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連戦対策、マット・ギタウへの要望…。王者サントリー沢木敬介監督が決意表明。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
試合中は大声で指示。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 日本最高峰のラグビートップリーグが8月18日、各地で開幕。前年度に全勝優勝を果たしたサントリーは同日、東京・秩父宮ラグビー場でキヤノンと対戦する。就任2季目の沢木敬介監督が、さらなるバージョンアップを誓った。

 2015年のラグビーワールドカップイングランド大会時の日本代表スタッフだった沢木監督は、一昨季16チーム中9位に沈んだチームを4季ぶりの王者に復活させた。

 今季はオーストラリア代表103キャップ(国際真剣勝負への出場数)のマット・ギタウが加入するなか、持ち前の攻撃的スタイルをよりブラッシュアップさせる。本拠地である東京・サントリーグラウンドで東芝の控え主体のチームとの練習試合を61-17で制した8月8日、自身の哲学を交えつつ今季の展望を語った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合を終えて。サントリー側はベストに近いメンバーを編成していました。

「(一部の)外国人は合流してまだ1週間しか経っていないんですけど、今日の前半は良くコントロールできた。自分たちのラグビーをやるのは、当たり前の話。加えて、この相手はどう崩す、この相手にはどういうオプションを使う…というような、レベルアップしたラグビーをやっていこうと、(始動した)春からやってきました」

――今季は追われる立場。リーグ戦のレギュレーションも、全チーム総当たり制から2カンファレンスでのリーグ戦からプレーオフ進出を争う形に変わりました。

「1試合、1試合、勝ちにこだわっていく。試合をやりながら、自分たちの強みを増していけるようにしたいです。去年よりも難しくなるのは初めからわかっていたことです。新しいことをやりながら、うまくいかない時もレベルアップできるように…。もちろん、ピーキングのプランはありますよ。でも、それぞれのゲームに向けてどうかと言われたら、負けていい試合は、1個もない」

――マット・ギタウ選手、いかがですか。

「ビジョンも広いし、スキルも高い。自分たちのやろうとしているラグビーに合っている。左足で蹴られるのも武器です。相手のディフェンスのどこにスペースがあるのか、どう攻めるかの引き出しを増やすトレーニングしてきたうちのラグビーのなかで、スペースにボールを運ぶ。それに、ものすごくワークレート(仕事量)、コミュニケーション能力が高い。周りの選手がそれに引っ張られる。彼自身のパフォーマンスはもちろん、周りを引き立たせる役目も持ってやってくれています」

――ギタウ選手のワークレートとコミュニケーション能力について、詳しく教えてください。

「やっぱりね、100キャップ以上持ってる奴はサボんない。プライドがあるんです。サボってる奴は、100キャップも取れない。

 僕、ずーっと言ってるんですけど、日本人ってなかなか、動きながらコミュニケーションを取るのが苦手なんです。止まってならしゃべれるんですけど、ばーっと動きながら『こうしろ、ああしろ』というコミュニケーションが苦手なんですよ。多分。それに対して彼は、動きながらコミュニケーションができる。その辺のコミュニケーションが、自分たちのプレーの精度を上げる」

――前年度の優勝もあり、国際リーグのスーパーラグビーにチャレンジする選手が増えました。特に、日本のサンウルブズに参加した選手についてはどう体調を整えていきますか。

「(サンウルブズ組について)体調は、崩れて帰って来る。それに、トレーニングもできていないでしょうし。その辺についてはJPを呼んだりして、しっかりやっています(JPこと元日本代表ストレングス&コンディショニングコーディネーターのジョン・プライヤー氏が来日)。だいぶ、上がってきましたよね。(疲弊した)スーパーラグビー組を(国内の)ゲームで戦えるコンディションに戻すのが、呼んだ目的です。きょう見てもらったらわかる通り、皆、ある程度はイケるようになった。今日の試合の目的は、この天気(真夏の晴天)に慣れること。これを経験しないで開幕を迎えると、外国人は絶対にばてる。去年はそれで失敗もしていますから」

――シーズン中に選手を休ませることについては。

「そら、疲れてりゃ、休ませます。そういうことも含め、個人個人を見るプログラムがうちにはある。強いチームはどこも、そういうことは考えます。ただ、スーパーラグビーのクルセイダーズもライオンズ(今季の決勝を戦ったチーム)も、最後はベストメンバーを揃えるじゃないですか。強いチームって、そういうものです」

――選手たちに方向性を示す。選手に考えさせる。そのバランスは。

「もちろん、僕らがレールを敷きますよ。でも、考えさせる幅は残しておかないと意欲も湧かない。グラウンド上でディシジョンメイキング(状況判断)をするのは俺じゃなくて、選手だし。だめならだめと言いますが。

 今年のクルセイダーズも、そんな感じです。選手がどんどんディシジョンメイキングしていく仕組みだったみたいですね。(情報収集について)色々とネットワークがあるので…。僕らも去年からそういう取り組みをしているんですけど、クルセイダーズはより選手主導だったみたいです。もちろん、それはあのメンバー(ニュージーランド代表を複数擁する)だからできることで。僕らは僕らで、今年の僕らにとってのいいやり方をレベルアップさせたい」

 表情を変えずにストレートな意見を発す指揮官が、今年も眼光を光らせる。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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