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サンウルブズ&日本代表でブレイク。茂野海人、「外へ出るのもあり」?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
勝利したジャガーズ戦(4月23日)も躍動。(写真:アフロスポーツ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から初参戦したサンウルブズが、初年度の戦いを1勝13敗1分で終えた。苦しみながら経験を積むチームにあってブレイクした1人、スクラムハーフの茂野海人が貴重なシーズンを振り返った。

現地時間7月15日夜、南アフリカはダーバンのキングスパーク。上位8強によるプレーオフ進出を目指すシャークスと打ち合いを演じたが、29―40と惜敗した。

茂野は前半13分に敵陣ゴール前左ラインアウトでの変則的なサインプレーからトライを挙げ、続く35分には相手が反則するや速攻を仕掛けてセンターのパエア ミフィポセチのトライを演出。持ち前のリズム感で、看板の攻撃を支えた。

昨季は国内所属先のNECからニュージーランドへ留学すると、オークランド代表としてITMカップ(同国の地域代表選手権)に出場。身長170センチ、体重75キロの25歳。密集脇に鋭く一歩を踏み出しながら、小さなモーションから強い回転のパスを放つ。

サンウルブズへは開幕直前に追加招集され、11試合で出番を得た。6月には日本代表入りを果たし、スコットランド代表との2連戦など3試合に出て持ち味を発揮していた。

以下、シャークス戦後の茂野の一問一答の一部(編集箇所あり。※は当方質問)。

――日本代表の時と同様、きょうも相手反則時の速攻が光りました(※)。

「相手が(反則した地点より10メートル以上)下がっていない時に仕掛けている感じです。後半19分に(速攻ではなく)ペナルティーを狙ったところは、(ゲーム主将でスタンドオフの田村)優さんと話して、点差も考えて狙っていこう、と(選んだペナルティーゴールを成功させ、22―28と迫る)」

――前半35分のミフィポセチ選手のトライ時も、連続攻撃の合間に速攻が挟まれていた(※)。

「あの時も相手が下がり切っていなかった。また、こっちが勢いに乗っている時だったので。相手の反応もそれほどよくなかったので、勢いで仕掛けて、ミフィのトライにも繋がったかなと」

――2度目の南アフリカ遠征。体調は大丈夫でしたか。前回は腹を壊す選手も続出していましたが(※)。

「マネージメントスタッフの方に改善してもらっていて、食事が全然違った。ホテルで日本食も出してもらって。海外に来ているなか、味噌汁のようなちょっとした日本食を出してもらえるだけでありがたい。堀江さんからの差し入れ(レトルトパックのカレー)もあった」

――1年間を振り返って。

「いい経験をさせてもらって本当にありがたいという気持ちと、状況判断の課題が出た(と反省)。きょうも、キックを蹴るべきじゃないところで蹴ったりもしていた。ああいうのを減らさないと、このレベルでプレーするにはまだまだダメ。そう感じました」

――得たものは。

「一番大きいのは経験値。あんだけのプレッシャーのなかでボールを捌く、いい経験をさせてもらえた」

――プレッシャー。具体的には(※)。

「今回の試合なんかはわかりやすいんですけど、キャリア(ボール保持者)へサポートが2枚入っているのに、キャリーした時にはその2枚が(相手の守備に)はがされたりとか。コンタクトでアグレッシブに来ているな、と。全体として、そう思いました」

――きょうは相手がサンウルブズのランナーを持ち上げるチョークタックルをかますなか、ボールキープできた場面もありましたが(※)。

「ボディーファイト。(ランナーは)姿勢が高くなると持ち上げられるので、低く。サポートはアーリー(素早い)サポート…。いい場面もあったけど、悪い場面もあったかなと」

――南アフリカは、全体的にチョークタックルを多用。やや似たようなチームと対戦し続けたことで、注意事項を共有できたのでは(※)。

「似たようなチームといっても、全部が違うので一概には言えないです。ただ、どこのチームもコンタクトが強い。その意味では、今回サンウルブズでプレーした日本人はいい経験を得たかなと思います」

――来年、サンウルブズでプレーをしたいですか。

「どうですかね、自分だけが希望しても、チームからオファーが来ないとプレーできないので」

――海外からオファーが来た場合は。

「そうですね、外に出るのもありかな、とは思います」

――いくつオファーが来ているのか(※)。

「それは何とも言えないです」

――来年以降、どんな積み上げが必要か(※)。

「今年は結果がついてこなかったですけど、1年目のチームを作り上げられた。これを2年目以降、継続して今後に繋げないといけない。途切れて終わると意味がないので。経験した選手、新しく入った選手、他のスーパーラグビーのチームでプレーした選手…。2年目はどんなチームになるかはわからないですけど、今年度よりいい成績を残さないといけない」

――「継続して今後に。今年度よりいい成績を」。具体的にはどんな手順を(※)。

「日本人には身体が小さいというの(現実)はあるけど、コンタクトエリアは強化してゆく。それに得意としているフェーズを重ねるラグビーで、運動量で相手を上回ってトライを取り切る…と。悪い部分は課題として成長させて、いい部分はそのまま成長させる。そうすれば、いいチームにはなるかと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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