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日本代表とサンウルブズで堀江翔太が示したいものとは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ランニングスキルも逸品。(写真:アフロ)

若手中心のラグビー日本代表は5月6日、東京・秩父宮ラグビー場で香港代表とのアジア・ラグビーチャンピオンシップ(ARC)第3戦目に挑む。

心身の回復に努めていた堀江翔太はこの日、実戦復帰。控えのフッカーとして出番を伺う。

昨秋のツアーでキャプテンを務めた堀江は、2013、14年度にレベルズの一員としてスーパーラグビーに挑戦するなど豊富な国際経験を誇る。サンウルブズでは創設初年度だった昨季、キャプテンを全う。2季連続での加入となった今季は、離脱する第2節まで先発でプレーしてきた。

日本代表は6月、ベストメンバーを組んでルーマニア代表、アイルランド代表とぶつかる。幅広い候補選手を競わせるいまのチームにあって、どんなプラスアルファをもたらしたいと考えるか。31歳の堀江は意気込みを明かした。

以下、共同取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――今週の合宿から代表チームに合流。4月は元日本代表トレーナーの佐藤義人氏のもとでトレーニングをしていましたね。

「6月に向けていいコンディションでできるように…と(ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチと)話をして。3月にシンガポール(サンウルブズの遠征先)から帰ってきてからは、しばらく(体力が)落ちない程度に自分でトレーニング。ただ、ボールは触っていないです。ラグビーから離れていましたね。(佐藤氏との)トレーニングを始めたのは4月1日です」

――現在1勝8敗のサンウルブズについて。

「初めてのメンバーもいるし、固定のメンバーでやっていない部分もあって難しいところはある。ただ、勝とうが負けようが得られる部分は絶対にある」

――日本代表について。改めて、エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ下と比べてどう変化したか。

「同じようなラグビーをしていないので、比較はできないです。同じようなラグビーをしていればここがこう、あそこがこう、と言えるんですけど…」

しばし取材現場で飛ぶ質問に、堀江は至極まっとうな返事をした。

ジョーンズは、一定方向に選手が次々と沸き上がる攻めを提唱する。

パスの起点の周りに数名のランナーが待ち構える「シェイプ」という戦術を採用。狭い区画で防御をかく乱し続け、最終的に数的優位を作るのが主目的とされた。

かたやジョセフは、キックやパスを効率的に使う攻めを重視する。

グラウンドの中央、両端などにユニットを作る「ポッド」という戦術にのっとり、大きく攻められそう、または確実に陣地を獲得できそうな区画へボールを通してゆく。

堀江は続ける。

「前のラグビーではフィジカルのすべてを上げて走り勝つというもの。いまのラグビーは、どれだけスマートにやるかというもの。いまは出されたもの(戦術や練習)をやり切るのも大切ですが、それに加えて選手がどう考えていくかです。考えなければ強くならないチームなので。今回は若い選手がミーティングでしゃべったりすることはあって、いい傾向かな、と思います。

相手がいるなかでどれくらいできるかが、スキル(の有無)だと思う。ただ、まだ一緒にやっていて、その(適切な)レベルまで達していない選手もいます。タイトファイブ(プロップ、フッカー、ロックの前列5選手)はもっと運動量を上げな…というところかなと」

――「運動量」。前体制下ではフィットネス(持久力)が強みでしたが、いまはフィットネスが課題と目されています。

「フィットネスもそうですけど、(「運動量」を上げるうえで気にすべきは)意識の問題です。『そこ(流れのなかでつくべきポジション)』に行かなあかん、という時に、『そこ』に行くこと自体がわかっていないから動けない、ということで。こうなった瞬間にはコミュニケーションを取って周りを観なあかん、とかがわかっていないので。考えて…というところですね」

――猛練習の必要性は。

「いや…。自分の仕事、役割をやれたかどうかに対しては、JJ(ジョセフヘッドコーチの愛称)はエディーさん以上に厳しい。僕も、まず自分の仕事を徹底しようという話はしました。エディーさんの時は、皆で動いてカバーして…という感じですが」

――各ポジションに課される仕事の数は、増えているのですか。

「僕らがベースとなる仕事ができるようになれば、(各職務のレベルは)進化していける」

――攻撃中のフッカーのポジショニングや役割も明確化されている。両15メートル線以内でのハードワークを、と。

「決まっています。いまでもやりながら、ついつい(チームのルール上は)あかんところへ行ってしまうこともあるんですが」

――改めて、自分がこのチームにもたらしたいものは何ですか。

「経験とコミュニケーションというところ。身体能力と言うよりは、コミュニケーション、考えという部分では、色んな選手と話して教えていきたいです」

ボスの意向を正しく踏まえ、その意向をよりブラッシュアップすべく選手の理解度やハードワークを求めてゆく。シニアプレーヤーの役割は大きい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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