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なぜレベルズへ? スコットランド代表は「怖い」? 松島幸太朗、出国前に独白。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
自慢のフットワークで相手をかわす。(写真:ロイター/アフロ)

松島幸太朗。昨秋のワールドカップイングランド大会で日本代表として予選プール全4試合に先発し、歴史的な3勝をもぎ取ったアウトサイドバックスである。

まもなくレベルズに合流予定だ。世界最高峰リーグであるスーパーラグビーへの、2シーズン目の挑戦を控えている。2月24日、離日する。

26日に23歳の誕生日を迎える松島は、ジンバブエ人の父を持ち、幼少期を過ごした南アフリカのプレトリアでラグビーと出会った。日本でも楕円球に触れ、桐蔭学園卒業は南アフリカのシャークス傘下にあるアカデミーへ挑戦。日本代表に初選出された2013年、サントリーへ加入し、アウトサイドセンターやウイング、フルバックとしてプレーした。

身長178センチ、体重87キロの体躯で相手をしなやかにかわし、守備でも好判断で低いタックルを放ってきた。

昨季のスーパーラグビーではワラタズへ加入。出番こそなかったが、貴重な経験を積んだと自任。今季は複数のオファーのなかからレベルズを選び、今週中の合流を目指している。

20日は都内で青山学大初等部ラグビー部を対象としたトークイベントに出席。その後、単独取材に応じている。

以下、その折の一問一答(一部)。

――最近、何をされていましたか。ハワイにも行かれていたようですが。

「メンタルリフレッシュ、ですか。でも、結果的にトレーニングしていました。(予定よりも)出発が1週間、早まったので。(レベルズ側が)来てくれ、ということでした」

――別なオーストラリアのチームからもオファーがあったと聞きますが。

「まず、スーパーラグビー自体に行くか行かないかで、迷っていました。怪我もちょくちょくしていたので、身体づくりに専念するか、引き続き経験を優先するか…というところで。コカ・コーラ戦で左ひざを痛めました(トップリーグの順位決定トーナメント1回戦、東京・秩父宮ラグビー場で52―7と勝利)。行かないのか、その別のチームにするのか、レベルズにするのか…。レベルズは若い選手も多く、上がっいる感じだった。(本拠地のメルボルンも)住みやすいところだと聞いています」

――結果、故障のリハビリに寛容なレベルズを選択。もっとも昨年には南アフリカのストマーズからのオファーもありました。

「エディーさん(ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ。昨年11月の時点ではストマーズの指揮を執る予定も、現在はイングランド代表を率いている)が去った時点で、選択は消しました。僕はもともと、エディーさんからオファーをもらっていたので。そういう人がいなくなることで、僕の扱いも変わるかと思ったので」

――とにかく、いまは復帰を目指しています。照準は、3月17日の第4節ですか。東京・秩父宮で、日本から初参戦するサンウルブズとぶつかります。

「それも視野には入れています。あとは、自分がチームにどうフィットするかです。トップリーグの最後らへんは出ていなかったので、それのフィットネスと筋力を上げたい」

――対戦相手として観る、サンウルブズの印象は。

「トゥシ・ピシ(サモア代表のスタンドオフ。松島とはサントリーでチームメイト)がいるんで、アタッキングラグビーになるんじゃないかと思います。ただ、サントリーに近い感じになるのか…それともハルさん(立川理道、日本代表でスタンドオフやセンターを務める)がコントロールするのか…という感じです」

――要は、この2人のどちらが仕切るかで攻撃の内容は変わる、と観ているのですね。

「何というか…お互いが頑固にならず、ちゃんとコミュニケーションが取れていれば…僕らとしてはやっかいなチームになりそうですね」

――サンウルブズ。名称決定前の8月には、発足自体が危ぶまれていました。

「正直、できるのかと思っていました。開幕まで半年くらいの時期で、全然まとまっていなかったので、イメージは沸かなかったです。選手主体のチームになるかな、と思います。キャプテンの堀江さん(翔太、日本代表での副キャプテン)のリーダーシップで大分、変わってくると思います。堀江さんはやっぱり、チームを作れる人です。代表でも、選手同士が言い合っているなかでも、最終的な解決策を出す。『あ、そうよだな』と思えるような意見を。チームが1つになれるような状況を作ってくれます」

――かたや、ご自身の目標は試合出場ですね。首脳陣の信頼を勝ち取るには、何が必要でしょうか。

「一番はコミュニケーション。公私ともにコミュニケーションを取って、グラウンドで自分のプレーを出していく。ワラタズにいる間も、コミュニケーションは取れていた。ただ、層が厚かった。ベンチにも国代表の選手がいて…。なかなか簡単にはいかなかったです」

――悔しさは。

「ありましたけど、代表選手の私生活を間近でも見られたので、自分にとってはプラスになったかなと。アダム・アシュリークーパー(オーストラリア代表のウイング)は、いつも相手のアタックやディフェンスの形を分析しているイメージがありました。チームのコンピューター室で、結構、見かけます。頭はいいと思います。去年は十分に経験を詰めた。ワールドカップでの経験も生かして、脇で観ているのではなく、ちゃんとグラウンドでプレーしていきたいです」

――ここからは日本代表の話題を。6月には、日本代表がスコットランド代表と戦います。

「正直、6月に関しては、怖いです。監督がいない状況なので、どうなるかわからない(ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチは秋に着任予定)。選手主体になるんじゃないですかね」

――スコットランド代表とは、昨秋のワールドカップで戦っています。9月23日、グロスターはキングスホルムスタジアムで10-42と敗れました。

「まぁ、エリアをとってもいいのかなと思いますね。あまりアタックが怖いという(印象はない)。相手のキッキングゲームに付き合うわけじゃないけど、アタックするところはアタックして、蹴るところは、蹴る…と」

――呼ばれたら…。

「呼ばれれば、行きたいなと思っています。自分の経験を出していきたいなと思います」

――秋から一緒に戦うかもしれない、新指揮官への印象は。

「結構、厳しいとは聞いています。日本代表にとっては、厳しい監督は必要なんじゃないかなと思います。選手の間でも、自分たちを甘くするのではなく、常に高い目標をもって、厳しく指摘し合った方がいい。エディーさんは全部仕切るという感じ。次もそういう人なのかと言うと、多分、違う。いままでやってきたことにジェイミーのプランを取り入れて、選手も自主性を持ってやっていきたいと思います」

――先ほどのトークイベントでは、「2019年のワールドカップ日本大会では、中心選手に」と仰っていました。

「年的にもそういう位置になっている。発言できるような選手になっていきたいと思っています。そうですね。前のイングランド大会では、全体を1歩引いて観て、自分のプレーに集中するという感じ。次の大会でも、リーダー陣になっていなければプレーに集中しますが、リーダー陣になればどんどん発言をしていきたいです」

――多くの代表選手は、「日本代表の勝利で日本ラグビー界を盛り上げる」と語ります。松島さんが本格的にそう感じるようになったのは、いつからですか。

「ワールドカップが終わった直後。すごく盛り上がっていたので。19年まで日本代表が勝ち続けてこの反響を次の大会まで続かせられれば、19年も結果を出せば…さらに変わってくると思います。次は自国での開催で、プレッシャーもかかるだろうし、気を引き締めないといけないなと思いますね。19年まではすぐというイメージがあるので、1日1日、意味のある練習をしたいと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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