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ワールドカップメンバー外の内田啓介 「ガツガツいけばよかった」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
代表の一員としてプレーする内田(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

過去4年間、ラグビー日本代表でプレーするも、9月開幕のワールドカップイングランド大会の登録メンバーから外れた内田啓介が、5日、現在の心境を語った。

筑波大学3年時から代表入りした内田は、身長179センチ、体重86キロと自身が務めるスクラムハーフにあっては大柄。距離の出るパスや密集脇をこじ開ける走りを買われ、国同士の真剣勝負であるテストマッチには12試合に出場。将来を嘱望されてきた。

8月31日に発表された登録メンバー31名からの落選は、宮崎での合宿中の26日に知った。現在はバックアップメンバーとして所属先のパナソニックの一員として待機。この日は東京・秩父宮ラグビー場で、国内最高峰トップリーグのプレシーズンリーグ第1節に先発出場していた(ホンダに39―20で勝利)。

以下、共同取材時の一問一答。

――きょうのゲームは。

「パナソニックで初めての試合。ジャパンと違うラグビーをしている分、(適応しなければならない)しんどさはあったんですけど、練習から試合へと、いい感じに入れました」

――バックアップメンバーとしての心境。

「パナに帰ってきたからと言ってオフがあるわけではないし、代表の意識で練習している。いつ呼ばれてもいいようにしています。ただ、代表チームのベストはけが人が出ずに僕が呼ばれないでいることです。個人としては(ワールドカップを)経験したい思いもあるんですけど」

――通告がなされたのは26日の朝。

「午前の練習が終わってからですね。今年1月のミニ合宿では(ワールドカップに参加する)スクラムハーフは3人という話でしたけど、5月になってからは『2人にするかもしれない』と。どちらにしても、そこ(レギュラー入り)に賭けないと、とは思っていて。最後、ウイングで試してもらった(22日、福岡・レベルファイブスタジアム。30-8で勝ったウルグアイ代表戦はウイングで出場)のも、自分がちゃんとスクラムハーフができていたらなかったこと。自分のパフォーマンスが理由であって」

――エディー・ジョーンズヘッドコーチには何と。

「『プランが変わってしまって』と。2019年(次回ワールドカップ)の話もしてもらいました。『TLに埋もれない。その意識でやれば、次はお前が9番(スクラムハーフのレギュラー)かもしれない』。自分次第やな、と。(話は)5分くらい、ですね。エディーさんには色々と聞きたいことはあったんですけど、いざ部屋へ入ると頭が真っ白になって…」

――部屋へ入る前は。 

「僕らのなかではその次の日だと思っていたんですけど、『いつ発表だろう』と、その週は気になって寝れなかったりして。26日のヘッドスタート(早朝練習)の時に『きょう発表』と言われていた。それで通訳の方からメールで『○時に来てください』と連絡が来て。…悟り、ましたね。メールが来た後には少し時間があったんですけど、その間も頭が真っ白になっちゃって」

――その時の同部屋は。

「田村(優、センター)さんです。僕は明らかに落ち込んでたんで、『まだわからないじゃん』と。ただ、田村さんは仲がいいということもあって、声かけの仕方がプラス、プラスで。周りの人と違う」

――パナソニックに帰ってから。

「その週だけは好きにしていいよ、と。ただ、公式発表前に自分が表へ出てしまうとおかしいと思って…。今週から、きょうの試合に向けて動き出しました」

――気持ちの整理は。

「発表があった後にフミさん(田中史朗・スクラムハーフ)と2人でお昼を食べさせてもらって。『まだ若いから落ち込む必要はない』と言ってもらえて前向きになれたんですけど、ふと1人になると色々と考えてしまう部分があって。公式発表までの間は、それまでの4年間を思い出した。『何であの時、ああしてこなかったんだろう』とも思いましたし」

――悔いの残る瞬間はあった。

「最後は、『そういうことがあったからいまがあるんだ』と思うようになりましたけど」

――(当方)思い出すことは。

「最初に入った頃は大学3年。遠慮した部分があった。そこでガツガツいけばよかったのに、そのことで自分の可能性を無駄にしてしまったのかな、と。それがあって、2年目は自分のやりたいことが言えた。段階を踏めた、といえば踏めた」

――(当方)ジョーンズHCについて。

「全てを見透かされている。選手との駆け引きがうまい…。色んなことが、出てきますね。エディーさんのことについては」

――(当方)いまのチームには、どうあって欲しいですか。

「勝ってほしい。いままでしんどい練習をしてきた仲間のなかの、最高のメンバーだから。本音は僕も行きたいというのもありますけど、けが人が出たらいいのにとはさすがに思えないです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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