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なぜヴラホビッチは“人気銘柄”なのか?ルカク、グリーリッシュ、コウチーニョ...高額な移籍金の危険性

森田泰史スポーツライター
フィオレンティーナのヴラホビッチ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

価値を見極めるというのは、難しい作業だ。

欧州のフットボールシーンでは、冬のマーケットが開いている。“人気銘柄”とされているのが、ドゥシャン・ヴラホビッチ(フィオレンティーナ)だ。ユヴェントスやアーセナルが関心を示しており、移籍金は7000万ユーロ(約91億円)以上になると言われている。

この夏にシティに移籍したグリーリッシュ
この夏にシティに移籍したグリーリッシュ写真:ロイター/アフロ

ヴラホビッチは今季、公式戦23試合で19得点をマークしている。強くて、速くて、上手い。なおかつ決定力を備えている選手だ。

「ヴラホビッチはビッグクラブでプレーする準備ができていると思う。エネルギッシュであり、ヒール役に徹するという、王者が持ち得るメンテリティを備えている。次のシーズン、イタリア以上に資金のあるリーグ戦に持っていかれてしまうかもしれない」と太鼓判を押すのは数々のビッグクラブで指揮を執ったファビオ・カペッロだ。

■移籍市場と資金力

資金力で言えば、現状、プレミアリーグのそれが圧倒的だ。

2021年夏の移籍市場を振り返れば、明らかである。ジャック・グリーリッシュ(マンチェスター・シティ/移籍金1億1175万ユーロ/約145億円)、ロメル・ルカク(チェルシー/移籍金1億1500万ユーロ/約149億円)を筆頭に、積極的な補強が敢行された。

プレミアリーグ(13億5100万ユーロ/約1756億円)、リーガエスパニョーラ(2億9300万ユーロ/約380億円)、セリエA(5億4900万ユーロ/約713億円)、ブンデスリーガ(4億1600万ユーロ/約540億円)、リーグ・アン(3億5600万ユーロ/約462億円)と5大リーグの中でも大きな差があった。

コロナ禍で、世界中の多くのクラブが財政に打撃を受けた。だが近年のテレビ放映権の分配、アジア市場の開拓といったプレミアの戦略は確実に実を結んでおり、 FFP(ファイナンシャルフェアプレー)の規制緩和というのもプラスに働いた。

チェルシーでプレーするルカク
チェルシーでプレーするルカク写真:ロイター/アフロ

また、補強については、ストライカーとアタッカーの獲得費が嵩む傾向にある。

先述したルカクやグリーリッシュに加え、ジェイドン・サンチョ(マンチェスター ・ユナイテッド/移籍金8500万ユーロ)、タミー・エイブラハム(ローマ/移籍金4000万ユーロ)、エミー・ブエンディア(アストン・ヴィラ/移籍金3840万ユーロ)、ダニー・イングス(アストン・ヴィラ/移籍金3520万ユーロ)、マルティン・ウーデゴール(アーセナル/移籍金3500万ユーロ)というオペレーションが夏の段階で成立した。現在、ヴラホビッチが人気銘柄になっているのには、そういった背景がある。

■大金の発生とリスク

ただ、高額な移籍金というのは、ある種のリスクである。大金が発生すれば、周囲の期待は高まる。そして、その期待に応えられなければ、そこには失望がある。

近年、スペインでは、高額な移籍金で加入した選手が成功を収められていない。

バルセロナは2017年夏に移籍金1億500万ユーロ(約131億円)でウスマン・デンベレを、2018年1月に移籍金1億2000万ユーロ(約156億円)でフィリペ・コウチーニョを獲得した。

2017年夏に契約解除金2億2200万ユーロ(約286億円)でパリ・サンジェルマンに移籍したネイマールの代役としての補強だった。

だがデンベレは度重なる負傷に苦しめられ、思うようにプレータイムを得られなかった。そして、現在、2022年夏に満了を迎える契約を延長するかどうかで代理人を通じてクラブと協議を重ねている。コウチーニョについては、今冬の移籍市場でアストン・ヴィラにレンタル放出された。

得点を喜ぶマドリーの選手たち
得点を喜ぶマドリーの選手たち写真:ムツ・カワモリ/アフロ

一方、レアル・マドリーはガレス・ベイル(2013年夏加入/移籍金1億ユーロ/約130億円)、エデン・アザール(2019年夏加入/移籍金1億ユーロ)を獲得している。

マドリーでは、ベイル、アザール、共に相次ぐ負傷離脱で適応に時間がかかった。レアル・マドリーというビッグクラブでは常に結果が求められ、彼らを待っている余裕はなかった。イスコ、マルコ・アセンシオ、ロドリゴ・ゴエス、ヴィニシウス ・ジュニオールといった選手が台頭して、スタメンの座が確約されなくなった。

デンベレとコウチーニョ
デンベレとコウチーニョ写真:ロイター/アフロ

「勝ち続けているチームに移籍する方が、より簡単になる。コウチーニョの場合、(バルセロナ加入の際に)チームが機能していなかったら、もっと難しかったと思う。バルセロナで、彼はクラブ史上最高額の選手だった。当然、そういう状況では、プレッシャーが掛かることになる」

「バルセロナのスター選手は(リオネル・)メッシだ。しかし、コウチーニョは適応に時間をかけられるし、メッシ後の時代で自分の価値を証明できるはずだ」

これはコウチーニョがバルセロナに移籍した時のリバウドの言葉だ。

バルセロナ時代のメッシとコウチーニョ
バルセロナ時代のメッシとコウチーニョ写真:なかしまだいすけ/アフロ

期待が高まれば、重圧は増す。その中で、結果を出さなければいけない。

良い選手が現れた際、獲得競争は必至だ。それは市場の原理でもある。しかし、適正価格を見抜けなかった場合、クラブと選手のどちらも損をするのは明らかだ。そこに、移籍の難しさがある。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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