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ワールドカップ日本大会日程決まる。日本代表のスケジュールをどう見るか。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ジョセフ(左)とリーチ(右)。欧州諸国を相手に素早さで対抗する。(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 4年に1度あるラグビーワールドカップの日本大会は、開幕を2年後に控える。11月2日には、都内ホテルで各試合の開催地と日程がリリースされた。

 タレントの武井壮さんが司会をした発表イベントでは、ハンマー投げの室伏広治などのスポーツ界の著名人が登壇。優勝カップであるウェブ・エリス・カップの横で、試合会場や対戦カードを順に読み上げる。

 注目されるのは、前回イングランド大会で初の3勝を挙げた開催国チームの動向か。

 日本代表は2019年9月20日、東京・味の素スタジアムでヨーロッパ地区代表(ルーマニア代表などが有力)とのオープニングゲームを実施することとなった。

 そして28日には静岡・エコパスタジアムで、欧州6強の一角であるアイルランド代表戦に挑戦。さらに10月5日は愛知・豊田スタジアムで、ヨーロッパ・オセアニアプレーオフ勝者(サモア代表が筆頭格)との第3試合に臨む。

 続く13日には、決勝戦のある神奈川・日産スタジアムでスコットランド代表とのゲームに挑む。

 この計4試合からなる予選プールAを突破し、初の決勝トーナメント進出を決めたいところだ。現主将のリーチ マイケルは、「ベスト4以上」を目標に掲げる。

言い訳できない

 全ての試合が中6~7日で実施されるのは、日本代表にとって優しい処置か。中3日での試合も組まれていた前回以前と比べたら、身体の修復や次戦の対戦相手の分析に十分な時間が取れる。リーチが「1試合、1試合の間に時間もあって…」と喜ぶのも当然だ。

 統括団体ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は言う。

「すべてのチームに公平にレストを与えるようスケジューリングしました。特にティア2(挑戦者)が短い試合間隔でティア1(伝統的強豪)に挑むことが避けるようにしました」

 決勝トーナメント進出に向け重要なプール最終戦では、日本代表へさらに追い風が吹く。前節からこのゲームへの間隔は、日本代表の中8日に対してスコットランド代表は中3日なのだから。イングランド大会で唯一敗れたスコットランド代表に対する思いを聞かれ、リーチはこう答える。

「個人的にリベンジしたい気持ちはありますけど、まずは(その前の)最初の3試合にベストを尽くさなきゃいけないです」

かたやジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、「それぞれ準備万端な状態で来ます。どの試合も楽にはならない」と油断禁物の構え。むしろ今回は日程などで不利な条件が少なく、不運な結果となったら言い訳ができないとも取れる。

 ジョセフ体制2季目に突入した現日本代表は、それまで各選手に一任していた肉体強化をチーム主導で取り組むよう転換を図る。加えて、スーパーラグビー(国際リーグ)のハリケーンズで実績を挙げたジョン・プラムツリーを新ディフェンスコーチに招へい。6月の対アイルランド代表2連戦で計85失点という防御の修繕を、システム改革によって解消しにかかる。

 11月はテストマッチツアーを消化すると、来年1月からは日本代表とリンクするサンウルブズがスーパーラグビー3シーズン目へ参加。今度のサンウルブズではプラムツリーは契約上不在も、ジョセフ自らが初めて代表と兼任で指揮することとなった。手探りの雰囲気をにじませながら、緊張感も強めている。7

「開催地だから」と思っていたら…

 さらに本番に向けて問われるのは、大会前の準備環境を整えることだろう。このほど、予選プールの試合会場がすべて関東、東海地区に固まった。開幕前、および大会期間中の合宿地を首尾よく決められれば、移動などでのストレスを最小限に止められそう。このあたりの手はずが勝敗を左右しうるのは、世界最大級のスポーツイベントでは当然の流れだろう。

 直前期や開幕後の常駐先について、薫田真広・強化委員長は「ワールドラグビーが出すレギュレーションに則って準備したい」と慎重に話す。ジョセフは「まだそこまで具体的なことは決まっていません」とし、こう続ける。

「色々なシナリオを想定し、構想を練っていました。ひとつ言えるのは、移動を避けたいとは思っていた。そのうえでどこをベースにすれば一番いい準備をさせてあげられるのか(を考えたい)。移動が多いと悪影響を及ぼすからです。きょう開催地が決まったので、これからプランニングをしっかり練りたいと思います」

 振り返れば、イングランド大会時の日本代表でタクトを振るったエディー・ジョーンズは、中3日という本番の日程を4年前から認識。毎年秋の遠征では、週末のテストマッチとテストマッチの間にハイレベルな試合を組むなどしていた。自身3大会目となるワールドカップに向け、先手、先手を打つ印象だった。

 そして今年9月、そのジョーンズが現在率いるイングランド代表のスタッフを引き連れ来日。目的は、ワールドカップイヤーに自軍の管理下でおこなう事前キャンプ地の候補施設のチェックなど、としていた。

 大会期間中の公認キャンプ地の視察時期にはそれこそ「レギュレーション」に近い取り決めがあり、各チームの1回目の実地視察期間は2017年12月から翌3月までの間となっている。しかしイングランド代表陣営の9月のリサーチは、結果として実地視察期間前のよき下準備になったのは想像に難くない。

 ちょうどそのタイミングで、ジョーンズ体制の日本代表でスタッフだった1人がこう話していた。

「エディーはきっと、ワールドカップの試合会場がどこだったらどこで練習する…といったシミュレーションをしながら見回っていると思う。もし、日本代表が『開催国だから好きなところで練習できる』と思っていたら、好きなところをすべてエディーに取られるだろう」

 付け加えるなら、世界ランク1位のニュージーランド代表、現在来日中のオーストラリア代表が似た考えを持っていても責められない。

 もちろん、「プレッシャーをプレジャーに変えていきたい」とするジョセフも国際情勢には敏感なはず。かねてイメージしていたという「色々なシナリオ」には期待がかかるばかりだ。改めて、言い訳不問の一大イベント開幕は刻一刻と迫る。11月4日のオーストラリア代表戦(神奈川・日産スタジアム)の内容と同時に、これから明らかになるであろう本番への最終準備計画にも、注目が集まる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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