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低く、強く、何度でも。「世界のTK」こと高阪剛が日本ラグビー界復帰。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
「2019年(ワールドカップ日本大会)に向けお力添えができれば」

総合格闘家で「世界のTK」こと高(正式にはハシゴつきの高)阪剛氏が、2年ぶりに日本ラグビー界へ帰ってきた。

3月からおこなわれている、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ(HC)発案のナショナルデベロップメントスコッド(NDS)へ週に1度のペースで帯同。小柄な日本人が世界で勝つのに必要な地面の上での激しさ、強さを植え付けている。

ラグビー日本代表には、エディー・ジョーンズ前HC時代から携わってきた。相手の目の前で低い姿勢を取る「ダウンスピード」などの意識を唱え、2015年のワールドカップイングランド大会での歴史的3勝を後押しした。

3月15日は、自身にとって今回2度目のセッションを敢行。終了後は共同取材に応じ、選手の吸収力や自らのスタンスを語った。その言葉からは、ジョセフHCのち密さなプランニングも見え隠れする。

以下、一問一答の一部(編集箇所あり)。

――今回、ジョセフヘッドコーチからはどんなことを求められていますか。

「大筋のところでいうと、低い、かつ強い姿勢を保つこと、リロード(起き上がり)とアップダウン(身体の上下動)の速さについてのトレーニングをしています。基本を徹底して選手に理解してもらう。今回までの1、2回目は、導入と構築に終始しています。この先のタックルなどラグビーの動作に関しては、ジェイミーさんたちコーチの方にお渡しする。連携を保ちながらやっています。自分はジェイミーさんの考えを『繋ぎ合わせていく、構築をする』というものととらえています。自分が提供している練習やドリルが次(の練習)にどう反映されるか。そのリンクが取れないと(完成度や実行度が)緩く、粗くなる…。そうした部分に対するち密さが、ジェイミーさんの言葉から感じられるものです。ジェイミーさんの目指されているところをできるだけ理解しようという状態のなか、共感、共鳴できるものが見つかっている状態です」

――選手の様子を見て、改善したいことなどはありましたか。

「そういう意味では逆に、現段階で主要メンバーになられている選手が練習を引っ張ってくれている。『あれ?』と思っている選手がいたら、その周りの選手が『ここは、こうだよ』とサポートする。そんな状況がたくさん起こっている印象があります」

――2016年度のサンウルブズやジャパンについて印象はありますか。

「ちょっとしたことでラグビーのゲームはひっくり返る、そういう認識で観ていると…。選手15人だけでなく、自分を含めたスタッフが全く同じ認識で取り組むこと、その一つひとつの積み重ねが大事なのかな、と感じました」

――仕事の進め方などに関し、前任者とジョセフとの違いや共通点はありますか。

「ラグビー経験者ではないので、ラグビーの細かい戦術略のところでの違いはあるのかもしれません。ただ、お二方と接したなかからは、ジャパンを2019年に向けて持っていこうという熱意を感じます(その点で違いはない)」

――今季のサンウルブズは、タックルしても相手にボールを繋がれることがあります。

「そこに関しては戦略がかなりかかわって来る。自分はその前段階のところを担当させてもらっている状態です。すべてを、リンクさせる。きょうの午前中にやったこの練習を、明日にどう繋げるか…。その意思を、ジェイミーさんの言葉から感じます。ジェイミーさんとも常に『次の練習内容は何か』『その週ごとの強度の上げ方』といった話し合いをしながら進めさせていただいている」

――そのなかで、高阪コーチのセッションも変化していく。

「セットあたりの(動く)回数を増やしていきます。そしてフォワードであればもっとプレッシャーをかける、かつ低い姿勢で…。バックスに関してはスピードをもっと上げる…と。統一感のないセッションに取り組むことだけは避けたいと感じます」

――すごいと感じた選手はいましたか。

「(穏やかに笑い)特定するわけにはいかないです。自分は週に1回しか来させてもらっていないですが、選手のミーティングでの『拾う力』は高い印象です。こちらが『こういうことをしましょう』と言ったら、『チームがここを目指すから、そうなんだな』と察する能力が高い、と言いますか…」

一つひとつ、丁寧に言葉を選びながら状況を語る。NDS終了後の動向は未定だが、激しさを言語化する「世界のTK」にはジョセフHCも期待をかけている。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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