Yahoo!ニュース

フランス代表にドローの日本代表。リーチ マイケルは「満足していません」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
入場時。場内はスモークが焚かれた。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

 日本代表のリーチ マイケルキャプテンは、さながら公平な立場からの見立てを明かした。

 現地時間11月25日、敵地ナンテールのUアリーナで4年に1度のワールドカップで準優勝3回という強豪のフランス代表と対戦。23-23で引き分けた。ワールドカップ日本大会を2年後に控えるなか、対戦戦績が9戦全敗だった欧州の強豪とドロー。もっともフランス代表は近年苦戦し、この日もミスを連発していた。80分間の様相をどう捉えるかは、その人の見立てによるところが大きそうだった。

 前半5分に先制するなどしばし試合の主導権を握りながら、要所での反則を契機とする失点などで勝利は逃した。

 試合後、リーチ マイケルキャプテンがジェイミー・ジョセフヘッドコーチとともに会見。日英仏の3言語による通訳を介し、所見を明かした。

――ツアー最終戦。勝てそうな試合を引き分けた。収穫は。

リーチ(ここは英語で)

「今日の試合では、両チームともチャンスを逃した場面が多くあったと思います。我々も精度の低さにより得点まで繋げられなかったことがありました。2年後のワールドカップを見据えて誇れる試合だったとは思いますが、満足はしていません。チャンスを逃したところを反省し、取り組みたい。誇れるところは、開始から最後までアタックマインドセットを持ち続けられたところです」

ジョセフ(英語で、以下同)

「いいツアーでした。フランスのテストマッチは1勝1引き分け。きょうは残念に思っているが、勝てる内容の試合ができたことはよかった。どちらに転んでもおかしくない内容でした。試合の入りに関しては23人、勝つ気持ち、意気込みで入っていけました」

――プレー面で何に満足していて、何に課題を感じているか。

ジョセフ

「メンタルが正しかったのは満足。フランス代表に勝負をしに行って力強くスタートし、スクラムでも根性を見せた場面もありました。相手にプレッシャーをかけて追い込み、こぼれ球を拾って、点を取るところまで持っていけた。後半も力強く戦い続けることができました。課題は時に慌てて、乱れるところがあった点です。勝って締められるようにしたかったです」

――ロックのリザーブがいないなか、先発のロックが後半21分に退きました。終盤、空中戦のラインアウトにやや乱れが生じましたが。

ジョセフ

「その通り、ロックが2枚とも怪我で不足して、ロック不在のまま試合をしなくてはいけないところがありました。ロックほどの身長がないルースフォワードの選手がロックに入りました。それにもかかわらず、懸命にあそこまで戦ってくれたのは嬉しく思います。モールでのトライも取られていないですし、選手たちはよく頑張った。あとは(少人数による)ショートラインアウトでよりイノベーションというか、工夫をしないといけない」

――自陣からボールを回していた。プレーが動くなかでのキックは少なかった。

ジョセフ

「フランス代表は、過去の相手と異なる守備をしてくる。そのため今回はこうしました。フランス代表に勝つためにボールキープにこだわった。それが奏功した」

――フランスのフォワードは大型。セットプレーについて。確信を持ったか。

リーチ(日本語で)

「日本代表のフォワードはかなり自信がついた。これ以上でかい相手はなかなかいない。モールも止めたし、そこでのペナルティーもなかった。スクラムは後半崩れてしまったが、それはこれから修正できる。フランス代表が(ペナルティーキック時にトライではなくペナルティーゴールの)3点狙いに行ったのは、フォワードにとって自信になりました。フォワードのメンタリティは、ワールドクラスに負けないくらいです」

――ワールドカップまで2年。バックボーンは確立されたか。

ジョセフ

「いい土台はできている。リーチ、立川理道がいいリーダーシップで引っ張ってくれている。選手とコーチ陣は非常にいい連携が取れています。でもまだまだ体格も小さいし、フィットネスも足りない。これからハードワークし、スマートに戦いたい。大きい相手だからといって毎回、同じ戦いをするのではなく、工夫をしていく。課題は山積しています」

――フランス代表を相手にアウェイで健闘。勝つには何が必要か。

リーチ(日本語で)

「2011年のワールドカップのフランス代表戦(一時僅差で迫るも21―47で敗戦)、そして今日の試合を経験して、成長した(と感じる)ところは間違いなく戦うメンタリティ。ゲームプランもより日本代表にとって優位なものになった。セットピースも上がったと感じています。ほぼ満員のスタジアムでフランス代表と戦ったのですが、スタジアムの雰囲気は感じたと思うけど、エネルギーのある会場でした。

 次、勝つには。すぐ答えは出せないですけど…。メンタリティ問題ない、ただ、もっとレベルアップしないといけないのは、ルーズボール(こぼれ球)のところでのトランジション(攻守の切り替え)。ここの精度をもっと上げないといけない」

 確かにこの日、敵陣深くまで入ったのちにボールを乱すと、そのまま大きく陣地を挽回されてしまうシーンがいくつかあった。突如、相手にボールを渡しても素早い防御網を形作れれば、被害は最小限に止められる。

 とにかく、これで日本代表のこの秋のテストマッチ(国際真剣勝負)の戦績は、3戦で1勝1敗1分となった。11月4日のオーストラリア代表戦(神奈川・日産スタジアム)は序盤に勝負をつけられ30-63と完敗したのち、渡仏後の18日には代表デビュー組の多かったトンガ代表を39-6で制していた(トゥールーズのスタッド・アーネスト・ワロン)。

 そして、締めくくりは今度のフランス代表との80分だった。弱り目の相手を倒せなかったこともあり「課題は山積」も確かだが、リーチの言う通り現状を「反省し、取り組む」ほかない。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事