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冨安健洋はA代表? 久保建英は五輪代表? U-24アルゼンチン戦決定も立ちはだかる壁

元川悦子スポーツジャーナリスト
U-24世代の久保、冨安、三好は3月代表活動に参加できるのか(写真提供:JFA)

26・29日にU-24アルゼンチン戦開催が発表されたが…

 新型コロナウイルス第3波が長期化し、スポーツ界は影響を受けたままだ。アスリートトラック(スポーツ入国特例)の停止が続き、Jリーグの新外国人監督・選手が入国できず、3月22~30日のインターナショナルマッチデー(IMD)に日本代表の活動実現も依然として不透明な状況に陥っている。

 そんな中、日本サッカー協会は1日、東京五輪を控えるU-24日本代表がU-24アルゼンチン代表を迎えて26・29日に東京と北九州で国際親善試合を開催することを正式発表した。

 反町康治技術委員長は「東京五輪まで半年を切っていて、試合をしたいという思惑が両国で一致した形」と語ったが、「開催のメドが立ったかと言うと、政府のみぞ知る状況」と試合成立が確定したわけではないとも説明した。つまり、あくまでアスリートトラック再開が全ての前提となるのだ。

全てはアスリートトラック再開前提

 協会としては、7日に首都圏の緊急事態宣言が解除された後、海外クラブ所属選手への招集レターを出し、14~15日頃までに入国制限が解されれば、同2連戦とA代表の2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア2次予選・モンゴル戦(30日=千葉)を実現できるというビジョンだと見られる。

 とはいえ、千葉県の森田健作知事が「7日の緊急事態宣言解除は厳しい」と発言しているのを見ると、アスリートトラック再開が後倒しになる公算は大きい。反町技術委員長は「選手集合時に間に合うプランを考える」とも話したから、最悪でも3月20日頃の解禁ならギリギリ間に合うという見通しなのだろう。今後も事態は二転三転が予想され、綱渡り状態が続くのは間違いない。本当に関係者は落ち着かない日々を強いられているはずだ。

試合が実現しても、海外組を呼べるのか?

 そのうえで、試合開催が叶ったとしても、今度は選手招集の問題に直面する。2020年10・11月のA代表4試合を欧州組だけで戦った通り、今の代表主力はほとんど海外でプレーしている。彼らを呼べなければ、真の意味での代表強化はできない。通常のIMD期間だとクラブは代表への選手派遣義務を負うが、FIFAはコロナ禍を踏まえ、4月末までその義務を一部緩和している。

 この条件とは、①試合開催地への入国時、またはクラブ帰還後に5日間以上の検疫・自己隔離が必要とされる場合、②試合開催地とクラブ所在地の間に移動制限がある場合となっている。とりわけ①に関しては、欧州各地によって対応がバラバラだ。昨年も同じ欧州域内でありながら大迫勇也(ブレーメン)や堂安律(ビーレフェルト)らを招集できなかった例があり、日本への帰国となれば拒否するクラブが続出することも考えられる。

「海外組+国内組」、あるいは「オール国内組」の編成も

 となれば、今回は「呼べる限りの海外組を呼んで、国内組とミックスさせたチーム」で戦う以外ない。場合によっては「オール国内組」という編成もありえる状況だ。それでA代表とUー24代表の2チームを編成しなければならないのだから、森保一監督もこれまで以上に頭を痛めているはずだ。

 2チームの運営に関しては、すでに昨年「活動日程が重複した時は、森保監督がA代表を指揮し、横内昭展コーチがU-24代表を率いる」と決まっているため、今回もそうなるだろう。そこが「1チーム・2カテゴリーのメリットだ」と反町技術委員長も強調していた。ただ、どの選手をどちらに呼ぶかというのは両者の話し合い次第となる。

 ここで注意しなければならないのが、A代表のモンゴル戦が公式戦という点。日本はまだ最終予選行きを決めていない。「モンゴル戦は予選突破を考えても非常に重要な試合」と反町氏も言うだけに、やはりこちらに比重を置かざるを得ない。

 相手のレベルがU-24アルゼンチン代表の方が明らかに高いし、今後の代表強化を考えてもこちらに編成できる限りの最強布陣を送り込みたいところだが、そうはいかないのがつらいところ。基本は「A代表優先」となるだろう。

冨安健洋らA代表主力組に加え、三笘や上田はモンゴル戦優先か?

 長い前置きになったが、これだけの壁を超えてようやくチーム編成の本題に入れる。欧州組を呼べるとしたら、U-24代表世代の冨安健洋(ボローニャ)、中山雄太(ズヴォレ)、堂安ら主力級はA代表の方でプレーするのが現実的ではないか。やはり最終予選を視野に入れれば、彼らのような軸を担う選手は吉田麻也(サンプドリア)や遠藤航(シュツットガルト)、権田修一(清水)ら中心メンバーと時間を共有し、カタールW杯本大会へ向かっていくべきだ。

 国内組にしても、Jリーグで圧倒的インパクトを残している三笘薫(川崎)や上田綺世(鹿島)などはA代表優先でいいのではないか。彼らは最終予選で必要になってくる重要戦力。三笘の巧みに緩急をつけるドリブル突破とフィニッシュの精度は森保監督も高く評価している点。A代表に抜擢するだけのポテンシャルを示しているのは確かだ。

 FWの上田にしても、大迫が所属のブレーメンで苦境に立たされている今、代役候補として重要視されつつある。もちろん昨夏にベルギーへ渡った鈴木武蔵(ベールスホット)もコンスタントに出場しているが、前線で起点を作るという部分では上田の方が大迫により近い。そこは指揮官も期待を寄せているに違いない。

久保建英らボーダーライン組はU-24代表で活動?

「A代表当確ライン」から微妙に外れそうな久保建英(ヘタフェ)や三好康児(アントワープ)、菅原由勢(AZ)ら欧州組、あるいは国内組の瀬古歩夢(C大阪)や旗手怜央(川崎)、相馬勇紀(名古屋)、金子拓郎(札幌)らはU-24日本代表に回せばいいだろう。

 東京五輪が1年延期されたことで、金子のように2020年シーズンに台頭した大卒新人が非常に多いため、候補となりえる人材は事欠かない。むしろ森保監督と横内コーチが選びきれないほどだ。彼らをB代表として活動させておき、東京五輪後にスタート予定のカタールW杯最終予選でメンバーとして組み込むことができれば、日本代表の活性化を図ることができる。

 今回はU-24アルゼンチン代表という世界屈指の強豪国との2連戦なのだから、将来的に誰がA代表になるべき人間なのかを絞り込む場とするのも一案だ。東京五輪を視野に入れた数少ない強化の場であることは確かだが、やはり日本サッカー界にとって最大のターゲットはカタールW杯出場であり、そこでベスト8の壁を破ること。そのために使える人材を増やし、チームの底上げを図ることが第一と言っていい。

やはり優先すべきはカタールW杯での成功

 もちろん自国開催の五輪だからメダルは求められるが、東京五輪にU-24世代の世界最強チームがズラリと揃うとは限らない。コロナ禍で派遣を控えたり、ベストメンバーを揃えられないチームも出てきたりするかもしれない。そこで勝つことも1つの自信にはなるが、直後に控える最終予選突破につながらなければ意味がない。そこをしっかりと考え、納得いくA代表とU-24日本代表の編成をすること。それを協会と森保監督に求めたい。

 こうしたチーム編成に関する注文をつけられるのも、試合が実現してこそ。日本政府にはスポーツ界、サッカー界のプラスになるような判断を改めて強くお願いしたいものだ。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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