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なぜシティはサイドバックを狙うのか?カンセロ、ククレジャ、アーノルド...ビッグクラブの算段。

森田泰史スポーツライター
指示を送るグアルディオラ監督(写真:ロイター/アフロ)

夏のマーケットが開き、各クラブが積極的に補強に動いている。

なかでも、注目すべきはマンチェスター・シティだ。契約解除金6000万ユーロ(約84億円)を支払い、アーリング・ハーランドを獲得。加えて、移籍金4875万ユーロ(約68億円)でリーズからカルバン・フィリップスを引き入れ、戦力を整えた。

■サイドバックの補強

そして、現在、シティが狙っているのが左サイドバックだ。トップターゲットはマルク・ククレジャ(ブライトン)だと目されている。

サイドバックを狙うビッグクラブはシティだけではない。この夏、バイエルン・ミュンヘンがナサル・マズラウィ(フリートランスファー)を、アーセナルが移籍金3500万ユーロ(約49億円)でオレクサンドル・ジンチェンコを獲得している。

近年、アクラフ・ハキミ(パリ・サンジェルマン/移籍金6650万ユーロ/約93億円)、ジョアン・カンセロ(シティ/移籍金6500万ユーロ/約92億円)、ベン・チルウェル(チェルシー/移籍金5000万ユーロ/約70億円)、フェルラン・メンディ(レアル・マドリー/移籍金4800万ユーロ/約67億円)、ヌーノ・メンデス(パリ・サンジェルマン/移籍金3800万ユーロ/約52億円)、テオ・エルナンデス(ミラン/移籍金2150万ユーロ/29億円)といった選手が高額な移籍金で移籍を果たしてきた。

競り合うククレジャとマフレズ
競り合うククレジャとマフレズ写真:ロイター/アフロ

サイドバックの価値は高まってきた。

またサイドバックの役割というのは、時が経つにつれて変化してきた。かつて、フットボールの世界では、【2−3−5】のシステムが流行していた。そこからサイドの選手が下がり、4バックが形成されるようになったと言われている。

流れが変わったのは、1958年のワールドカップだとされている。ニウトンとジャルマ・サントスを擁したブラジル代表が、攻撃的なフットボールを展開した。そこでは、サイドバックの選手が果敢に上がり、攻撃参加した。

■現代型の選手

フットボールは進化した。モダンなサイドバックというのは、ただサイドを駆け上がればいい、というものではない。

もはや、そういう時代ではなくなった。攻撃参加の際にも、オーバーラップとインナーラップを使い分ける必要がある。テクニックが求められるのは当然で、なおかつ1対1で強くなければいけない。

モダンなサイドバックとして、筆頭に挙げられるのはトレント・アレクサンダー・アーノルド(リヴァプール)だろう。ウィングのモハメド・サラーを内側あるいは外側でサポートしながら、抜群のキック精度で正確なクロスを供給する。まさに現代版の至高のサイドバックだと言える。

「我々のプレーというのは、アーノルドの能力に合わせられる。彼のクオリティが、我々のプランに影響する」とはユルゲン・クロップ監督の弁だ。

「最初の頃に比べて、アーノルドのポジションは変わった。現在の彼は成熟して、自信を備えている。多くのプレーの局面で、存在感を出せるようになった」

ドリブルするアーノルド
ドリブルするアーノルド写真:Maurizio Borsari/アフロ

リヴァプールでアーノルドとアンドリュー・ロバートソンが定着した一方で、シティはジョゼップ・グアルディオラ監督が多くの選手を試してきた。

グアルディオラ監督は2016年夏にシティの指揮官ポストに就いた。パブロ・サバレタ、バカリ・サニャ、ガエル・クリシー、アレクサンドル・コラロフがサイドバックでプレーしていた。だが、彼らは次のシーズン、すでにシティにいなかった。

バンジャマン・メンディ(5750万ユーロ)、カイル・ウォーカー(5270万ユーロ)、カンセロとグアルディオラ監督はサイドバックの獲得に1億5000万ユーロ以上を費やしている。

ククレジャの獲得に関しては、ブライトンが移籍金5800万ユーロ以上を要求しており、シティの移籍金3500万ユーロの第一オファーは断られたもよう。しかし、市場が開いている間、獲得の可能性は残されている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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