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日本代表・流大キャプテン、「80-10」にも引き締めを強調。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
パスの供給源として機能。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

ラグビー日本代表は4月29日、東京・秩父宮ラグビー場でアジア・ラグビーチャンピオンシップ(ARC)の第2戦目に挑み、韓国代表に80―10と大勝。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチと流大キャプテンが会見で試合を振り返った。

韓国・仁川の南洞アジアードスタジアムでの初戦では、韓国代表に47―29と勝ったものの7割台だったタックル成功率を問題視。韓国代表との再戦になる第2戦に向け、防御に焦点を絞ってトレーニングを重ねてきた。

その甲斐あってか、この日の守備には指揮官はご満悦。もっとも流は、買って兜の緒を締めるといった趣だった。

24歳の流は昨季、サントリーで入社2年目ながらキャプテンを任され国内タイトルを完全制覇した(トップリーグ、日本選手権)。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチにも次世代のリーダー候補として期待され、22日の試合では代表デビュー戦ながらキャプテンを任されていた。身長165センチ、体重74キロ。スクラムハーフとして、判断の正確性と防御の背後を裂くキックを持ち味とする。

以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ジョセフ

「前回からここまで改善して、チームを褒め称えたいと思います。非常にコーチングのしがいのあるチームで、前回の試合を振り返り、責任を持ち、ハードトレーニングをした結果です。それがどういう内容になったかと言うと、ディフェンスが機能して失2トライに抑えました。80点取れましたが、もっとトライが取れたシーンもある。ボールキープできなかった。自分で無理にトライを取りに行ったゆえです。そこが、次への課題だと思います。韓国代表には敬意を示したい。大差になってもファイトの気持ちを忘れずにいてくれた。経験値は少ないチームですが、終盤まで諦めず…。感銘を受けた」

「ジェイミーが言うように、韓国代表が最後まで戦ってくれたことに敬意を表したいです。こちらのチームとしては前回のパフォーマンスが良くなかったなか、全体的に態度のところを改善できてよかった。ただ、トライを取られたシーンでは集中力が切れていて、アタックでもボールの動かし方を改善しなければならないところもある。もっと成長したところを、5月6日(秩父宮で香港代表とのARC第3戦がある)には見せられると思います」

――ディフェンスよくなった点。

ジョセフ

「先週の課題は1対1のタックルとボールを持っていない時の動き。そこを改善しました。タックルでは、テクニックの問題が生じていたのが確かですが、最も足りていなかったのはチーム全体の態度。選手は今週、そこを改善すべく、取り組んでくれた。成長するには、このままの姿勢で取り組み続けなければいけない」

――山沢

ジョセフ

「メディアの方たちからの山沢への期待度は、非常に高いと感じています。確かに彼は、高いポテンシャルを見せている。きょうはファーストキャップというところで、トライを取りに行きた過ぎたところがあって(ボールを持ち込んで落球したシーンがあった)、学ぶべきはまずチームファーストというところ。ただ、スピード、スキルは素晴らしい。ビッグゲームに勝つには特殊能力が必要ですが、彼はそれを持ち合わせている。修正すべき点を修正すれば、より良い選手になる」

――最年長の山田章仁について。

ジョセフ

「いい選手です。ウイングはサンウルブズ勢も含めて優秀なウイングがいます。アマナキ・ロトアヘアも今大会ではウイングで使っていますし、野口竜司、尾崎晟也も成長していて、競争は激しい。ただ、テストマッチでのウイングにはスピードとXファクター、経験値が必要になると思います」

――流キャプテンへの評価。

ジョセフ

「(笑いながら)本来なら彼がいない時に話したい。本音が言えるので! …流はサントリーでもキャプテンシーを証明している。リーダーとしての行動力がある。先日も答えましたが、この先は強いリーダー人が必要で、彼はその1人になっていけると思います。そして今回は、非常に安定したプレーを見せてくれました。運動量、球のさばき、スピード…。リーダーとしてもチームを引っ張ってくれた。日本には優秀な9番がいる。田中史朗、矢富勇穀、茂野海人、内田啓介…。そのなかに流もいる。将来、有望なポジションだと思います」

――この日本代表でキャプテンをする難しさ。

「本来の所属チームが違うなか、色々な選手の癖、生活態度がまだまだ分かっていないのが難しさ。でもそれはここまで4週間の合宿で理解してきていて、これからも改善できる。僕はまだサントリー3年目で24歳。若手の部類に入るなかでキャプテンをやらせてもらっているのですが、他にいる経験豊富な選手と一緒にやっていく、という点では、サントリーでもここでも変わらないと思います。僕がリーダーとして大事にしているのは、僕がパフォーマンスを出すこと。それについては、もっと出さないといけないです」

――NDS(ナショナルデベロップメントスコッド。3月中旬から大人数での合宿を敢行)の効果は。また、今回のメンバーで、2019年にはどれくらい残って欲しいか。

ジョセフ

「NDSのプラスになったところは、広く行き渡る日本人の育成の場を設けたところ。いい選手を幅広く育成できていますし、コーチの育成もできます。我々のやろうとするゲームプランを他のチームに浸透させる、ルーティーンもできました。NDSには、20以下日本代表のコーチも参加して、サンウルブズも日本代表と同じようなプレーをしています。各コーチには様々な考えがあると思うのですが、各カテゴリー間での意思統一ができていると思います。何人残って欲しいか、との質問については、何とも言えません。いま呼んでいる選手のポテンシャルを見極め、経過を見ていきたいというところですが、2019年はまだまだ先」

――ティア1(強豪国)に勝つためには…という観点で、きょうのパフォーマンスを振り返ってください。

これはジョセフヘッドコーチへの質問だったが、流が、深く頷いた。まず、指揮官が答える。

ジョセフ

「満足することは決してありません。今日のパフォーマンスで言えるのは、先週を振り返って、猛反省して取り組んだ部分が出たというところです」

そして最後に、流に質問が回る。ちょうど聞いた指揮官の言葉を反芻し、決意を重ねる。

――冒頭、「5月6日はもっと成長を…」と話しておられましたが、具体的には。

「まず気持ちを引き締める。これだけ大勝していても、内容を突き詰めれば改善の余地はある。具体的に言うと、僕も含めてタックル成功率100パーセントじゃない。アタックでも、ゴール前で取り急いだところがあった。そこで確実なスキルと戦略を持ってやっていかないと。先ほど言われていたようなティア1との試合では、チャンスは少ないと思うので」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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