Yahoo!ニュース

トンガ代表側の調査も? 「元」日本代表候補、ホセア・サウマキのいま【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
スペースを豪快にぶっちぎる。規律ある組織で力を最大化できるか。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

元日本代表ヘッドコーチでいまはイングランド代表を率いるエディー・ジョーンズは、2015年、「いまは世界中のチームがフィジー人のウイングを探している」と話した。

防御組織が発達する現代ラグビーにあっては、中央突破は難化の一途を辿る。そこで重宝されるのが、脚力のある大型ウイング。彼らは持ち前のサイズや身体能力を活かし、タッチライン際でのハイボール確保や1対1を制圧する。ジョーンズの「フィジー人のウイングを…」という発言は、かようなトレンドを受けてのものだろう。

いまの日本ラグビー界でその隊列に加わりそうな若手の1人に、ホセア・サウマキがいる。今季、大東文化大学からキヤノンへ加わった25歳だ。

フィジーと同じ環太平洋のトンガから来日し、大学ラグビー界で躍動。公式サイズを「身長187センチ、体重100キロ」とし、強烈なハンドオフ(タックラーを掌で抑え込むプレー)で魅す。

大東文化大学在学中はキヤノン以外のクラブへの加入もささやかれるなか、サンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦)入りも期待された。本人も「(卒業後に)チャンスがある」と話したほどだ。2016年6月には、日本代表候補スコッドにも名を連ねていた。しかし、メンバー発表後に規定上プレーできないことが発覚していた。

6月3日、東京・キヤノンスポーツパーク。キヤノンのルーキーとしてサントリーとの練習試合に先発(21-35と敗戦)。単独取材に応じ、トンガ代表側からの調査も受けているといういまの状況について語った。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――新しいチームでのプレーはいかがですか。

「これからもっと雰囲気が良くなる。僕はまだ今年入ったばかりで、皆にはまだ僕の強みはわかってもらえていない。でも、いつも練習で自分のプレースタイルを伝えたりしている。例えば、スペースがあれば早めにボールをもらう…とか。そのプレーをやればトライも生まれる」

――相手のタックルの強度は。

「大学とトップリーグでは、レベルは違うね。でも、それはわかっていた。自分のプレースタイルには変わり(影響)はないです」

――アジリティーを重視して、体重を落としています。

「結構、ダウンしました。大学の時は試合の時で106~7キロくらい。いまは103キロ。ターゲットは、100くらいに…」

コントロールできない事象に、出くわしていた。

薫田真広強化委員長に「将来、必要な選手」と見なされ、2016年5月に初めて日本代表候補に名を連ねる。ところが、メンバーの絞り込みがなされる前に、規定上すぐの代表入りが叶わないことが発覚した。

19歳だった2012年10月に、7人制トンガ代表としてセブンズワールドシリーズに出場していたのがその理由だ。他国の7人制、15人制代表でプレーしたことのある選手が日本代表になるには、多くのハードルが課される(国籍取得後、7人制の世界大会に3シリーズ以上出場)。サウマキの代表歴は、各大学ラグビー部の関係者の間でも周知の事実だった。

事実が発覚した当時、日本協会は「サウマキ選手が2012年にトンガ代表としてセブンズワールドシリーズに出場していたことは認識していますが、日本代表に必要な選手であることに変わりはありません。現在、日本代表でプレーできるかどうかを各所に最終確認しております」というコメントを発表。以後、進展は聞かれていない。

本人は続ける。

――日本代表入りへの思いは。

「チャンスがあれば、頑張ります。まずはキヤノンでベストパフォーマンスを出して、スーパーラグビーでのチャンスがあればそこでも結果を出す。2019年までに帰化することができれば…頑張ります」

――トンガ代表入りへの選択肢は。

「(先方からの)そういう話には、『チャンスがあれば日本代表に』と言っています。ただ、もし間に合わなかったら…とも」

――然るべきタイミングで日本代表になれないと感じたら、トンガ代表にチャレンジする可能性もある、と。

「そうですね。ここには弟もいる(キヤノンには昨季から実弟のアマナキ・サウマキが加入)。まだ、(日本代表にチャレンジするチャンスは)大丈夫だと思います!」

現在は選手層拡大に注力するジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、今秋を境にメンバーの絞り込みに着手すると表明している。帰化申請の受理や7人制大会の出場はその間に済ませられない可能性が高く、条件をクリアさせても既存選手との定位置争いは避けられない。サウマキが2019年のワールドカップ日本大会に開催国代表として出ることは、タフな挑戦と受け止められなくもない。

ただ、ワールドカップは4年に1度やって来る。さらに2020年以降は代表資格を得るための連続居住が36か月から60か月に伸びる。2023年大会に向けた競争の活発には、すでに来日済みの海外勢も欠かせない。

トンガ代表は現状、2019年の日本大会への出場権を目指している。オセアニア地区予選で3位に回り、ヨーロッパ勢とのプレーオフを勝ち抜けば、予選プールで日本代表と同組になる。一時は「日本代表に必要な選手」と評されたトンガ人戦士の母国への「流出」を良しとするか否か。日本ラグビー界の決断に注目される。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事