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声に出して読みたいリーチ マイケルの決意。「トップスタンダードを作らないと」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
円陣でも明確なベクトルを示す。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

2019年のワールドカップ日本大会で初の予選プール突破が期待される日本代表は、6月24日、東京・味の素スタジアムで若手主体のアイルランド代表と対戦。13-35で敗れた。試合後の会見では、ゲームキャプテンとなったリーチ マイケルがクリアな道筋を明かした。

静岡・エコパスタジアムでの同カードは22-50と大敗していた。24日はスコアを接近させたが、前半で勝負がついた展開は2試合とも同様。世界ランクでは相手の3位に対してこちらは11位と差があるものの、今回のアイルランド代表は全英蘭ライオンズに11名のメンバーを輩出。日本代表としては成功体験が期待されていた。

この日背番号6をつけ先発したリーチは現在28歳。札幌山の手高校、東海大学を経て2011年に東芝入り。2015年からはニュージーランドのチーフスの一員にもなり、国際リーグのスーパーラグビーでも存在感を示してきた。

日本代表としては、2015年のワールドカップイングランド大会でキャプテンを務めた。同大会で歴史的3勝を挙げてからは、心身の疲労を理由に代表から離脱した。

ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制下では、今回の6月のツアーが初めての招集となった。しかし堀江翔太キャプテンらの意向で、チームを率いるリーダーシップグループという隊列に参加。ツアー最終戦でゲームキャプテンを任された。

以下、会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合を終えて。

「きょうは応援ありがとうございます。この3試合で、課題がひとつずつ出てきました。ルーマニア代表戦(6月10日、熊本・えがお健康スタジアムで33-21と勝利)では自分たちのプランをやりきること。17日のアイルランド代表戦はその課題を治して、自分たちのプランをやり切ったつもりでした。ただ、メンタルが足りていなかった。今回の試合ではそれも修正して、スタートから最後まで皆が良く戦ったと思います。

ラグビーの原点は戦うこと。フィジカリティ、ブレイクダウン(ボール争奪局面)のところで、よくできたと思います。世界トップ3のチームとの差は、今回しっかり学べたと思います。感じたのは、トップ3のメンタルのタフさ。いままでのチーム(過去の日本代表が破った強豪チームのことか)は、50分でギブアップする。ただアイルランド代表は、最後の最後までこの暑さによく耐えた。

自分たちは、ファイトする部分に関しては戦う気持ちはよくできていて。戦術面をもう少し磨けばいい戦いができると思います。若い選手がたくさん出てきていて、小倉順平、庭井祐輔と、それぞれいいリーダーシップ発揮できた(いずれもこの日先発)。2019年に向けて課題を少しずつ直しながら、頑張っていきたいと思います。皆さんの力が必要です。これからも日本のラグビーを盛り上げていきましょう」

――2015年に代表引退をしていた36歳のロック、トンプソン ルーク選手はチーム最多の24本のタックルを放っています。

「ルークはすべてを出し切りプレーしてくれる。日本出身ではないけど、日本代表のジャージィにすべてをささげる文化を残してくれた。代表に復帰してこのようなパフォーマンスをしてくれたのは、素晴らしいです。ジェイミーにとっては、これからのセレクションが難しくなると思います」

――「戦術面をもう少し磨けば」と言うお話を具体的にお願いします。

「やろうとしていることは間違っていない。ただ、ゲームの中でどういうオプションを使うか(の判断力)が足りていない。きょうは若い選手が多く、ゲームアンダステンディングを高めないといけない。チームがどういう状況で、どういうプレーが必要か。そこはもっと理解しないといけない。ただ、それは経験すれば、もっと良くなると思っています」

今回の日本代表では、堀江翔太と立川理道が共同キャプテンを務めた。しかし17日の試合後、堀江はジョセフヘッドコーチにある相談をしたという。

「リーチがキャプテンをやる方がうまいこと回っている、と」

11月に予定されるツアーでは、リーチがキャプテンになる可能性もありそうだ。その意向を知ってか知らずか、本人は会見でこう断じていた。

「変えないといけないのは、1人ひとりのメンタリティー、スタンダード。これが一番、変えられる部分です。(片手を胸元に出して)いまのスタンダードがこのぐらい。(その片手を肩あたりまで引き上げ)きょう感じたスタンダードとの差を、どう埋めていくか。これは、1人ひとりが変えなくてはいけない。

僕が選手に言ったのは、『これから1人ひとりが違うところへ行きます。ただ、いままでやってきたことにプラス5パーセント上げないといけない。1人ひとりがスタンダードを上げれば、チームのスタンダードを上げられる』ということ。ジェミーに頼るんじゃなく、他の人に頼るんじゃなく、1人ひとりが責任を持って準備しないといけない。トップスタンダードにならないといけない。ただ、トップスタンダードは何か。それがわからない。では、トップスタンダードを作らないといけない。きょうはいいテストができたと思っています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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