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誰をどう使う? ゴールキックは? ヤマハ清宮克幸監督、五郎丸日本復帰を展望。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
絶妙なパワーバランス。(写真:築田純/アフロスポーツ)

国内トップリーグで昨季2位となったヤマハは、2008年から8シーズンプレーしていた五郎丸歩とプロ契約を締結した。

ラグビーワールドカップイングランド大会で日本代表だった31歳のフルバックを、チームにどうシンクロさせるか。就任7年目の清宮克幸監督が展望を語った。

Aパターン、 Bパターン、Cパターン

6月までフランス一部リーグのトゥーロンでプレーしていた五郎丸は、3日に合流。チームにとってもオフ明け最初のトレーニングとなったこの日、指揮官は記者団の質疑に応答した。

五郎丸とは早稲田大学でも指揮官と選手の間柄だった。2001年度から5季在任し3度の大学日本一に輝いた清宮監督は、2007年度卒の愛弟子がいたヤマハへ2011年から着任していた。なじみの深い間柄とあって、渡仏中も「LINE」で連絡を取り合っていた。

五郎丸が2016年2月にオーストラリアのレッズへ移籍する折も、清宮監督は「戻ってくる場所はある。思い切りやってこい」と語りかけていたようだ。

「試合に出なくなると、こちらから連絡できなくなって。その回数は減っていきましたが…」

五郎丸が日本に復帰したのは、試合出場を通じてパフォーマンスを向上させたいから。それについては清宮監督もほぼ同種の認識で、「試合に多く出れば出るほど、馴染んでいくだろう」と発す。8月開幕のトップリーグに向けては、7月の北海道合宿でできるだけ多くの実戦を経験させる。同時並行で、他のライバルと競わせる。

注目されるのは定位置争い。五郎丸のいるフルバックには、前年度のレギュラーでベストキッカーにも輝いたゲラード・ファンデンヒーファーがいる。「シャドー」ことファンデンヒーファーに対し、五郎丸も「いい競争が待っている」と静かにと心を燃やしていた。

今季のヤマハは、国際リーグのスーパーラグビーに多くの選手を輩出してもいる。メンバーが勢ぞろいするのは開幕直前だろう。清宮監督はそんな背景も踏まえ、今後の五郎丸らの部内競争、さらにはメンバー選考の構想について言及する。

「Aパターン、 Bパターン、Cパターンと考えています。いまは約10名が、(サンウルブズの活動や怪我などのためチーム)チームにいない。ただ、その10名が戻ってそのまま試合に出るとは限らない。わくわくしますね」

キッカー=15?

共存に向けても準備する。五郎丸合流前の練習試合から、俊足で鳴らすファンデンヒーファーをウイングの位置で起用。「ヤマハのウイングは特殊な動きをする。その経験を積ませておかないと、(本番で)オプションにならない。彼にウイングをやらせているのは、オプションになってもらうための最低限のものを身に付けてもらうため」とその背景を明かした。

「色々なポイントで競争があると思うのですが、それをどうマネジメントするかがこちらの腕の見せ所。うまく煽って、いい結果に繋がるようにやっていきたいです。シャドーも15番を渡すつもりはないだろうし、2年連続ベストキッカーも狙っていると思う。そのエネルギーをマイナスに向かわせないようにしたい」

では2人が同じグラウンドに並んだ場合、どちらがゴールキッカーを務めるのか。自らのラグビー観に基づき、こんなヒントを明かすのだった。

「ポジション的には、フルバックの選手にキッカーを任せるのが一番いいような気がしますね。ウイングは運動量を擁する。スタンドオフは司令塔で、ゴールキックの時間は他の選手とコミュニケーションを図る貴重な時間になる。フッカー(最前列中央)がラインアウト(空中戦)のボールをスローイングするように、フルバックがキックを蹴るのが一番いい形になる」

ヤマハでは、試合ごとの先発フルバックがゴールキックを蹴ることになりそうだ。

「そうですね…はい」

前年度はサントリーとの全勝対決を落とし、トップリーグ初制覇を逃している。悲願の優勝に向け、五郎丸に「ゴローが帰ってきてヤマハが優勝したというシナリオが描ければ、美しい」と話す。

「去年はあと1勝すれば優勝というところで勝てなくて。やはり何かが足りないから勝てなかったわけで、あいつがその何かを持ってきてくれるのかもしれなくて…。チームで伝えてくれることを期待しています。そういう選手(海外で経験を積んだ五郎丸)がひたむきなプレーをしたり、ベーシックなスキルに気を配ったりするところが、いい影響になるんじゃないかな、と、ざっくりですけど、そう思います」

明確なビジョンの提示に定評のあるボスは、付き合いの長いスターにも泥臭さを求める。花板が下準備を大切にするのを見れば、他の板前も気持ちが引き締まるからだ。記者の質問に応じる形で、恩師の弟子へのエールはこう転じた。

「日本一のチームから、ふさわしい選手が日本代表になる。そんなステップを踏めれば」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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