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早稲田大学ラグビー部、シーズン中に菅平合宿? 山下大悟監督が背景語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
毎年11月23日にある早慶戦時は、スタンドにOBらが集う。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 大学選手権では歴代最多の優勝15回を誇る早稲田大学ラグビー部は、9月、シーズン中に今季2度目となる長野・菅平高原での合宿をおこなった。10月14日、東京・秩父宮ラグビー場での筑波大学戦(33―10で勝利)後、就任2年目の山下大悟監督がその背景を語った。

 2008年度を最後に大学日本一から遠ざかっている同大は、昨季、2002年度にキャプテンとして王座についた山下監督を招へい。その前年からスポーツ推薦制度を拡張し、パートナー企業の協力を得て主力級の住む寮の食事環境を改善。「チームディフェンス」「ブレイクダウン(接点)」「スクラム」に強化の焦点を絞ってきた。

 今季は春の公式戦や練習試合で苦戦が続いているが、山下監督は選手たちの「ブレイクスルー」に期待している。

 この日は筑波大学を相手に、スクラムなどのセットプレー(プレーの起点)で苦戦。ボールを左右に振る攻撃を機能させ要所で加点も、課題を残していた。

 以下、公式会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「今日のゲームは筑波さん云々というより、自分たちの8月以降の強化の直線を止めないために、自分たちからテンポを作り出して、自分に勝っていこう、と臨みましたが、まぁ、30点ぐらいですね。今年初めての秩父宮ということもありましたし、GPSの数値とかを観ても全然、出ていないですし、まぁまぁいいプレーも多々ありましたが、自分に勝つという点では30点ぐらいでしたかね」

――昨季新人ながらレギュラーとなったスクラムハーフの斎藤直人選手、スタンドオフの岸岡智樹選手への評価は。

「直人は選択ミスも少しありましたけど、やっぱりチームの危ないところを救ったりと、非常に良かった。及第点です。岸岡は、アンダープレッシャーでのプレーが少し…。プレーの選択も遅いし、アンダープレッシャーでしっかりしたプレーができないと、次の帝京大学さんを相手には厳しいというところ。

 後半、中盤あたりのラインアウト。スクラムハーフからのハイパントを選択しました。

 前半のラインアウトの出来(綿密な分析を施してきた相手に圧力をかけられた)だと、ラインアウトの少ない試合にしたかった。ただ、キックの蹴り合いをすると、最後はラインアウトになるケースが多い。だからボールを持ってアタックしたかった。そこで、スクラムハーフのハイパントのサインを出したのは岸岡なので…。こちらの落とし込み不足でもありますが、ひとつひとつのプレー選択をレビューし、次に繋げたいです」

――攻防のシステムは概ね意図した通りに運用できたと思いますが、今後どういった積み上げが必要でしょうか。

「概ね、という感じは、セットピースで球が出た時、ですよね。そこでボールが出た時はいいアタックができましたけど、あれだけスクラム、ラインアウトで苦戦すると、その回数が減りますよね。そのおおもとが、課題。(攻撃は)2~3回、判断ミスがありましたけど、それ以外の場面はよかった。もっと磨いて、立ち止まらないでいきたいです。

 ディフェンスは、以前の日本体育大学戦、青山学院大学戦(それぞれ20、24失点)より、スペースを埋めるというシステムに則りできた。あとは(球)際のところ、フィニッシュの(攻守逆転を狙う)場面で少しハイタックルがあったのは反省ですが、まぁよかったかなと」

――シーズン中の9月、菅平での合宿をおこなっていました。

「もともとアタックを9月からやると言っていました。それまではアンストラクチャーを強化して、菅平(夏の合宿の際)も去年のアタックを変えずに来ました。9月から『こういうアタックをやりたい』というのがやり始めました。また、20歳以下日本代表の活動(岸岡、フルバックの古賀由教)に行っていた選手をチームに当て込むという目標もあって、合宿をおこないました」

――合宿という形式でやるのがベターだったのですね。

「集中した環境でできますし、その時期は授業もない。違うところへ行って、ラグビー漬けというのがチームとしてはいいのかなと、エディージャパンも、合宿、多かったですよね(エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ時代の日本代表は、長期キャンプ敢行で知られる)」

――古賀選手は、本来のウイングではなくフルバックに入っています。

「チーム事情もあって、いまはフルバックです。彼にはボールタッチを多くして欲しい。それはサインプレーの設計から(そうなるように)考えていますが、ボールが動き出してからのプレーでももっとボールを触って欲しい。ディフェンスがよかった。抜かれない。チームのために身体を張ってくれる。

 1年生では下川甲嗣(ナンバーエイト)、久保優(右プロップ)もそういう選手。非常に信頼しています。下川は責任感のあるプレーをしています。後半のディフェンスのきついところも、一番出てくるのは下川。ボールキャリー数も相当、多いと思うんです。プレーの質も高い。古賀も、レッグドライブがよくできていて、その1歩、2歩が次の球出しに影響します。ディフェンスでも声のかけ方、危ないと思った時の上がり方がいい。久保は、これからまだまだスクラムを勉強しなきゃいけないですが、そこは伊藤コーチに聞いてください」

 左プロップに入った鶴川達彦は試合後、組み合うタイミングや角度に変化を突けてくる相手に対応しきれなかったことを反省。最前列全体で、様々な相手への対策の引き出しを増やしたいとした。

 チームの出来を「30点」とした山下監督は、試合中のさらなるハードワークを期待。10月28日には秩父宮で、大学選手権8連覇中の帝京大学と対峙。夏場は0-82で大敗しているが、当日までに彼我の実力差をどこまで詰められるか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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