月の対戦時)。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

 日本選手権を兼ねた日本最高峰ラグビートップリーグのプレーオフトーナメントの決勝戦が、1月13日、東京・秩父宮ラグビー場であり、一昨季まで3連覇していたパナソニックが昨季2冠のサントリーに8―12で敗れた。

 試合は序盤からサントリーが連続攻撃を仕掛け、前半を12―5とリード。後半こそパナソニックがボール保持率を上げるなど巻き返しを図ったが、要所でのミスが目立った。

 ノーサイド直前はサントリーが敵陣深い位置でボールキープも、肉弾戦での反則からパナソニックが攻撃権を獲得する。パナソニックは逆転勝利のチャンスを掴んだが、敵陣ゴール前でのラインアウト時に落球。サントリーが歓喜に沸いた。

 試合後、パナソニックのロビー・ディーンズ監督と布巻峻介キャプテンが会見した。

 以下、共同会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ディーンズ監督

「まず、できればこの会見を2チーム目としてやりたかったのが率直な感想です(勝利チームは最後に敗戦チームの後に会見)。

 コーチ陣、マネジメントスタッフ、スタッフの立場から申し上げると、今年の選手のことは誇りに思っています。きょうの結果、きょうの試合については、その事実は変わりません。ただ、素晴らしい男たちが、素晴らしい仕事をしてきた。我々は今日結果として負けましたが、決勝という素晴らしい1つの試合の一翼を担えたと思います。

 今日、見ていただいたように、グラウンドに立っていた選手たちは、向こう2~3年の日本ラグビー界を支える選手です。日本ラグビー界は明るいと見ていいでしょう。我々はこの舞台に何度も立ってきましたが、きょうの試合はこれまでの決勝戦をはるかに超えた素晴らしい決勝戦だったと思います」

布巻

「あの、まず初めに今年1年間、スタッフやファンの方々に応援、支援していただいたこと、感謝したいと思います。

 サントリーさんともこういう戦いをさせていただいて、僕らとしては誇りに思える試合で。サントリーさんにはおめでとうと伝えたいです。本当に何で負けたのか、細かくはわからないですが、単純にサントリーさんが強かったと思います。昨年、(日本選手権決勝戦でサントリーに)負けてから、成長できた実感はあったのですが、それが届かなかった。強くなるきっかけをくれたので、これを次のシーズンに繋げていきたいと思います」

――キャプテン就任1年目でした。

布巻

「僕は、あまり背負わないように意識していて。他のリーダーたちと共有しよう、と。抱え込み過ぎないことを、意識しました。自分の弱みを相手に託さないといけないので、最初はそこへの躊躇はありました。ただ、信頼できる仲間がいたので、託すことができたと思います」

――試合について。パナソニックがいつもらしくなかったような。

布巻

「どこかでプレッシャーはかかっていて、そこで細かいところをもうちょっと意識できたらよかったのですけど、詰めが甘かったですね」

――想定外だったことはありましたか。

ディーンズ監督

「特に大きな違いは感じなかったです。ただ、サントリーさんは前半、ポゼッションを高くしてきた。後半はその部分を修正し、我々がポゼッションを高くした。しかし、少し差が出てしまったとは思います」

――前半、サントリーの猛攻を受けていた時間帯がありました。パナソニックの防御網は、どんな状態でしたか。

布巻

「勢いを持たれてしまって、僕らが前に出ることができなくなっていましたね。そういう状態でした」

――その時の防御ライン中のコミュニケーションは。

布巻

「そういうこともありますし、タックラー1人ひとりの精度が悪かったという部分もあったと思います」

――スタンドオフのベリック・バーンズ選手、オープンサイドフランカーのデービッド・ポーコック選手などが相次ぎ離脱。予期せぬ選手交代の影響は。

ディーンズ監督

「これはまさに決勝戦そのものです。入れ替えは、怪我によるもの、それ以外のものはエナジーが必要だという戦略的な入替えでした。ポーコックは、HIA(脳震盪のテスト)HIAについてはクリアしてグラウンドに戻したのですが、その後、本調子ではないと」

――後半、攻め込んでもトライが取れなかった。

布巻

「あそこはお互いの我慢比べのところ。あそこで取り切れなかったのは痛かったですね」

――試合終盤、ブレイクダウン(ボール争奪局面)周辺のプレーについて、レフリーに注意されていましたが。

布巻

「そこはお互い、ちょっとでも邪魔してやろうという気持ちがあって、そのなかで生まれた注意だったんですけど、ブレイクダウンはお互いいい形でファイトしていたんじゃないでしょうか。(レフリングには)一貫性はあったと思います」

――試合終盤。自陣22メートル線周辺で必死の防御。ノーサイドのホーンが鳴ったところで布巻選手のジャッカル(接点で相手の球へ絡むプレー)でサントリーの反則を誘います。最後の最後まで逆転勝利を狙いました。

布巻

「5分ぐらいディフェンスしていたんですかね。ボールを獲れればチャンスはあると思って、ポジティブな気持ちでディフェンスしていて、(自ら)ボールをゲットできて、『あぁ、流れがきたな』と思って…力尽きた感じでしたね」

 攻め込んだ先でのわずかなほころびが、白星を遠ざけた。もっともこの日の布巻は、神がかったようなパフォーマンスを貫いた。特にポーコック離脱後は相手のエース格たる松島幸太朗をひっくり返すタックル、ノーサイド直前のジャッカル(接点で相手の球へ絡むプレー)などでスタンドを沸かせていた。

「本当に何で負けたのか、細かくはわからないですが、単純にサントリーさんが強かったと思います」

 潔かった。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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