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リオ五輪日本代表の徳永祥尭、開幕先発でトップリーグ復帰。「噛みつけ」知ってた【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
7人制を通し「ハンドリングスキルが上がった」と東芝・中居智昭フォワードコーチ。(写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ)

今夏のリオ五輪の男子7人制ラグビーで4強入りした日本代表のメンバーが、8月26日から開幕する日本最高峰のトップリーグで相次ぎ出場する。

バックアップ組も含めた14人は、8月14日に帰国したばかり。プレーする人数や試合時間が異なる15人制のステージで早速の復帰を果たす1人が、徳永祥尭だ。東芝の背番号8をつけ、クボタとの開幕節に先発する。

身長185センチ、体重100キロの23歳で、関西学院大学から加入して1年目の昨季は開幕からナンバーエイトのレギュラーを獲得。密集戦での激しさで頭角を現した。

2015年12月12日に東京・秩父宮ラグビー場でパナソニックとの第5節を17―17と引き分けた6日後、当該の試合での相手選手への噛みつき行為が確認されたため6試合の出場停止処分を受けた。

トップリーグの公式戦出場はそれ以来となるが、「今季の自分のプレーを観てもらえれば」と決意した。フェアプレーを尊ばれるラグビー界でもかようなつば競り合いは珍しくないこと、相手方のパナソニックの複数の選手が「出場停止はかわいそうだ」と発言したこと、常に他者から学ぼうとする徳永自身の資質などから、件のラフプレーを問題視される向きは少なかった。

東芝の冨岡鉄平ヘッドコーチには「日本ラグビーにとって大事な選手。中心として扱っていきたい」と期待されるなか、当の本人は15人制日本代表としてのワールドカップ日本大会(2019年)への出場を目指す。

以下、試合前練習後の一問一答(一部編集箇所あり)。

――五輪、いい経験になりましたか。

「試合にはあまり出ていませんが、7人制をやったことが15人制にも活きていると思っています。(ボールを動かす)バックスの選手からしたら当たり前のことかもしれませんが、(1人が多くの役割をこなす7人制でのプレーを通して)アタックのラインを動かす、誰を引きつけて周りをどう動かす、と、いままで自分ではやってこないことをやってラグビー観を広げられた。以前はサインコール(所定のプレーを発動するための単語)を出して走り込むだけだったのですが、そのサインを上手くするためにはどうすればいいかの声も出せるようになってきました」

――きょうの練習でも、好パスをもらいやすくするよう、ボールを持った味方と自分との距離感を伝えていました。

「そうすね、意識はしました。それぞれのキャラクターを活かせるように、と。例えば、僕がウイングの位置(小柄な選手が立つ場合の多いタッチライン際)に余っているんだとしたら、味方のウイングに(相手を)引きつけてもらって、走り込めば、多少当たられても前に出られる。触れてこなかったことに、社会人2年目で気付けたのが大きいですね」

――改めて、五輪での戦いを振り返ってください。19-21で惜敗した予選プールのイギリス代表戦では、試合終盤に出番がありました。

「人生でなかなかできない経験をしました。大きな大会で緊張もしましたし、勝敗のかかったタイミングで試合に出たり…。坂井(克幸、今回のメンバーの1人で前7人制日本代表前キャプテン)からも、『リザーブが試合を決める』と言われていました。自分のやれるプレーを100パーセントやろうという気持ちでした」

――選手村では、陸上短距離のアメリカ代表、ウサイン・ボルト選手と写真撮影をしていましたね。

「五輪で一番、テンションが上がりました。でっかくて、スタイルもよくて…。自分がそう観ていたからかもしれませんけど、遠くから観ても違うな、と、すぐわかりました」

――ニュージーランド代表戦の直前、NHKの放送で徳永選手への「メダルに、噛みつけ!」という「東京都 20代 男性」の応援メッセージがあったようですが。

「あぁ、はい。友達からラインが来て…。あれ、僕の知っている先輩が送ったみたいです。応援していただけることは嬉しいです。あのことは、社会的にはどうかわかりませんが、自分は多少ならいじってもらっても大丈夫。あとは今季の自分のプレーを観てもらえればと思います」

――体調は。

「帰って来てすぐに練習に参加した時は風邪をひいてしまいました。帰国してすぐにミーティングをして、その次の日に練習。時差ボケであまり寝られていなくて、疲労がたまっていた頃でした。そこへちょうど、3~4時間のハードな練習がある日に当たってしまって! いまは大丈夫です」

――開幕スタメン。どうですか。

「驚きました。もともと(冨岡ヘッドコーチから)『開幕で使うことも考えているから』と言われていましたが、まさか本当に使ってもらえるとは。どういう点で評価してもらったのかは聞いていないですが、セブンズで学んだことを含め、自分のプレーをしたい。(この先は)15人制の日本代表を目指したいです。東芝でレギュラーを張ったら、それが見えてくると思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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