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オンラインゲームのプレイ中、いつも子どもが大声で暴言を 親としてどう関われば良い?

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(写真:イメージマート)

子どもたち同士の交流の場としても定着しているオンラインゲームですが、ゲームに熱中するあまり大きな声で暴言を吐いてしまうこともしばしば。一緒にプレイしている友達に対してのオンライン上の暴言は、リアルの友人関係にも影響が出てしまいます。また、プレイ中のイライラしている様子を見ると、親としては戸惑いや不安を感じてしまうことでしょう。

筆者は、ゲーム依存が疑われる子やその家族のカウンセリングを行っています。子どもの過度のゲームで生じた問題として「暴言や物に当たる」を挙げた親が6割を超えています。また暴言を注意した親に対して子どもが暴力を振るうケースも見られます。

そこで今回は、暴言が生じる状況と、親としての関わり方について解説をしたいと思います。

興奮しやすいゲームの仕組みと暴言の引き金

小学生から中高生に人気のジャンルとして、「FPS」や「TPS」と呼ばれるシューティング系のゲームが挙げられます。他のプレイヤーを武器で倒していき、最後の1人まで生き残れば勝ちとなる「バトルロイヤル」というシステムを採用しているものが多いことが特徴です。

ゲームという仮想世界ではありますが、生き残りをかけて戦うことによって、プレイヤーはとても興奮しやすくなります。特に思春期ごろの子どもは脳の前頭前野が発達途上で、恐怖や怒りを司る扁桃体の働きが大きくなり、衝動的な行動をとりやすいといわれています。

筆者が聞いた範囲では、興奮した子どもがとる行動としては、激しい暴言やいわゆる「台パン」といって机を叩くなど物にあたりはじめる行為が多いようです。

その引き金となる要因は、人によってさまざまです。不意に他のプレイヤーから攻撃を受けたり、自分の思い通りにプレイできなかったり、ゲーム内で相手を挑発するような「煽り行為」を受けたりといった場合など、プレイヤー間で発生する摩擦やストレスはもちろん、接続している端末の性能の古さや回線遅延などが、強い苛立ちの要因になる人もいます。

写真:REX/アフロ

注意することへのリスクもある中、親はどう関わるとよいか

「楽しいはずのゲームなのだから、怒りや不満を感じるならやめたらいいのに・・・」と思う方も多いでしょう。ただ、相手を倒せたときは大きな達成感や喜びを得られるでしょうし、何よりもゲームは友達や仲間と繋がるツールです。私たちが考えている以上に、子どもたちにとってゲームは大切なものなのです。

しかし、ゲーム中の子どもの大声や暴言に対し、不安や恐怖を感じてしまう家族が多いというのも事実です。子どもを落ち着かせようと、注意をしたりゲームを止めたりすると、さらに興奮し、家の中の物を投げたり壊したり、攻撃的な言動をとったりというように、状況が悪化してしまうことも決して珍しくありません。

親としてどのように関わるべきか、とても身近で切実な問題ですが、まずは子どもの暴言やゲームを無理に止めないことが大切です。

子どもは、その場では感情が昂っていても、時間の経過とともに落ち着いてきます。興奮しているときに注意をしてしまうと、余計にヒートアップさせてしまうため、まずは落ち着くまで待ってみてほしいと思います。

そして、親も子もお互いに落ち着いているタイミングになったら、「私は」を主語にした伝え方で親としての気持ちを伝えます。例えば「私は、大きな声だったから怖いと感じた」とか「私は、もう少しボリュームを下げてほしいと思う」などです。

「うるさい!」や「なんで静かにできないの?」では、「あなたは」が主語になった伝え方になってしまうため、相手は責められるように感じてしまい、なかなか受け止めることができません。

あわせて、「イライラしないの!」とか「怒ってはダメ!」といったようにネガティブな感情を抱くこと自体を否定する言い方をしないでください。イライラすることや怒りの気持ちなど、ネガティブな感情を持つこと自体は当然のことだからです。

「イライラしたんだね」「嫌な気持ちになったんだね」と子どもの気持ちにまずは寄り添いながら、イライラや怒りを適切に表現したり、相手を傷つけずに伝えたりする方法や落ち着くための工夫を一緒に考えていけるとよいでしょう。

また、疲れている、眠たい、空腹という生理的な欲求が満たされていない状態のとき、特に暴言が起こりやすいという傾向もあります。それらが原因かも、と思われるようなときは、あらかじめおやつを食べさせておく、疲れているときは休むよう伝えるなどの予防策を取っておけるとよいかもしれません。

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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