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208センチのアンドリース・ベッカー、トップリーグと南アフリカラグビーを語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ご覧の迫力。来季も、肉弾戦ではこの人の働きに注目。(写真:アフロスポーツ)

日本最高峰ラグビートップリーグの最長身選手であるアンドリース・ベッカーが独占取材に応じ、今季の国内シーズンや母国の南アフリカのラグビー事情について語った。

神戸製鋼に加入3年目のベッカーは、プロレスラーのジャイアント馬場(故人)より1センチ低いだけの身長208センチで、体重は121キロという32歳。ワールドカップで過去2回の優勝を経験した南アフリカ代表で、29キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を獲得してきた。南半球最高峰のスーパーラグビーではストマーズでも2005年度から8シーズン、プレーしてきた。

日本でも、環境になじんだ2季目から本領を発揮。空中戦での強さに加え、危険地帯を察知する守備力やスピードでも存在感を示していた。

1月25日、都内での表彰式に参加。ベストフィフティーンのロック部門において2季連続で選出されていた。開会前、東芝のリチャード・カフィと談笑していた控室で、質問に答えた。話題は、自身が辞退したワールドカップイングランド大会の代表チームにも及んだ。

以下、一問一答。

――日本挑戦3年目、どうでしたか。

「個人の話に限れば、1年目のシーズン(2013年度)はあまりよくなかった。そして2年目は自分のなかでもベストな時間だった。いいパフォーマンスができた翌年は重要でしたが、正直、去年と同じほどよかったかはわからない。ただ、自分の身体が衰えることなく強くなっていたことには嬉しく思います。国に帰ってホリデーを楽しんで、もう一回、始めます」

――衰えなかった。何がよかったのですか。

「毎週、ウェイトやフィットネスなど、自分に必要なものをエキストラ(全体練習外)でおこなった。年齢が上がるほどリカバリー(トレーニング後の体調の修復)には時間がかかります。だからこそ、(試合に向けた)プロセスが大事になります」

――今季はフランカーにも挑戦。

「ずっとプロのロックとしてやっていたので、最初は慣れるのに大変でした。どういう風に動くべきかを考えて、それから動く感じ。ただ、その頃は橋本(大輝キャプテン)も一緒にプレーしていて、彼がフランカーとして200パーセントの働きをしてくれました。私は何試合か出るうちに、やっとフランカーの動きを自然とできるようになった」

――就任1年目のアリスター・クッツェーヘッドコーチは、以前、ストマーズでも指揮を執っていました。

「悪い意味ではなく、緊張感のあるコーチです。彼自身、1人ひとりのラグビー選手を成長させようという働きを常にしている印象です。言葉、ミーティングを通し、選手に自信を持たせます。ポジティブなコーチでもあり、周りをポジティブな雰囲気にします。時々、怒ります。ただ、その怒る理由は明確です。この先、2年、3年と、スプリングボクス(南アフリカ代表の愛称)に行くことなく神戸製鋼にいたら、チームはもっとよくなります」

――確かに、そういった類の噂はありますね。実現、ありえますか。

「神戸製鋼にとってはあるべきことではないですが、いまの時期が彼にとってのラストチャンスであることも間違いないと思います。彼の望む環境がすべて整えば、そういった話がある、かも、しれません」

――待望論が出るような指導者なのですね。

「それは間違いありません。そして、南アフリカではどんなことでも起こりえます」

――スーパーラグビーに参戦する日本拠点のサンウルブスは、昨夏、設立前に消滅の危機に瀕しました。南アフリカ協会のアプローチも無縁ではないとされています。

「はい。ワールドカップ(2019年の日本大会)も…でしたね。…自分はもう日本の選手です」

――2015年9月19日、南アフリカ代表はワールドカップイングランド大会で日本代表に敗れました(ブライトンコミュニティースタジアムで32-34と敗戦)。俺がいたら…とは思いませんでしたか。

「環境が整えば、あのチームに入る選択肢もありました。ただ、そうではなかったので、行かなかった」

――オファーを断った選手、少なくありませんでした。

「はい。すごく、多かったですね。自分だけではありません」

――来季以降、サンウルブスを含め、スーパーラグビーでプレーするつもりは。

「特にそのつもりはないです。確かに、自分にとってのケープタウン(ストマーズ)での日々は貴重でした。ただ105試合に出場し、満足した気持ちでストマーズを離れています。いまは神戸製鋼でのシーズンに集中しています」

――それにしても、長いひげですね。ずっと伸ばしているのですか。

「フフフフ。奥さんが気に入るかはわからないですが、新しいシーズンが始まるまではこのまま伸ばそうかなと思っています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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