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「本当は煕を使いたい」のサントリー・沢木敬介監督、5勝目の「勉強」とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨季以上に若手を積極起用。(写真:築田 純/アフロスポーツ)

 昨季の日本最高峰トップリーグで王者となったサントリーは、今季も開幕5連勝中だ。

 9月23日には埼玉・熊谷陸上競技場で、クボタを54―17で撃破。もっとも、ともに就任2年目の沢木敬介監督、流大キャプテンは満足していない。

 序盤はミスや反則を契機に0―10とリードを許し、2本連続のノーホイッスルトライで逆転後も攻撃時のプレー選択などに課題を残したという。

 事実、クボタのダブルタックルなどでしばし接点での停滞を強いられ、その流れを受けて大外へパスを振ったら、十分に人数を揃えた防御網の餌食になったか。

 勝って反省を重ねるチャンピオンの言葉が、観戦者がゲームを振り返る意欲をより喚起しそうだ。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「最終的に勝ち点5点を取れたのは良かったです。ただ最初の10分と最後の終わり方には課題が残ります。これがパナソニック(一昨季まで3連覇)に通じるのか。それは、最後の円陣でも皆に話しました。また来週から、やっていきます」

沢木監督

「はい、皆さんお疲れさまでした。今度、ジョージ(・スミス)とヘンディー(ツイ ヘンドリック)がキック蹴ったら罰金制度にします(不用意なキックでボールを失ったためか。一同、笑う)。悪いスタートのなかでも、流れを変える松島(幸太朗、フルバック。10点ビハインドを背負ってのチーム初トライのきっかけはこの人のカウンターアタック)のプレーなど、いい部分もあった。大事なのは、自分たちのスタンダード。ラグビーの質にこだわってやっていきたいです」

――インサイドセンターだったマット・ギタウがスタンドオフに入りました。正スタンドオフの小野晃征選手のコンディションとの兼ね合いでしょうが、起用の意図は。

沢木監督

「本当はね、(田村)煕を使いたいんですよ(一同、笑い)。本当にすごくよくなってきていて使いたいんですけど、事情がありまして。ただ、ギッツの10番(スタンドオフ)というオプションも大事。晃征がこれからジャパンに行って何かがあっても…と。いまはいろんなフォーメーション、コンビネーションを試していきたい」

 東芝から移籍したばかりの田村煕は、移籍元からのリリースレターを受け取れない場合は1年間公式戦に出られないという規定のため、今季サントリーでのプレーが叶わない。ガイドラインそのものの見直しが検討されているなか、当事者に近い立場の指揮官があえて話題に挙げた格好だ。選手起用については、攻撃の起点となるスクラムハーフへも話が及んだ。

――スクラムハーフでは流キャプテンがベンチスタート。日和佐篤選手が先発しました。

沢木監督

「毎回、言っているんですけど、うちのラグビーでは流、日和佐にそれぞれの役割がある。きょうはその役割が、戦術的に前半と後半で逆だったということです。相手に対してそうじゃなきゃいけないこともある。日和佐のゲームタイムも、リーグ戦を考えてしっかりと作らないといけないし、逆に流のゲームタイムもコントロールさせないといけない。

 きょうの(序盤の)戦術はポゼッションのコントロールというところ。それをするには、しっかりとしたスキルが必要なんですけど、ま、きょうのゲームの質、スキルの質は、僕たちの目指しているスタンダードではなかったですね」

――それでも大量得点を演出した日和佐選手の球さばきについては。

沢木監督

「そうですね。想定内です」

 日本代表としてワールドカップに2大会出場の日和佐は、テンポの良いパス裁きに定評がある。かたや流はラン、キックを交えながらの試合運びで評価を集める。

「春から何通りかやっている自分たちの戦術のひとつ」というエリアを問わぬランプレーの選択には、日和佐の先発がベストだと沢木監督は感じたのだろう。質疑は、スコアを奪うに奪えなかったいくつかのシーンについて展開される。

――連続攻撃を重ねても点数が取れない時間帯もありました。どうご覧になっていましたか。

沢木監督

「チームとしての意思統一が明確になっていなかったところがある。そこが今日の勉強です。いい勉強をさせていただきました。(今後積み上げるべきは)何のプレーを選択すべきかの判断の早さ、それを実行するための遂行力、周りの選手との意思統一…。そういったところだと思います」

 肉弾戦で停滞させられるよりも早く、「何のプレーを選択すべきか」を判断したいところか。最後は、今後の指針について話す。

――10月21日にあるパナソニック(一昨季まで3連覇)戦を見据え、中長期的に考えている準備内容ことはありますか。

沢木監督

「次からドコモ、サニックス、トヨタ、パナと試合をするんですが、まずは目の前の試合をやりながらレベルアップしていくというプランを組んでいます」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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