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早稲田大学・岸岡智樹、複数ポジション任された20歳以下日本代表で何得たか?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
早稲田大学では背番号10をつけ、持ち前の視野の広さを活かす。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ラグビーの20歳以下(U20)日本代表が、8月下旬からウルグアイでおこなわれてきた国際大会、「ワールドラグビーU20トロフィー 2017」を制した。

 現地時間9月10日、モンテビデオのエスタディオ・チャルーアで優勝決定戦があり、U20日本代表はU20ポルトガル代表を14-3で下し、3年ぶり2回目の優勝を遂げた。来年は、世界トップ12か国が集う「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」に昇格する。

 今度のU20日本代表では、大会前に活躍の期待された選手が相次ぎ故障離脱。そんななか複数のポジションをこなすこととなったのが、大阪・東海大仰星高校出身で早稲田大学2年の岸岡智樹だ。

 所属先では司令塔のスタンドオフとしてルーキーイヤーからレギュラーに定着も、同じポジションには高校時代の同級生で東海大学2年の眞野泰地キャプテンが屹立していた。

 そんななか岸岡は、大会直前から故障者が重なった最後尾のフルバックをカバー。本番に突入すると、予選プールでのU20チリ代表戦、カナダ代表戦でインサイドセンターに入った。そのポジションで追加の離脱者が出たためだ。

 今回の緊急事態への対処を、今後にどう繋げてゆくか。帰国直後に明かした。

 以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――チームは大会前から、相次ぐ故障者に見舞われていました。U20ポルトガル代表との決勝戦では、眞野選手も離脱。岸岡選手は最後の最後にスタンドオフを務めた格好です。

「眞野がいなくなる前には、本郷泰司(インサイドセンター、帝京大学)がいなくなり、齋藤直人(スクラムハーフ、早稲田大学)がいなくなり…と。僕も、大会前のU20ウルグアイ代表との練習試合ではフルバックに入ったんですが、大会後はインサイドセンターに入るなど、ポジションを転々としていました。そこで出した僕の強みは、全面的にコンタクトへ行くよりも広い視野を使う、ということでした。ポジションごとにやることは違いましたが、どのポジションに入っても自分の活かせるものを活かしていこうという感じでした。15番(フルバック)も12番(インサイドセンター)も、スタンドオフの位置よりも相手と離れている。(防御の)裏の状況を見て、その情報を内側の選手に伝える余裕もありました。表向きの司令塔とは違う立場に入るなかで、個人的なスキルアップもできたと思います。不安要素もありましたが、ぶっつけ本番でやるしかない、と。…楽しかったです」

 攻撃が重なるなかで早めにスペースを見つけ、ボールを呼び込み、正確なパスやキックを放つ。これが、岸岡の話す「個人的なスキルアップ」の詳細かもしれない。試合によって異なる立ち位置に入るなか、どの位置でも求められる汎用性の高い「スキル」を身に付けられたというわけか。

 ちなみに所属先の早稲田大学は、夏合宿中に帝京大学や東海大学に大敗するなど苦境に陥っている。帰国後間もなく主戦級となりそうな岸岡は、「試合を重ねながら…という感じで、頑張っていきたいです」。今度の体験をチームにどう還元するのだろう。

――所属先に戻って活かせそうな経験はありましたか。

「今回は混合チームで勝ちにこだわるなか、『これがテストマッチか』と思う時がありました。自分たちのやりたいことをやれない苦しい時間帯も多かった…」

――それを乗り越えて、勝った。

「チームに戻ったら、(U20日本代表以上に)皆と一緒にいられる分、細かく修正する時間が多くなります。その時間に(難局を乗り切る方法を)追及していく部分については、中心選手として頑張っていきたいと思っています」

 くしくも早稲田大学の山下大悟監督は、戦術略以前に選手個々の内なる「ブレイクスルー」を期待している。岸岡の持ち帰る無形の力は、よき化学変化を起こせるだろうか。注目される。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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