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インターネット依存と家族の関係 私たちが親としてできることとは

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(写真:アフロ)

コロナ禍で子どもたちのインターネット利用はさらに拡大し、遊びにも学びにも一層重要な役割を果たすようになりました。友人とのコミュニケーションやゲームはもちろん、塾や学校でもタブレットなどを使ったオンライン学習の機会が増えています。一方、それに伴う形で子どもたちの「インターネット依存」が増加しており、社会的関心も高まっています。

「依存症を防ぎたいが、ゲームや動画視聴をやめるように言えば子どもから反発される」

「好きにさせようと見守ると、飽きるどころかますますのめり込んでいく」

日々このような悩みや葛藤を持ちながら、子どものネット利用と向き合っているご家庭も多いことと思います。

そこで、インターネットやデジタルデバイス、ゲームなどを巡り、親はどのように子どもと関わるべきなのか、どのようなスタンスでいると良いのか。「インターネット依存と家族」について、これまでの研究からわかっていることをお伝えしたいと思います。

はじめに:インターネット依存について理解してほしいこと

そもそも依存症とは、「特定の物質や行為・過程に対して、やめたくてもやめられない、ほどほどにできない状態」のことを言います。

何事も行き過ぎた使用を繰り返していると、脳の回路が変化し、自分の意思ではやめられない状態となります。こうなると、周囲がいくら責めても、本人がいくら反省や後悔をしても繰り返してしまいます。

依存する対象としては、お酒、薬物、ギャンブルなどが知られていますが、特にギャンブルや買い物といった行動習慣が行き過ぎてしまい、その行動をコントロールできなくなってしまった状態を「行動嗜癖」と呼びます。インターネットやゲームへの依存も、この行動嗜癖に分類されます。

そして行動嗜癖は、決して特別な人だけが陥る状態ではありません。条件さえ揃えば誰もがそうなる可能性があるからこそ、依存を本人の自己責任の問題として捉えるのではなく、家庭、学校、地域など、子どもたちを支えるべき周囲の大人がサポートしていくことが大切なのです。

以上を踏まえたうえで、子どもがインターネットを問題のある方法で使用したり、使いすぎたりすることを防ぐため、私たちは親としてどのようなことができるのでしょうか。

インターネット依存と家族の役割

「家族」は、子どもが自立して社会に出ていくために重要な単位であると言われています。

ギリシャでインターネット依存の研究を行っているSiomosら(2012)は論文で、思春期・青年期のインターネット依存を予防する際の家族の役割の大切さを主張しているように、多くの先行研究において、子どものインターネット依存の発生や予防には「家族」が重要な役割を果たす可能性があると指摘されています。

「養育スタイル」「親によるモニタリング」「親子の絆、愛着」など、さまざまな要因がインターネット依存に影響を与えることがこれまでの研究によって示されている中、今回は特に「子どもがインターネットに接する際の親の関わり方のスタイル」について、紹介したいと思います。

親の仲立ち「3つのスタイル」

子どもが過度にインターネットを使用したり、問題のあるメディアに接触したりするのを避けるため、以下のような親の仲立ちのスタイルが望ましいとされています。

能動的な仲立ち(acitive mediation):

親が子供とインターネットについて会話をすること。子供自身がインターネットの視聴や利用について客観的に振り返りができることを支援するため、親が率先してメディアについて話し合う機会を持ちます。

制限的な仲立ち(restrictive mediation):

子供がいつインターネットを使ってよいか、使ってはいけないか、どんなゲームをしてよいか、どんなチャンネルを見てよいか、どのくらいの時間インターネットをしてよいかなど,明確なルールを用いること。

共同視聴(coviewing):

テレビ番組やインターネットを見る間、同じ部屋で一緒に座って親が子どもにコンテンツについて話すこと(あるいは話さないで一緒にみる)。

インターネット依存になると、オンライン環境を好むようになるだけでなく、その使用時間を把握できず、使用量を自分でコントロールすることが困難になり、結果として授業や仕事などのやるべきことを怠ってしまうなどの悪影響がでてしまいます。

インターネット・リスクに関する研究をしているLeung&Lee(2012)は、香港の9~19歳の718名を対象にインタビュー調査を実施し、インターネット・リスク、インターネット依存、情報リテラシー、親のスタイルなどとの関係性を検証しました。

その結果、インターネット依存に悩む児童・青少年は、健康な人に比べて、オンライン上の嫌がらせやネットいじめなどさまざまな形のインターネット・リスクに遭遇する可能性が高いことを明らかにしました。

したがって、上記のようなインターネット依存の症状は、インターネット・リスクに関する重要な指標にもなるということです。Leung&Leeは論文の中で、子どもにこういった症状が見られたとき、親や教師が介入し、インターネットとの仲立ちをするきっかけになるだろうと指摘しています。

しかし実際には、依存状態になってから子どもとインターネットについて会話を始めたり、ルールを作ったりしていくのは非常に難しく、根気強く関わっていくことが必要になります。だからこそ、そうなる前から3つの仲立ちを日常的に実践していけるとよいでしょう。

プラットフォームとしての「親子の関係性」

もう一つ重要なこととして、親子の関係性や家族の結束力が挙げられます。

親子間のポジティブな関係は、子どもを導く力を生み出す「基本的なプラットフォーム」であると言われています。

また、ゲーム依存の青年における家族関係と脳活動との関連について研究したHwang,Hら(2020)は、「家族内の結束が弱いと、本人は家族から切り離されていると感じ、危機的な状況下で家族からの支援を得ることが困難になり、ゲームに依存する可能性がある」と指摘しています。

つまり、親子の良好な関係や結束力は、インターネット依存の抑止力になりうることが期待できるのです。

子どもと一緒にインターネットについて考え、ルールを作る上でも、まずは親子で率直に会話ができるなどの信頼関係があることが大前提になるでしょう。そして、子どもが日常生活の中でストレスに遭遇したとしても、ゲームに逃避せず、まず家族に相談や助けを求められる状態にあることが大切となります。

つまり、遠回りに見えるかもしれませんが、日頃から子どもに対して丁寧にコミュニケーションをとっていくこと、きちんと関心を持って接することが、子どものインターネット依存を防ぐ最も有効な予防策なのかもしれません。

〈引用・参考文献〉

厚生労働省:依存症についてもっと知りたい方へ

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html

(2021年4月12日)

Siomos,K.,Floros,G.,Fisoun,V.,Evaggelia,D.,Farkonas,N.,Sergentani,E.,…Geroukalis,D.(2012). Evolution of Internet addiction in Greek adolescent students over a two-yearperiod : The impact of parental bonding. European Child & Adolescent Psychiatry,21,211–219.

Leung,L.,&Lee,P.S.(2012). The influences of information literacy, Internet addiction and parenting styles on Internet risks. New Media&Society,14(1),117-136.

Hwang,H.,Hong,J.,Kim,S,M.,&Han,D,H.(2020). The correlation between family relationships and brain activity within the reward circuit in adolescents with Internet gaming disorder. Scientific Reports,10(1),9951. https://doi.org/10.1038/s41598-020-66535-3

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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